第18話 鑑定スキルについて

 立ち話もあれだからとソファーに座り落ち着いて話をすることになった。


 アルビダの横には父マティアスが座り、対面にジェイデン、リンドール公爵、夫人が座っている。ジュリアはまだ病み上がりだからとベッドでゆっくりと眠ってもらうことにした。


 自分もアルビダと話がしたいと、なかなかうんと言わないジュリアに「また近々遊びに来ますわ」とアルビダが約束をして、ようやく安心したのかやっと眠りについてくれた。


「ではどうやって娘の病気が分かったのか、さらには直す薬まで分かったのかを教えていただきたい」


 そう話すリンドール公爵の表情はかなり困惑していた。


 アルビダに「内緒にしてください」と頼まれていたので、ジェイデンから鑑定についての詳しい内容をまったく聞いていないので、リンドール公爵は余計にこんがらがっているんだろう。


「そうだね。それは私も聞きたい」


〝一体アビィたんは何をしたんだ? まさか、天使の能力に目覚めたんじゃ! こんなにも天使なんだ、うん十分にありえる!〟


「ゲフッ!」


 父の思わぬ心の声が聞こえてきて思わず咽せてしまう。


 ———お父様! こんな時に何を考えていますの。天使って……恥ずかしくって顔が熱いですわ。


 アルビダが父の心の声で困惑している時、その姿を見たジェイデンは自分たちのせいでアルビダが困っているんじゃないかと心配する。

 自分は鑑定の能力を聞いている、でもその能力のことをアルビダは隠したがっていたから。


「アルビダ嬢? あの……大丈夫? 言いたくないことは無理に言わなくてもいいんですよ?」


 ジェイデンは心配気にアルビダに話しかける。

 アルビダはそんなジェイデンの優しい心遣いに気付き、決心する。


 リンドール公爵家の方達に鑑定のことを話しましょう。

 ロビンや妖精さん達のことは言えませんから、最近鑑定が使えるようになったということにして。


「実はわたくしの鑑定スキルは最近使えるようになったのです。理由は分かりませんが急に見えるようになりました」


「「「え!?」」」


 アルビダの話を聞いて、驚きのあまりジェイデン以外の三人の目が見開く。


「アッ、アビィ、んんっ、アルビダ? スキル称号の儀は再来週のはずだよね? なのにスキルがあるのかい?」


 内容を聞いた父が動揺のあまり、アビィと言いかけるほどに慌てた。

 アルビダはスキル称号の儀を行なっていないから、女神様からまだ何のスキルも授かってないのが普通である。だがスキルを持っているのだ。

 父が驚くのもむりはない。


「はい。なぜかは……わたくしも分からないのですが……」


 ———本当は……理由はわかっていますが、言えなくてすみません。心苦しいです。


「そっ、そうか確かに……」


〝いきなり目覚めた力のことなんて、アビィたんにだって分かるばずないよね。混乱させてごめんね。う〜ん、アビィたんの鑑定スキルとはどんな力なんだろう。明らかに私が知っている鑑定スキルではなさそうなのだが……〟


 父が顎に手をあて考え込んでいるが、その考えがアルビダにはすべて聞こえてくるので……なんとも言えない表情で父を見つめる。


「わたくしの鑑定スキルは人も鑑定できるのです。ですからそれで、ジュリア様の病気を見抜きました」

「人を鑑定……そんなことが出来るのか!? だがジュリアはそのおかげで助かったのだから……。ゴクッ、これは超重要案件になりそうな……」


 リンドール公爵が驚き言葉に詰まる。

 その姿を見た父マティアスが、大きく深呼吸した後、再び話かけた。


「……これは私からのお願いなのだが、このことは内密にしてくれないだろうか? まだ初めてのこと、国に知れたらこの子の未来がどうなるのか分からない。私は出来る限り避けたい」


 父がリンドール公爵に向かって頭を下げた。

 その姿を見たリンドール公爵も慌てる。


「頭を上げてください! 私たちはアルビダ嬢に助けて頂いたのです、もちろん約束します。一切口外しません、安心してください」


 リンドール公爵も頭を下げた。


 こうして、アルビダの鑑定スキルについては深入りしないと両家にて約束を交わし事なきをえるのだった。


 その様子を見てアルビダはほっと胸を撫で下ろした。


『良かったね。アビィ上手いったみたいだね』


 抱きしめていたクマのロビンがコソッと話しかけてきた。


「はい。良かったです! っと」


 ロビンに対して元気に返事を返してしまい、全員から不思議そうに見られることに。

 そんな姿をロビンが『あちゃー…… 』っと呟きながら肩をすくめた。



「では、そろそろ我々はおいとましようか」


 父が先にソファーから立ち上がり、アルビダを立たせエスコートする。

 すると真っ先に立ち上がったジェイデンが、アルビダのところに走ってきた。

 父の方にもリンドール公爵が最後の挨拶にと側に来たため、ジェイデンと二人だけの時間となった。


「アルビダ嬢、今日は本当にありがとう。次に来てくれる日を楽しみに待ってますね」

 

 ジェイデンがにこやかに笑う、その頬は少し赤い。


「はい。もちろん私も次に会える日が楽しみです」


 ジェイデンがアルビダの手を取り握手を交わす。


 それを見たロビンがまたこっそりと『鑑定してみたら?』と呟いた。


「えっ、鑑定?」


 そう言葉にだし、再びジェイデンのステータス画面が現れる。


鑑定

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名前 ジェイデン・リンドール

年齢 十一歳

体調 寝不足

魔力 ★★★★

スキル 闇魔法♢♢♢

    治癒魔法♢←new

好感度 ♡♡♡♡♡↑↑


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「わっ!」

「え? 急にどうしたのアルビダ嬢?」

「いいえ、なんでもありません」


 ———好感度が最大値になってます……びっくりして思わず声がでちゃいました。だってこんな短期間でこんなにも変わるなんて……嬉しいのですが……。


「アルビダ嬢?」


 ジェイデンがさっきから様子のおかしいアルビダに再び話しかける。


「ああっ、その……ちょっと(顔が)熱いなぁと思いまして」

「そっ、そう? でも確かにちょっと(顔が)熱いかもだね」


 頬を赤く染め話すそんな二人の様子を見て、ロビンは少し呆れ気味に、ぼそっと呟くのだった。


『ほら〜やっぱり攻略してるじゃん。無自覚たらしなんだから』



 

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