第11話 新しいスキル
『アビィ泣かないで? 僕も一緒に考えるから、ね?』
ロビンが短い手を必死に伸ばし、アルビダの頭をポムポムと撫でる。
体をギュッとアルビダに抱き締められているので、プルプルと震えながら手を伸ばし撫でているのだ。
そんなロビンの優しい手の感触に、心が落ち着いてきたのか、大きな瞳から落ちていた大粒の涙が止まる。
「ロビンッ……」
『一緒に考えたら何かいいアイデアが出てくるかもだしね? ん? スパチャをいっぱい貰えたおかげで、スキルポイントが貯まったみたいだね。新しいスキルと交換できるよ!』
まあるい尻尾をご機嫌に揺らせながら、ロビンが楽しそうに話す。
「新しいスキル……!」
今度はどんなスキルが貰えるのでしょう。
悲しくて泣いていたアルビダの表情が、スキルを貰えることで少しだけ和らいだ。そんな微妙な変化もロビンは見逃さない。
『ふふふ。アビィも嬉しいみたいだね。さあ選んで』
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【ポイントの交換】
今のポイントで交換できるスキルはこの三つです
▶︎心レベルアップ
▶︎鑑定
▶︎水魔法
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「心……レベルアップ?」
『ああ、それはね? 心のスキルが今までよりも強力になるってことだね』
レベルアップの意味がわからず、不思議そうにしていたアルビダを、すぐさま察して説明するロビン。そのおかげでアルビダはすぐ理解できた。
なるほど、でも今はレベルアップよりも新しいスキルが欲しいですわ。
心のスキルは今のままで十分満足していますし。
『おっ、とうとう魔法が登場したね。このスキルを選ぶと、水魔法が使えるようになるよ』
ロビンが自分のことのように喜んでいる。
「水魔法ですか……」
う〜ん。悩みますわ。鑑定も捨てがたいのです。鑑定は物の価値がわかるから、新たな薬草を見つけたりできるかも知れない。
アルビダは少し沈黙し、真剣に悩んでいる。そんな姿をロビンは隣に座りワクワクしながら何を選ぶのか待っている。
「……決めましたわ。鑑定にします」
『鑑定! それも良いね。僕は水魔法もちょっと見て見たかったけど、それは次のお楽しみかな?』
「では選びます」
アルビダは慎重に鑑定の文字を押した。前回つまずき間違えて心の文字を押した事もあり、足元に何か落ちていないか確認し画面を押した。
「これでもう鑑定が使えるようになったのでしょうか?」
「う〜ん。何か見て使ってみたら?」
……何か? そうですね、ではあの花瓶でも鑑定してみましょう。
アルビダが使ってみたいと思ったら、部屋にある家具や小物の情報が目に入ってくる。
「わっ!? これは凄いですわ。物の横にネームプレートが付いているかのように、情報がわかります」
『ふふ、それは良かったね……っと!』
ロビンが急に動かなくなると、部屋の扉がノックされメアリーが入ってきた。
「アルビダ様、夕食の準備が出来ました」
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名前 メアリー・ハートン
年齢 二十九歳
体調 良好 (少し喉を痛めている)
魔力 ★
スキル 家事♢♢♢
火魔法♢
好感度 ♡♡♡♡♡
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「えわっ!?」
「あっ、アルビダ様どうされました?」
「なっ……んでもないですわ」
びっくりしました。急にメアリーの情報が見えて……鑑定スキルというのは人の情報までわかるのでしょうか? そんな事聞いたことがないのですが……
……喉を痛めている?
「メアリー? もしかして喉が痛いの?」
「えっ、声が少し変ですか?」
〝アルビダ様が私の些細な変化に気づいてくれるなんて、幸せ! 嬉しい。ちょっと喉がイガイガしてはいるのよね……〟
「声が変ではありませんが……少し気になって。喉を潤すお薬を飲んでくださいね」
「ありがとうございます」
「先に行っててもらえますか? 少し準備してからダイニングルームに行きますので」
「わかりました」
メアリーはお辞儀をし部屋を出て行った。
「ロビン! 大変よっ」
『そんなに興奮してどうしたの』
「わたくしの鑑定スキルね、なんだか他と違うような気がするの」
アルビダは人(メアリー)が鑑定できた事、さらに情報がかなり詳しかったことなどをロビンに話す。
『ふむ……ポイントで交換したスキルだから、他と違って特別なのかもね』
『それに……魔力★、好感度♡とかスキルの横に♢がありました」
『魔力の★は持っている魔力量の数値を表しているね、最大値は10だね。♢や♡はスキルのレベルで5が最大値』
「そんな事までわかりますの!?」
『うんうん。だってスパチャでもらえる特別なスキルだからさ。妖精たちに感謝だね』
ロビンがまるで自分の手柄のように得意げに話している。
「凄いですわ……妖精さん! ありがとうございます」
あれ? では♡が5個あったと言うことはメアリーは……はう!
『アビィ? なに急に照れてんのさ?』
「んんっ、なんでもありませんわ」
『あっ、そうそう、アビィはね? 心も鑑定もスキルを使いっぱなしだから、ずっと魔力を使ってるんだよ。必要な時だけ使うようにしないと』
「それは……どうすれば? やり方が分かりません」
『うーん。たとえばさ? 電気を消したら、真っ暗になるでしょ? そんな感じでイメージしたら良いと思うよ』
「なるほど!……イメージ……イメージ」
真っ暗になるように……消す!
う〜ん。うまくいかない。
もっと……イメージ……。
———あっ!!
「出来ましたわ!」
家具や小物に付いていたネームプレートが消えた。
『さすがアビィ』
ロビンはアルビダの背中に飛び付き頭をポムポムと撫でる。
「えへへ」
あれ? もしかして、この鑑定スキルならジェイデン様の妹ジュリア様の病気が何かわかるのでは!?
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