怪談「スガタミズバシ」⑤

そこにいたのは大きな蛇でした。

いや、本当にそうだったのか、今でも自信がありません。


蛇のようなものだったのは間違いないのです。

ただ、蛇にしてはシルエットに出っ張りが多くて。

ほの暗くて、鱗とか良く見えないんです。

しかも小さく「オタキハドコダ」と喋った気がして。


だから、目を凝らして一度瞬きしたんです。

でもそうしたら、もう居なくて。


「うっ」


と、いう声が後ろからしました。

見ると、一番後ろにいた女の子が橋の欄干にもたれて苦しんでいるんです。

その様子が余りに辛そうで、近くにいた男の子も逃げちゃって。


でも、あまりに体重を載せすぎて、欄干から身を乗り出しかけていたので、私が駆け寄ったんです。

すぐにおかしいとわかりました。


服に手形が、彼女の白いシャツの袖辺りをがっぷりと掴む手形が見えたんです。

手は袖だけじゃなくて彼女の至るところに見えました。


「た、祟りだ……中野長者の……」


誰かがそう呟くのが聞こえました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る