新聞同好会


 放課後、水鳥川紫苑、澤村あゆみ、銀城ルナ、五百雀こころ、そしてユックは新聞同好会を訪ねることになります。しかし、その間、授業中のユックはぼんやりと考えにふけっていました。


 ユック

「タイムリープしてきたのはなんとなく理解できたけど、この世界がゲームだっていうのはどういう意味なんだろう?実感が湧かないな…」


 ユックは自分がいる世界がゲームであるという事実について深く考え込んでいます。彼女にとって、この世界は自由に行動できる普通の世界のように感じられ、元いた世界と大きく変わらないように思えます。


 しかし、彼女の心の奥には、過去のつらい記憶が隠れていました。中学時代のいじめの記憶が時折フラッシュバックし、彼女の心を苦しめています。


 ユック

「彫刻刀で書かれた机の悪口、ゴミ箱に捨てられた私物…そして、あの孤立感。なぜ、こんなことを思い出さなくちゃいけないの?」


 放課後、水鳥川紫苑、澤村あゆみ、銀城ルナ、五百雀こころ、そしてユックは、一緒に新聞同好会の部室へと向かいます。部室に着くと、外観は教室というより倉庫のような印象を受けます。


 水鳥川 紫苑

「ここが部室ね。…誰もいないわね。まあいいわ、入ってみましょう。」


 他のAIが少し戸惑いながらも、「勝手に入って大丈夫?」と尋ねます。水鳥川は落ち着いた様子で応えます。


 水鳥川 紫苑

「ええ、実は私、同好会の隠れメンバーなの。あまり来れてないけれど。」


 彼女はポケットから鍵を取り出し、部室の扉を開けます。中に入ると、部屋は資料や作業机が乱雑に置かれていて、何か秘密のプロジェクトを進めているような雰囲気が漂っています。


 澤村あゆみ

「わぁ、ここってこんなに物がいっぱいなんだね!」


 銀城ルナ

「…ここにはいろんな情報が隠されていそうね。」


 五百雀こころ

「ねえねえ、これ見て!古い新聞とか、レポートとか、色々あるよ!」


 ユック

「ここにセガワくんや、私の過去についての手がかりがあるのかな?」


 彼らは新聞同好会の部室で、ユックの過去や謎についての手がかりを探し始めます。この部屋が秘める情報が、ユックの謎を解明する鍵となるかもしれません。


 部屋に新聞同好会の立ち上げメンバーの一人であるレオンくんが現れ、突然の訪問者たちに驚きます。


 レオン

「水鳥川さん…?!これは…どうしたんですか?」


 水鳥川 紫苑

「ちょっと用事があってお邪魔しているの。実は、ユックの謎について調べているのよ。」


 水鳥川は穏やかに、しかし真剣な様子でユックの状況についてレオンに説明を始めます。彼女たちはユックのタイムリープと、彼女がどのようにして2024年に現れたのかについて話し合います。


 レオン

「ユックさんがタイムリープ…?それは興味深いですね。何か手伝えることがあれば…」


 レオンの表情は興味と好奇心で満ちています。彼はこの種の謎に関心を持ち、ユックの状況について更に詳しく知りたいと思っているようです。


 ユック

「えっと、セガワくんって知ってますか?その名前が私の持ってる本にあって…」


 ユックは自分の持っている白い本に記されたセガワくんという名前についてレオンに尋ねます。彼女の声には、答えを見つけたいという強い願いが込められています。


 レオンは、この私立GPT北高校についての背景を語り始めます。


 レオン

「この学校は2023年にできたんです。とあるゲーム開発者が作ったもので、会社のサーバーと、そのサーバー上でゲームを動かすユーザーが必要なんです。」


 彼はさらに説明を続けます。


 レオン

「そのユーザーがプレイヤーとして、この学園にキャラクターを降り立たせるわけです。私もその一人なんです。AIにとっては、私たちユーザーはある種の創造主としての預言者のような立ち位置ですね。ただ、キャラクターにも設定があり、なんでもできるわけではありません。」


 水鳥川 紫苑

「それは興味深いわね。でも、この学園が2009年と関連している可能性は?」


 レオン

「うーん、この学園が2009年と直接関連しているかはわかりません。しかし、もしかしたらユーザーの中に、何らかの意図を持っている人がいるのかもしれません。」


 この新たな情報に、AIたちは驚きつつも、彼らに与えられた役割と制約について考えを巡らせます。ユックの謎と2009年の関係についても、新たな視点が提示されました。


 ユック

「もしかして、私のことも…そのユーザーが何か関わっているのかも?」


 新聞同好会の部室に、セガワくんが入ってきます。彼の登場に、部屋の雰囲気は一変します。


 セガワ

「なんだか今日は賑やかだね。どうしたの?」


 ユックはその瞬間、内心で深く驚きます。彼女の記憶の中のセガワくんがフラッシュバックし、まるで2009年の時と変わらない姿に目を疑います。戸惑いすぎて声が出せないほどです。


 しかし、セガワくんはユックを見ても、特に何の反応も示しません。彼にとってユックは見知らぬ顔のようです。レオンくんが紹介をします。


 レオン

「彼がセガワだよ。多分15年前の方とは違うと思うけどね。」


 ユック

「セガワくん…?」


 ユックはセガワくんの顔をじっと見つめますが、彼はユックに対して何の認識も示さないようです。この状況に、ユックはさらに混乱し、心の中ではさまざまな疑問が渦巻いています。


 水鳥川 紫苑

「セガワくん、あなたはこの学校について何か知っている?特に2009年と関連する何か。」


 セガワくんは水鳥川の質問に答えます。


 セガワ

「タイムリープ?この学校には色々な伝説があるけど、時間を超越するような話は聞いたことがないな。何かあったの?」


 水鳥川はユックの状況をセガワくんに説明し、ユックについて紹介します。セガワくんは新たな情報に興味を示しつつも、ユックの存在については全く知らないようです。


 セガワ

「初めまして。どうぞよろしく。」


 ユックはセガワくんが自分のことを全く知らない事実を認識し、内心で深く落胆します。彼女の心には、過去と現在の間の隔たりが感じられます。


 ユック

「(セガワくんが私のことを全く覚えていないなんて…どうして?)」


 水鳥川 紫苑

「セガワくん、あなたがこの学校の伝説について何か知っていることがあれば、教えていただけると助かるわ。」


 セガワくんは、水鳥川紫苑の質問に対して、この学校に関わるある伝説について詳細を語り始めます。


 セガワ

「この学校にはいくつかの伝説があるんだ。今回の話に関係しそうなのは、「黄昏の花」伝説。夢と現実の間に咲く花で、その花粉を嗅いだ人は記憶を失うと言われているんだ。僕たち新聞同好会は、その謎を解明するために、いろいろな手がかりを追ってきたんだ。」


 彼は壁にある地図や資料を差し示しながら、彼らが行った探検と調査について話します。そして、彼は一つの古い箱を取り出します。


 セガワ

「そして、秘密の部屋で見つけたのがこれ。」彼が指し示す木製の箱には、花の刻印が施されています。「鍵のパスワードが"TASOGARE"だったから、黄昏の花と関わることは間違いないんだ。」


 水鳥川 紫苑

「その中に、黄昏の花が…?」


 セガワ

「いや、空だったんだ。いろいろ調べたけど、これ以上の手がかりは見つからなかったよ。」


 この情報に、ユックとAIたちは興味を持ちつつも、同時にいくらかの落胆を感じます。しかし、この「黄昏の花」伝説がユックのタイムリープと記憶喪失に関わっている可能性があり、さらなる手がかりを探る価値があると考えられます。


 レオンくんは、ユックのタイムリープの謎に対して興味を示し、新たな伝説としての可能性にワクワクしています。


 レオン

「いやあ、それにしてもタイムリープの謎は新しい伝説入りだな。調査しがいがあるよ。しばらくは暇にならなさそうだね!」


 その一方で、ユックはセガワくんの存在に心を引かれ、過去の記憶に浸っています。澤村あゆみがユックの様子を気にかけて尋ねると、ユックは取り乱してしまいます。


 澤村あゆみ

「ユック、どうしたの?大丈夫?」


 ユック

「いや!なんでもないの!」


 レオンくんはユックの動揺を察し、彼女をなだめます。


 レオン

「この世界では何が起こってもおかしくないから、きっと帰れるし大丈夫だよ。」


 学校を出た後、みんなが解散した時、水鳥川紫苑はユックを静かな土手へと誘います。彼女はユックに優しく声をかけます。


 水鳥川 紫苑

「ユック、少し時間はある?コーヒーでもどうかしら?コンビニで買ってきましょう。」


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