和歌を詠む

マイペース七瀬

第1話

「メロディがブルーライトヨコハマ横浜駅時代と変わるプラットフォーム」と、キヨシは、短歌を詠んだ。

 そう、キヨシは、京急電車とアイドルと短歌しかなかった。

 会社で仕事をしても「無能」みたいに卑屈になるキヨシは、これしかなかった。

 キヨシは、母親のシズカにいつも「キヨシは、もっと自信を持ちなさい」と言われている。しかし、40代後半になっても彼女と上手くいかないキヨシは、いつも不完全燃焼だった。

 キヨシは、いつも鈍臭い男だった。そもそも、気になった異性がいても、「ありがとう」も「ごめんなさい」も言えなかった。

 それで、いきものがかり『ありがとう』をカラオケで歌うと涙ぐむ。

 または、安っぽいドラマでも涙ぐむ。

 そして、周りからは「キヨシは、感情移入がすごい」と言われていた。

 元々、上野動物園の『かわいそうなぞう』で涙がぽろぽろ出たのだから、と分かる。

 そして、好きな女性に、ラブレターを書いたが、不毛だった。

 つまりは、付き合えなかった。だが、その延長線上に、短歌があって、気がついたら入選した。

 それは、43歳の時だった。

 だが、短歌の年配の先生は、講座で「恋で悩んでいませんか?」と言われていた。

 そして、そのまま時間が過ぎていたのだと分かる。

 2023年も年末になろうとしていた。

 2023年と言えば、夏の暑さは異常だった。

 東京都心は、気温差が激しかった。

 野球は、オリックスバファローズと阪神タイガースのカードだった。

 阪神タイガースが、優勝した。

 しかし、本当は、読売巨人軍とかヤクルトスワローズも勝ってほしかった。関西ばかりでつまらなかった。

 そして、2020年から流行していた新型肺炎コロナウイルス感染症が、収束した。

 コロナワクチンは、痛かった。

 キヨシも、熱が37.5度まで熱が出た。

 いわゆる、副作用だった。

 だが、マスク着用の必要もなくなかった。

 しかし、ウクライナの戦争などで物価上昇をした。

 ある日だった。忘年会で、出し物があった。「今年は、三条さんが、何かしてください」と忘年会の担当の社員から言われた。

 今まで、内気だったキヨシは、「和歌を詠みます」と言った。

 同僚は「へぇー、和歌ですか」とあっさり、期待もせずに「そうですか」と言われて、当日になった

 キヨシは、もう、文章を書く以外は、取柄はなかった。そんな時、仕事の昼休みの時、キヨシは、また、スマホで「今度、どんな和歌を詠もうか」と考えていた。そんな時、女性の社員のミユキが、「三条さんは、何を考えていますか?」と尋ねた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る