第2話 バッティングセンターの思い出
人は
場面場面で
演技してると思う。
家族と会話する時は素を見せて
世間的には嫌な言葉を使いまくる。
「ただいまー。」
「おかえり。
悠、肉まん食べる?」
「ちっ、いらねーよ。」
「ったく、口悪いわね。
いらないなら
私が全部食べるから。」
母親との会話はそんな感じだ。
ストレス発散にもなる。
一歩外に出て
電車に乗る時
友人と話す時は
害のない言葉をチョイスして
他愛もない話で盛り上がる。
ファストフード店での会話も
丁寧に敬語なんて使って
対応する。
お客様である自分もさすがに
横柄な態度はとらない。
レストランに入って
注文する時も
的確に聞き間違えないように
話す。
つまりは、人によって
態度を変えていい人を装っている。
会社での自分も
いつクビを切られるかわからない
世の中のだから
平穏に過ごせる自分を演じる。
俺は、お店や家、職場の他に
彼女の前でも態度を変えている。
たくさんの彼女がいるのだから
嫌われないようにと努力する。
今日、デートする彼女は
華鈴だ。
美咲と違って、少しボーイッシュ。
スカートを履くのを嫌い、
いつもズボンかホットパンツを履く。
帽子は野球少年のようなキャップ。
女子だが、化粧を嫌がる。
眉毛を整えるくらいだ。
今日の行く場所は釣りの予定だった。
でもスマホにメッセージが入って、
女の子の日だから行くのはやめると
言われて、
すぐに目的を変えた。
女性っぽくないところで
デートするところを
無い頭を振り絞る。
バッティングセンターを思い出した。
華鈴は大層喜んだ。
悠は、いつも待ち合わせする駅に向かう。
美咲に気づかれないように配慮はするが、
バレても大丈夫と思うようにしていた。
「お待たせ!」
「おう。
んじゃ、行こうか。」
「お昼はオムライスが食べたいんだけど
良いかな?」
華鈴は
悠と手を繋ぐことはなかった。
恥ずかしいのもある。
女子っぽくするのを
かなり嫌がる。
その割には
ベッドに行けば
盛りの
女豹のように
女子へと変貌する。
ちょっと難しい性格だった。
バッティングセンターに着くと
男子顔負けのように
バンバンボールを打っていく。
学生時代にソフトボールの
部活に入っていて
ピッチャーとしての
役割を果たしていた。
悠はバッティングもそこそこにして、
ボクシングゲームに夢中になり、
バシンとグローブをはめて
打ってみた。
想像以上に力強く打てた。
華鈴をやりたいと
グローブを貸すと俺よりも
力強く打っていた。
ノリがいいのはありがたいが
男子の方が弱いって
悲しくなってくる。
俺は悔しくなって何度も挑戦するが
華鈴の記録を乗り越えることはなかった。
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