第47話 結界の中
第47話 結界の中
「そうなのだ。ここからフーマ王国が見えるのだ。
でも、フーマ王国からは見えないのだ」
アダルーシアとアダルハードは、マチルダが指さす方に首を向けた。
「うわ~。本当だ。マチルダちゃんすごいわ!
それになんだか、ここは居心地が良いというか気分が上がるわ。
ねえパパ?」
「そ、そうかシア。前回は気分が上がる感じがしたが今回はそんな感覚はないな?」
「パパは仕方ないのだ。前回は魔力が少ないのにもかかわらず、竜剣の持ち主だったので、竜剣が気分を上げていたのだ。
シアは、魔法の素質があるから沢山の魔素を浴びて身体が喜んでいるのだ」
「マチルダ様の父親じゃないのにパパと呼ばれるようになってしまった」
アダルハードは、自分より二千年以上年上にパパと呼ばれショックを受けていた。
「ここで、いつまでもお喋りしているわけにはいかないのだ。
ちゃちゃっと移動してベルティーナにいくのだ。
家族が待っているのだ」
マチルダは竜剣をアダルーシアに渡した。
アダルーシアが竜剣を受け取るとピカーと光りが放たれた。
「光ったのだ、竜剣はアダルーシアを主と認めたのだ。
シア、魔力を竜剣に流すのだ」
「え? でもマチルダちゃん私魔法を使ったことないから魔力の流し方わからないわ」
「仕方ないのだ。
この魔石を左手に握り、右手で竜剣を鞘から抜き握るのだ」
マチルダは、手の平を上に向けると、ものすごく輝く魔石を出現させた。
それを、アダルーシアに渡し、自身は竜剣の刃先を指で摘まんだ。
「強引にシアの魔力を竜剣に覚えさせるのだ」
その声と同時にマチルダの掴む竜剣の刃先が白く輝いた。
ほんの一瞬遅れて、魔石が黄色と橙色に光り、アダルーシアの右手が光り、右腕、胸、左腕、左手そして竜剣が順に光り出した。
そして、竜剣はアダルーシアの身体に合わせ刀身の長さを変えた。
マチルダは、竜剣の刃先を摘まむのを辞め、
「シア、剣を上から振り下ろしてみるのだ」
アダルーシアはコクッと首肯し、竜剣を上げそのまま振り下ろした
ブォーン と音がして三日月の形の閃光がでた。
その三日月の閃光を見て、アダルーシアとアダルハードは、口を開けて目を丸くした。
「『危剣』(危険)の復活なのだ。初代(初代女皇)の名付けた宝剣の完全復活なのだ」
マチルダはぴょんぴょん跳ね、成功を喜んだ。
「こ、この閃光が本来の竜剣の持ち主だけがもたらすモノか……
私はこのような輝きはなかった」
「これで、シアは私が運ばなくても移動できるのだ。
後は、前のようにアダルハードを運ぶだけなのだ」
「え? 再びあの移動方法を使うのですか? マチルダ様」
「パパも私に様付けしなくてもいいのだ。私とパパの中なのだ。
そして、また私と手を握って仲良く移動するのだ」
「あれ、ものすごく怖い。 またあの移動方法で…… 怖い」
アダルハードは冷や汗をかいている。
「シアは、竜剣を鞘に戻して、竜剣を跨ぐのだ」
「え? これでいいの」
アダルーシアは、言われたとおり、『魔女の宅○便』の主役の少女のような姿になった。
「ほえ?」
アダルーシアは、変な声をあげた。
自分の足が地から離れ、ふわっと浮いたからだ。
「え? なにこれ、私空を飛べるの」
――とアダルーシアが呟いたあと、急に歌い出した。
「マチルダと出会った奇跡が♪ この胸に溢れている♪
きっと今は空を竜剣で飛べるはず♪ 」
※替え歌です。ドイツ語を日本語に翻訳して『先の尖った』さん達、すみません。
そして、飛び方を教えていないはずなのに、アダルーシアは、鼻歌を続け、空も自由に飛び回っている。
それを見上げていたマチルダは、
「アダルーシアは、すごいのだ。リーサが空飛ぶ魔導具を使って空を飛んでいたときと同じように、自由自在に飛んでいるのだ。
わたしも負けないのだ!」
マチルダはそう言って、アダルハードと手を繋ぎ、びゅーんと飛び始めた。
「うわーー!」
悲鳴を上げるアダルハードを無視してマチルダはアダルーシアとのランデブーを楽しんだ。
もちろん、アダルハードは数秒で意識をなくした。
「シア、もうそろそろ、みんなの所に行くのだ。
みんな待っているのだ」
「待っているのは、マチルダとは、別の古竜様達?」
「そうなのだ、お祖母様、お母様、お姉様とクズがいるのだ。
ついてくるのだ!」
マチルダは散々空を飛んだ後、竜剣で飛ぶアダルーシアとベルンに向かった。
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