エビ

 それは吉野が「エビの尻にキスをしなフェア」略してエビフェアをしている時の事だった。


 今日もやる事もないのに律儀に集合していた無味無臭の4人。そしてリーダーが席からフト視線を上げてエビの尻にキスをしなフェアのポスターを目にした時の事だった。


「エビか……お前達はブラックタイガーの本名は知っているか?」

 というリーダーの突然の投げかけに。

「えっ? ブラックタイガーってあの黒っぽいエビの事だよね? 本名じゃなかったの?」

 と、脊髄反射で返事をする香織だが。この本名とは日本での正式名や学名といったニュアンスの事なのだろう。


 しかしリーダーは静かに首を振り。

「違う。ブラックタイガーの本名は『ウシエビ』という」

『牛海老!』

 と驚く面々だがこれはボケではなく事実である。

「ふざけているだろう? ブラックタイガーを北九州一カッコイイ名前のエビだと思っていたのに、実はウシエビの二つ名がブラックタイガーだったのだ……おかしいと思わないか? 牛海老の二つ名に黒い虎だぞ? せめて黒い白ホルモンにするべきだろう? そもそも虎海老がいるのに牛海老の二つ名をブラックタイガーにするとはどういう了見だっ!」

「えぇっ! トラエビっているのっ!?」

 いるの。


 っとリーダーが憤り、香織が驚愕しているところに横から三世。

「確かにそうですね? ウシエビをブラックタイガーと呼ぶのを他で例えるなら、ブタゴリラって名前のゴリラを緑のたぬきって呼んでるのと同じですもんね?」

(いや、紛らわしぃ。フツー例えってわかり易くするために例えるのに、例えの方が色々とややこしい)

 とは声に出さない香織。そこへ更に童子も加わる。

「でも、それはしょうがないんじゃない? そもそもそのエビを最初に発見したのがブラックタイガー博士だったからブラックタイガーって名前のエビになっちゃったんだし」

「なにサラッとそれっぽい嘘付いてんのワラワラ! それだったら本名がブラックタイガーで別名がウシエビじゃなきゃおかしいじゃん!」

 と素早くボケを看破する香織にリーダーが続く。

「そうだぞ。だいたいブラックタイガー博士を最初に発見したのがブラックタイガー軍曹だった訳だからな」

「どこに生息してたのブラックタイガー博士はッ!?」

「そしてそのブラックタイガー軍曹を最初に発見したのがリモートゴリラだ」

「リモートゴリラッ! リモートゴリラってどういう事っ!? そしてそのゴリラがどうやって野生のブラックタイガー軍曹を最初に発見したのっ!?」

 と目を丸くしている香織だが――


 なんの生産性もない。如何にも今どきの女子高生らしいこの会話……まさかの次回続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る