第7話 とある修学旅行のお話-ホテル-
私たちはバスから降りた後、広場に向かい先生の説明を受けた。
説明と言ってもこれからどこ行くかーとかそんなことしか言われなかった。
「いやー楽しみだねぇ」
「私食べ歩きしてみたいっ!」
「おー、じゃあみんなで行くかー」
「一応言っとくけど今日はお寺巡りね」
「……」
私の発言で静かになるのやめて…
「でもお寺巡りもなんやかんや楽しそうだよねー」
「目的地の奈良県割と離れてるからまだ移動するんじゃない?」
「……」
ほんとに私の発言で静かになるのやめて。
「神様から何か特別な力を授かれたりして!例えば超能力とか~?」
「え~ほんとか~?」
にやにやしながらこちらの方を見る咲稀。
「超能力とか、この世に存在しないよ。あとお寺とかで超能力ってなんか合わないでしょ」
「そっかぁ」(美春がそれ言うんだ。バリバリ能力者だけど)
何か隣の人の心から聞こえてきた気がするけど気のせい気のせい。超能力なんか無い無い。
まあ冗談はさて置き…
「目的地に着いた後はご飯食べてから歩きでお寺行くって行ってた」
「結構足疲れそうだね」
「え~、私足持つかなぁ…」
「そん時は桃花も美春もまとめてボクが背負ってあげるから安心しなー」
「無理でしょ」
まあ雑談しながら歩いてればすぐ着く。楽しい時間というものはあっという間に過ぎてくもの。
私たちはバスに乗り込み奈良に移動した。
さっき一回バス降りた意味とは。まあトイレ休憩ってことか。
奈良県に着いた後は十数分くらい私たちは雑談しながら歩いた。そして徒歩でまずお弁当屋さん(かな?)で昼食を食べた。
「うわぁ!めっちゃ美味しそう!!」
「この味噌汁うめぇ」
「こんないいご飯.....1学年人数分.....学校側の予算は大丈夫なのか...?」
「いきなりどうした」
カシャッ
「ん?ひあうおっはあ?」(ん?美春今撮ったか?)
テレパシーが無かったら何言ってるかわかんないな。食べ終わってから喋って。
「後で見せたげる」
私は修学旅行で生活係なるものに任命された。なぜ「生活」の係なのかは知らないけど学校から配布されたカメラの管理とホテルの部屋の荷物の管理が主な仕事。楽そうだからそれにした。
それ故卒業アルバムとかに載せる写真とかもいっぱい撮る必要がある。
ん?なんでスマホ持ってるのにわざわざ学校からカメラが配布されたかって?
私がスマホ持ってってもいいように認知を無理やり書き換えたからカメラ配布が不自然に残ったままになっただけに決まってるじゃない。
みんなの写真をパシャパシャ撮りながら普通にお腹いっぱいになるまでお昼ご飯を堪能した。
「よーし、お前らー。次はすぐそこのお寺に行くからなー」
『はーい』
今から行くお寺ではそのお寺の歴史とかを説明してもらいながら回っていくらしい。
足が疲れそう。
「おーい。咲稀、おいてくよー」
「待って待って待って」
「美春!写真!写真撮ろ!」
「はいはいちょっと待って」
お寺もいざ来てみると結構きれいだったり写真撮影にもってこい!って感じの場所もあったりして私達は色々な場所で写真を撮った。
歴史とか説明してくれた人の説明も分かりやすかったから結構楽しめたね。まあ、強いて言うなら足が疲れたかな。
「私、足、もう、無理かも」
「桃花、お前ならやれる、諦めんな!」
結構立ったままだったからね。出血大サービスで桃ちゃんに足の疲れを今日の夜の私に移してあげた。他人の疲れを自分に移すといった使い方もできる。まあそんな使い方めったにしないけど。
余談だけど私は超能力者っていう特殊体質なせいか常人より体力とかそこら辺が強い。だから桃ちゃんの今の足の疲れ程度だったら余裕。ちなみに常人より強いのは体力とかだけで学力は変わらない。というか私の場合常人よりも下。くそが。
「......!私もうちょっと頑張れる気がする!元気が湧いてきた!」
いきなり疲れが吹き飛んだというのに何一つとして不思議に思わない桃ちゃんであった。
「ねぇ、次はどこだっけ~?」
「確か次は東大寺とかその辺じゃない?」
「いやすごい適当」
そんなこと言ってたら先生が近づいてきた。
「おーい適当なこと言ってんじゃねぇよ。もう次ホテルだぞー。東大寺行くんなら明日のタクシーな」
「せんせーホテルのご飯って美味しい?」
「結構最近できた新しいかつ割といい感じのホテルだから結構美味いんじゃないか?ビュッフェだって聞いたし」
「びゅっふぇ」
「よっしゃあ制覇するぞ!!」
「えっびゅっふぇって何」
「ほどほどにな...」
デザートとか絶対争奪戦が始まるだろうな....
新し目のホテルだからこれは期待大。
「もうそろそろホテル移動するからバス乗るぞー」
「え~またバスー?」
「文句言うなおいてくぞ」
「ごめんなさい」
その後、私たちはお寺を後にしてバスに乗り込み移動した。
ちなみにバスの中でも数十枚は写真撮った気がする。こっそり撮った咲稀の寝顔、わいわいしてるときにとった写真、こっそり撮った桃ちゃんの寝顔、こっそり撮った春華ちゃんの寝顔、こっそり取られた私の寝顔。
寝顔しかない.....
「いやー、バスの中も中々楽しかったねぇ」
「ねー!」
「確かにたまにはこういうのもいいよね~」
「あとはホテルでくつろごー!」
「羽目外しすぎないようにしろよー?」
「大丈夫だって!」
もうすぐでホテルに着く感じの時、咲稀と春華はすっかり談笑にふけっていた。
「あれ?そういえばさっきから美春の声がしないな」
「しーっ。美春ちゃん寝てる」
「余裕そうな顔して本当は疲れてるんじゃーん。寝顔いっぱい撮っとこ」
「起きたら多分殺されるよ」
「えっ美春そんなヤバいの?」
私がここが夢の世界だと認識するまでそう長い時間はかからなかった。
夢の中で自分が夢を見ている事を認識できるってなかなかすごいよね....っていうかさっさと覚めてほしいな。
正直今みたいなのは今回が初めてでは無い。私が変な体質だからか知らないけど稀にこんな感じの変な夢を見る。起きたくてもなんか自分のタイミングで起きれないから正直めんどくさい。
私がこれは夢だと認識できた理由は2つある。
「お姉ちゃん」
聞き覚えもない誰かの声が私を呼んだ。お姉ちゃん…?私1人っ子なんだけど。
私に妹なんて存在しない。これが1つ目の理由。
「どうして一人で行っちゃったの?」
いやどこによ。私は一体どこからどこまで行ったのよ。
目の前にいる女の子が、私の声を聴いてほっとしたような表情を見せた。
「冗談はよしてよ。記憶喪失じゃあるまいし。っていうかほんとさっきの人なんなんだろうね。ひき逃げの如くどっか行っちゃったけど。やっぱり1人で行動すると襲われたりして危ないからだめ!」
いやこの状況がなんなんだろうね。ほんと。ってか何で私は妹(らしい人)に怒られてんの。
ここが夢だと気づいた理由2つ目。周りの景色が異常だった。普通に気持ち悪い。
周りは平原で草原が広がっている。しかも地面から大都会にありそうな大きい建物が生えてるうえに空中からもビルが下向きに生えてる。意味わからん。何なのここ。それに現実にあるはずもないものが沢山あるし。
普通に物浮いてるし。普通に考えて無いわ。
ちなみにだけど私は何にやられたんだろう。私あんまり能力で戦うとかやりたくないんだけどな......
早く目が覚めないかなーって思いながら状況を整理する。
「何ごちゃごちゃ言ってるの?大丈夫、私はお姉ちゃんの味方だからね!」
そりゃどうも。......なんか違和感感じると思ったけど。そういえば静かだね。
この子からテレパシーが聞こえない。
人というものは自分では無意識のつもりでも何かしらのことは心の中で考えてしまう。
だから何も聞こえないというのは生きている限りあり得ない。
....って言ったところでここが夢であることを更に裏付ける証拠を言ったにすぎないけどね。夢なんだからテレパシーが無いのもありえないことは無いわけだから別におかし
バッ!
ゴンッ
「いだぁぁぁぁ」
「びっくりした…」
「だ、大丈夫?美春ちゃん?」
そこには見慣れた3人の顔があった。おまけに咲稀はおでこを押さえていた。どうやらいきなり私が起きたせいで顔を覗き込んでいた先にダイレクトアタックしたらしい。
はあ。やっと目が覚めた。あれねぇ、なんで妹なんだろ。私は心の奥底で妹のような存在に対する憧れがあった的な…?いやいや、そんな馬鹿な。
「美春―、おはよ」
「…おはよ」
「さっきおでこ大丈夫だった?」
「ん、大丈夫。咲稀は?」
「あんなもんへっちゃらだよ!」
「ったく~。美春が急に起きるからびっくりしたじゃないか~」
やはり実は痛いのか咲稀は頭を撫でながら笑っている。
「私どれくらい寝てた?」
咲稀のおでこに触れて痛みを私に移しながら春華ちゃんに聞いた。
「30分くらい寝てたよ。美春ちゃんの寝顔いっぱい撮ったんだから」
マジか。
「後で見るかー?」
「いや、遠慮しとく」
自分の寝顔とか見るのきついわ。
「あ、そろそろホテルに着くらしいよ」
「やっとか」
「いや美春寝てたでしょ」
寝てたけども。
それから私たちは数分間雑談した後にホテルの駐車場に着いた。ちなみに、ご飯どんなだろうねー、とか部屋テレビ付いてるらしいよ、とかそんな内容。
「お前らー。ホテル着いたからさっさとバス降りろー」
うっわでっか。
私達が泊まるホテル。前にも言った気がするけど割と最近にできたホテルだから結構いい感じ。
「美春ー。部屋のカードキー持ってきたぞー」
「ありがと」
「1部屋2人らしいけど部屋割りどうするの?」
「じゃあ美春と咲稀、ボクと桃花で」
「りょーかい!」
決まるのはや。と、思いながら私は春華ちゃんからカードキーを受け取った。
へぇ、木製のカードキーなんだ。珍しい。この中にICチップ的なやつとか入ってんのかな。
「美春ーエレベーター来たぞー」
「今行く」
春華ちゃんはエレベーターに乗るとカードキーをかざした。
どうやらこのエレベーター、カードキーをかざさないとその階に行けないようなシステムになってるらしい。なかなかに防犯対策バッチリ。
「私達はこっちの部屋ね!」
「じゃまた後でなー」
...ふう。とりあえず荷物置こうか。
「部屋に荷物置いてすぐご飯食べるっぽいから早めに行っとこ!5分前行動」
「まだ15分前だし咲稀に関しては食べたいだけでしょ」
「うん」
堂々たる態度。
あ、ちなみにこのホテルの部屋。やはりお風呂の湯船は無くシャワーのみになってる。マジか。
「他の人の分もしっかりと考えて常識の範囲内で取れよー」
『はーい』
このホテルのご飯はビュッフェ形式で好きなの取り放題。まあ限度はあるけどね。隣の席の男子の机の上にはデザートが人数の5倍くらいおいてあった。うわーやってるなぁ。
「ジュース取ってきたよー」
ちなみに桃ちゃんが持ってきてくれたジュース。私が能力で支えてないと実は4つとも地面に真っ逆さまになったりする。桃ちゃんもうちょいトレーの真ん中の方にジュース置いて......
「ジュースとかあるんだ」
「最高じゃん」
「美春ー早くご飯取りに行こー!」
「はいはい」
割といい感じのホテルだけあって食事の品揃えもいい感じ。すごい美味しそうなのがいっぱいある。私達はとりあえず美味しそうなのを取ってった。
「いっただっきまーす!」
机に戻って4人のうち誰よりも爆速で食らいつく咲稀。その光景を横目に私はマカロニサラダを食していた。
美味しい.....
流石いい感じのホテル。ほんとに料理が美味しすぎる。
「めっちゃ美味しいね」
「ねー」
...あれ?咲稀は?
「おかわり取りに行った」
流石。
それから40分ほど私達は食事を楽しんだ。あ、ちなみに隣の席の男子軍の机のデザートが増えた上に大量のジュースのコップも追加されていた。うわーやってるなぁ。
料理が美味しいから気分が高揚するのは分かるけどね。例えば(うっわにっが...エスプレッソってこんな苦いんや....)と心のなかで思いながら友達の前でドヤ顔でエスプレッソを飲む男子もいれば、デザートのケーキ大量奪取&取引が行われていたり、他にもお前何人分食ってんだよって言いたいくらいおかわり行ってる人もいた。ちなみにホテルは貸し切りではないため一般のお客さんもちょっといる。
先生も気分が高揚してるのか知らないけど.....っていうか心の中見たらしてたんだけど、もはや生徒の暴走を止めることもなく料理を存分に楽しんでた。もう一度言おう。ホテルは貸し切りではないため一般のお客さんもちょっといる。
まあ、言うほどエグい迷惑行為はしてないから大丈夫だと思うけどね。
現に一般客は(いいなぁ。元気がいい子どもたちだねぇ)とか(俺も中3の時こんな感じで争奪戦してたなー)とか思ってたからまあ大丈夫ってことにしとこう。
あのご飯を明日も食べれるのか。やったぁ。
「美春ー、部屋帰ってお風呂入らないとー」
「え、咲稀結構食べたと思うんだけどそんなすぐ大丈夫?」
「私を舐めてもらっちゃ困るね」
「ごめん大丈夫そうだね」
じゃあ先に上に上がってるねー!と手を振りながら咲稀とエレベーターに乗った。
「じゃ私達も上がろっか?」
「そだなー」
「じゃあ美春先お風呂入ってきなよー」
じゃ、お言葉に甘えて。
あ、ちゃんと更衣室もあるしお風呂とトイレ別になってる。...まあシャワーだけだからそらそうか。
私はバッグから着替えが入った入れ物を取り出してそのへんに置いといた。そして脱いだ服をその入れ物にぶち込んだ。
ふむ、シャワールームはガラス張りの小さい部屋かー。海外みたいで不思議な感じ。とか思いつつ中に入ってシャワーを浴びる私であった。
「あー」
あーっ....あーっ....あー........
ちなみにこの部屋、声がよく響く。面白い。
ちょっとの間声響くので遊んだ後に咲稀とチェンジした。
「そういえば咲稀ってよく食べる割に太らないよね」
「私太りにくい体質なのかもー」
「なんか女子の間で炎上しそうな発言だね」
「ところで美春シャワールームの中で『あー』とか『わー』とか言ってたけどどうし」
バタン。
ちゃんとご丁寧に服を脱がせてあげた後シャワールームの中にぶち込んだ。ほんの数秒の間の事だから丁寧かどうかは保証できかねるけど。
「ちょっと!能力で服脱がした後浮かせてシャワールームの中にぶち込まないで!!なんか楽しかったけど!!」
なんか楽しかったらしい。
その後ドライヤーで髪を乾かしてると春華ちゃんと桃ちゃんの心の声が聞こえてきた。その直後インターホンが鳴ったからあの二人だろうと確認せずドアを開けた。警戒心皆無である。
「UNOしよーぜー!」
「咲稀今シャワー浴びてる」
っていうかもうこの二人シャワー浴び終わったんだ。早いな。
「UNOしよーぜー!」
「だからまだ咲稀シャワーだって落ち着きなよ」
どんだけやりたいのUNO
っていうか私みんなの心の声聞こえるからその分有利だね。
「じゃあカード配っとくねー」
桃ちゃんが慣れた手つきでカードを配っていく。
「あ、これトランプだったUNOじゃない」
慣れては.....無い....のかな?
数分後咲稀が出てきた。
「あーっ!私抜きでUNOをやろうだなんて...!?」
「いやお前待ってたんだよ早く髪乾かしてこい」
「ねぇこのテレビYouTube見れるー」
なんかみんなえらい自由だね。
その後なんやかんやあってUNOをしてなんやかんやあってYouTube見た後なんやかんやあって布団の中に入った。完全なる説明放棄である。
ちなみにUNOは私が勝った。
「美春ー、起きてるー?」
4人でわいわいしたUNOの余韻に浸りながら消灯して並んで寝てたら咲稀が話しかけてきた。
「寝てる」
「起きてんじゃん」
「明日結構朝早いから早めに寝てよ」
「大丈夫。美春が起こしてくれる」
むふー、とドヤ顔しながらさらっと言う咲稀。
「起こすのやめた」
「ごめん」
よろしい。
「なんか美春って変わったよね~」
「どこが?」
自覚はないけど。しかも悲しいことにテストの順位も相変わらず。くそが。
「いや、春華ちゃんとか桃ちゃんとか色んな子と仲良くなったなーって。あとテストの点は知らん」
「まあたしかにね」
「前の美春はあんまそういうの無かったからなんか成長したなーって思ってね」
「成長とか言うな母親か」
「いやーなんか美春が他の人と仲良くしようとしてるの今まであんま見なかったからね、色んな子と仲良くしてるとこ見てると結構新鮮でかわい....」
「はいおやすみ」
私は咲稀に触れ強制的に睡眠に入らせた。一応言っとくけど強制的って言ってもそんな体に悪いとかはないからね。人体に害があるものは基本使わない。
「明日の朝ごはんは7時から。そこから部屋に戻り荷物を持ってタクシーへ。準備の時間はあまりないからご飯食べ行く前に済ましたほうがいいから6時前には起きておこうか」
スケジュール表を確認しながら自分に暗示をかける。もちろん能力的な意味で。
『5時45分頃に起きる』
どのくらいの時間に咲稀起こそうか。
まあ、明日考えればいいか。
<あとがき的なやつ>
先に言っときます。修学旅行編は割と一話一話が長くなりそうです。あと、話の中には実際に僕が体験した修学旅行の実話も入ってますし、もちろん妄想も入ってます。ご了承を。
夢の世界のくだりは修正前のクッソあからさまな伏線の名残です。あからさますぎて消そうとしたけどなんか残したいなーって思ってああいう変な形になりました。
なんか回を重ねるごとに百合要素が濃くなってる気が…。早急に男キャラ出さないと後々響きそう。
でも今ハマってる小説が結構百合ってるからどうしても百合の方向に行っちゃうんだ…仕方ない仕方ない。
人間は生まれ持った性には逆らえないってどっかで聞いたことある。爪が伸びるのを自分で止められる人はいるか?つまりそういうことだ。
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