災厄
しばらくその場でじっとしていたものの、自由となったスズメはアンテナの一角を忙しなく移動し始めた。領土を主張せんがためのデモンストレーションなのか、狭い範囲を跳び移ったり、端から端へと羽ばたいてみたり、ある種の恍惚を抑え難しとでも言わんばかりに、小さな体を大袈裟に躍動させ続ける。
全身で勝者の喜びに浸りきったスズメの動きが、突如ぎこちなくなった。ひとところに留まって、もがきだしたのだ。得体の知れぬ力に抵抗するかのように羽をばたつかせ、苦悶の口を
よくよく見ると、何やら黒く細い紐のようなものが右足に絡まっている。そいつを嘴で突っついたり、羽をばたつかせ、飛び立とうとした。が、強く羽ばたけば、紐も同じ力でその体を捉え、縛りつける。逃れんとして幾度か挑んだ挙句、小さな体は吊り下げられ、揺れだした。そこからがむしゃらに這い上がり、二本の足が金属の細い棒をつかむと、やっと再び威厳を取り戻すことができた。そうして失敗を繰り返し、長時間もがき続けたが、一向に解ける気配はない。それどころか、却って強固に紐はか細い足を締めつけてしまったようだ。
恐らく、道端に無造作に捨てられた短い紐が強風に飛ばされ、アンテナに引っ掛かっていたのだ。折角確保できたスズメにとっての安住の地は、運悪く災いの地であった。
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