第3話検索する
僕は急いで面接が行われるビルに向かった。
約束の時間よりやや遅れて、僕は面接がおこなわれる会議室に通された。
はっきり言うと面接はさんざんだった。
手に残る難波零子の温かさと柔らかさ、あの可愛い声の関西弁が頭から離れずにいた。そのため、何をきかれてどう答えたかはまったく覚えていない。これぞ上の空というやつだ。
面接官のどこか呆れた表情だけが記憶に残った。
ここは諦めて、またハローワークにでも行こうか。それとも失業保険でも申請しようかと考えていたらスマートフォンが着信音をならした。
難波零子
「今日はありがとう。撮影間にあってよかった。全部灰都君のおかげやわ。今度お礼させてね。よかったらインスタグラムとツイッターもフォローしてね♡♡」
それは難波零子からのLINEであった。
自撮り画像とインスタグラム、ツイッターのアカウントが書かれていた。
僕はとりあえず返信する。
「それはよかったですね。インスタグラム、ツイッターのフォローします」
そう言えば、難波零子は撮影があると言っていた。彼女は芸能人なのだろうか。
だとしたら、頷ける。あれだけの美貌だ、それを生かす仕事をしていてもおかしくない。
あのかわいさは一種の才能だと僕は思った。
僕はとりあえず、送られた画像を保存した。
はーそれにしても難波零子は可愛いなあ。
僕は保存した画像を見ながら、しみじみそう思った。
僕は休憩がてら、たまたま見つけたタリーズコーヒーに立ちよった。面接で緊張して、喉がからからだ。冷たい飲み物で喉を潤したい。それに涼しいとこにも行きたい。節約かなにか知らないけど、面接のあったビルはそんなにエアコンがきいてなかったんだよね。
アイスカフェラテを注文する。
僕はアイスカフェラテを持ち、空いているソファー席に座る。
飲み物をひとくち飲む。
心地よい甘さが口に広がる。
僕はさっそくスマートフォンを取り出し、インスタグラムを開く。
ついさっき教えてもらったアカウントを検索する。
すぐに難波零子のアカウントが表示される。
彼女は僕の推測通り、モデルを
いろんな服を着たおしゃれな彼女が写し出された。どれもこれもかわいくて綺麗だ。
こんな子と手をつないで歩いたなんて、信じられない。
しかし、あれは現実だった。
そう、現実なのだ。リアルなのだ。本当に起こった出来事だったのだ。
僕はLINEのアプリを開く。
そこには難波零子の名がある。
アイコンは彼女の自撮りだ。頬の横でピースサインしたとてつもなく可愛いものだ。
それをタップすれば彼女につながることができる。もちろん、僕から連絡する勇気はない。
でもこれは、あの出来事は夢ではなかったということの証明だ。
僕はツイッターのアプリを開く。
教えてもらったアカウントを検索する。
ツイッターの方のフォロワーはものすごく少ない。
どうやらインスタグラムは表向きでツイッターは内向きと使い分けているのだろう。その証拠にインスタグラムのフォロワーは一万人近くいるのにツイッターの方は百人程度だ。
僕はさっそくフォローする。
なんとすぐに相互フォローになった。
この小さなスマートフォンの向こうに彼女がいると思うと心臓が痛むほど鼓動を速めた。
僕は震える手でスマートフォンの画面をタップする。
難波零子の過去のツイートを見てみる。
いくつかのプライベートっぽい画像が写し出される。
僕はその画像のひとつに気になるものを見つけた。
それは去年の冬に開催されたインテックス大阪のイベントの様子であった。
大きな魔女の帽子をかぶったセクシーなドレスを着た難波零子が楽しそうな笑顔で写っている。
これはコスプレした画像だ。
たしかこれは二年ぐらい前に放送していたアニメだ。たしかタイトルはドリームイータージャックだったかな。そのアニメの主人公である魔女ジャック・オー・ランタンのコスプレをしている。
これは難波零子が僕と同じオタクだという証拠ではなかろうか。
モデルなんてしているから、学生時代はカーストトップにいた陽キャだと思っていたが、そうではないかもしれない。
いや、最近はコスプレ趣味も一般的だ。
東京の池袋はハロウィンの時期はコスプレした陽キャだらけになるではないか。
でも、このジャック・オー・ランタンというキャラクターはかなりマイナーなアニメのものだ。よほどのオタクではないと知らないキャラクターだ。
ということは難波零子はオタクなのか。オタクだったら俄然親近感がわいてきた。
とりあえず、そのセクシーな画像も保存した。胸元がざっくりと大きく開かれたドレスをきているため、深い胸の谷間がよく見ることができる。
この画像をニヤニヤしてみているとピロリンとスマートフォンが小さく鳴る。
LINEの着信音だ。
すわっ難波零子かと思って期待したが、別人であった。
それは妹の
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