金髪青眼の彼女は関西弁が強すぎる

白鷺雨月

第1話彼女は金髪青眼のセクシーガール

僕の名前は影山灰都かげやまはいと、二十六歳の成人男性である。趣味はアニメを見たり、ゲームをプレイしたり、フィギュアを集めたりすること。端的に言えばオタクである。そのためかどうかは自分では分からないが、生まれてこのかた彼女なんていたためしがない。そう、すなわち童貞でもある。

兵庫県にある雪城市というところに住んでいる。瀬戸内海に面した風光明媚なところだ。

僕の職業は現在のところ無職である。三ヶ月前に勤めていた会社が倒産してしまったからだ。ニート生活を満喫していけど、さすがに貯金が危うくなってきた。ということで、そろそろ就職しなくてはと考え、ある会社の面接を受けに、僕は神宮町に来ていた。

僕が面接を受ける企業は道を挟んで向こう側にある。

横断歩道前に立ち、信号が青に変わるのを待つ。

季節は初夏と呼ぶには暑すぎる六月。額に浮かぶ汗をハンカチでふきながら、僕はただ黙って待つ。このくそ熱い中、スーツはつらい。募集要項には服装は自由と書いていたが、Tシャツに短パンで面接を受けることなんてできない。無難にスーツになってしまうのが、世の常だ。

僕の目の前を自動車がけっこうなスピードで駆け抜けていく。駆け抜けていく風が少しだけ、涼しい。


「はあっ…… なんでやねん。Googleの地図見てるのになんで目的地からはなれていくねん。さっきまで目的地まで三分やったのに八分になってるやん。どないしたら時間ふえるんや。あっもしかしたら変なループにはまったんかな。もしかしたらうちこのまま異世界いってまうんかな。異世界行ったらどんなチートスキルもらおうかな……」

背後から女性の声がする。

かなり可愛い声で、いわゆるアニメ声というものだ。

ずっと聞いていたいと思わせるほど魅力的な声だ。

「いや、現実見なあかんわ。うちかてもう二十歳なんやからな。ママに一人でいけるわっていうてもたからな、電話して聞くのは恥ずいし。撮影現場に一人でいけるようにならなあかんねん」

その女の子の声はだんだんと近づき、僕の隣に立ち、そのまま通り過ぎていく。


いや、ちょっと待てよ。

まだ信号は赤のままだ。

車はビュンビュン走り抜けていく。

でも声の主はスマートフォンの画面を見つめたまま、赤信号の横断歩道を渡ろうとしている。

これはまずいと思った瞬間、僕の体は勝手に動いていた。

声の主の女の子はもう三歩ほど横断歩道に足を踏み入れていた。

「危ない!!」

僕は叫び、彼女の腰を持ち、力いっぱい後ろに引っ張る。

思いっきり引っ張ったため、背後に倒れる。

頭と背中をアスファルトの地面に強打した。

うっむちゃくちゃ痛い。

頭がガンガンする。

背中も強打したため、息をするのも辛い。


僕たちがいたところを赤いスポーツカーが駆け抜けていった。

間にあってよかった。

あのままだったら、このは車に引かれていた。


安堵していたら、手のひらにむにむにとした極上の柔らかい感触が指と手のひらにつたわる。

これってこの女の子のおっぱいでは。

「あわわっ、ごめん」

僕はあわてて、手を離す。


「うわー危なかったわ。うち歩きスマフォして、ひかれるとこやったわ。ありがとうな、お兄さん」

その女の子は僕におっぱいを揉まれたことなど気にせずに立ち上がり、僕に手をさしのべる。

僕はその手をつかみ、立ち上がる。

背中と頭がまだズキズキと痛む。

頭がくらくらする。

「お兄さん、大丈夫? めっちゃ頭ぶつけてたけど…」

その関西弁が強い女の子は近づいてきて、白い手で僕の頭を撫でる。

「いたっ」

もうすでにそこはかなり腫れていたため、痛みがはしる。

「あっごめん、そんなにいたいん?」

その子は僕の顔をのぞきこむ。

僕の視界に入ってきた、その女の子は見事な金髪だった。長い金髪をポニーテールにしている。顔立ちは理想的に整っていて、きらきらとした青い瞳でじっと僕を見ている。

白いTシャツにデニムのショートパンツという服装だ。首にヘッドホンをかけている。

僕は本能的に彼女の全身を見てしまう。

スタイルがむちゃくちゃいい。

Tシャツの胸元には見事に実った二つの果実がある。だいたい目測だけどメロンといったところかな。それに手足がすらりと長く、背が高い。

身長は百七十センチメートルある僕よりわずかに高いぐらいかな。


「なあ、お兄さんほんまにいけるか?」

心配そうな顔で僕の顔を見ている。

「あっ、うん大丈夫だよ」

僕はどうにか答える。

「ほんまにごめんな。ほんでありがとうお兄さん」

ペコリとブロンド美人は頭を下げる。

その時、Tシャツの襟首の隙間から見える深い胸の谷間を僕は見逃さない。

「よかったわ。うち仕事でこの町に来たんやけど道にまよってしもたねん」

すっとブロンドセクシー美人は僕にスマートフォンの画面を見せる。

目的地はこの近くのビルのようだ。

「よかったら、案内しましょうか?」

どうやら困っているようなので、僕は言ってみた。彼女はとてつもない美人だったからというのもある。

「ほんまにほんまに。助かるわ。うち方向音痴で困ってたねん。うち難波零子なんばれいこって言うねん」

ブロンド美人はそう名乗った。

それが金髪ブロンドヘアー&緑眼グリーンアイ彼女ヒロインとの出会いであった。

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