第10話

扉を開いた先にいたのは六本の腕を持ったスケルトンであった。


全ての手には剣を持ちじーっとこちらを見つめている。


それはまるで挑戦者を待ち受ける強者のようであった。


「ちょっと、あのスケルトンはまずいって」


「なんでこんな浅い階層にあんな化け物がいるのよ」


六本腕のスケルトンは通常、もっとダンジョンの奥に生息している。


ヒイロの感覚ではこのクラスの魔物すら雑魚の範疇に収まるのだがそれは完成された大魔王のダンジョンに毒された結果だった。


「とにかく撤退するわよ」


ショーコとアヤメの二人組は襲われる前にそそくさと踵を返した。


六本腕のスケルトンはそんな二人をカタカタと見送った。




◆◆◆


「あれ?挑まずに帰っちゃうの?」


遠見でそれを見ていたヒイロは不思議そうな顔をしつつ考え込む。


「まぁ、考えても仕方ないか。出来ることをしないとね」


微々たるものではあるが多少DPが回復したので新たな魔物の渦を配置する。


配置するのはスライムだ。


ありきたりと言えばありきたりなのだがスライムは種類が多い。


最弱に近い力しか持たない初心者冒険者ご用達のスライムから強者すら圧倒する恐るべきスライムまで実に様々だ。


最弱のスライムでも上手く進化させてゆけば十分に活躍させることも可能だった。


それに最弱のスライムでも使いようだ。


薄暗い洞窟で天井に潜み上から強襲させる。


強襲したスライムは頭に張り付き対象を窒息死させることさえある。


対処法も確立されているが初心者冒険者の死亡率としては決して少なくない。


まぁ、初心者冒険者を殺し過ぎては誰もダンジョンに来てくれなくなってしまうため窒息寸前で止めて恐怖の感情を回収するのが目的なのだが。


短期的にみるなら殺して一度に大量のDPを獲得するのはありだ。


しかし、巨大なダンジョンを作るなら継続的にDPを獲得する必要がある。


そんなわけで人を殺すのは最終手段だ。


◆◆◆




ショーコとアヤメは慎重にしかし迅速にダンジョンの出口に辿り着いた。


「はぁ。マジでビビったわ。入り口付近は美味しそうだけど奥のエリアは絶対やばい」


「そうね。あのクラスの魔物が最初のエリアボスとか難易度高過ぎね」


「まぁ、鑑定次第だけど入り口近辺は鉱山ぽいし奥までいかなきゃ有用かな」


「とにかく報告してどうするかは上が判断することよ」


「それもそうか」




こうしてはじめての探索者である二人は帰っていった。

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