ボランティア活動を教師が反対するんだが
第15話
「おーいこっちこっち!」
放課後の最寄りのサイゼで、既に集まっていた彼らから声を掛けられる。
厨房から出て来た案内の店員さんに軽く会釈すると、若松姉弟と山本さん
約束の時間まではまだ五分以上あるハズなのだが、彼らの動きは予想以上に早かった。元社会人として少し反省する。
「悪い、遅れたか?」
広々としたテーブルの上にはグラスと伝票のみで、どうやらまだ来店してそう時間は立っていないように思えた。
「全然大丈夫だよ。ドリンクバーでいいかい?」
「もちろん」
返事を返すとスムーズに注文を通してくれる。
流石は陽キャ、言動に淀みがない。
「先ずは『生徒総会』で我がクラスの提案が通ったことを祝して、乾杯!」
そう言って全員でソフトドリンクが入ったグラスをぶつけ合う。
「三年生からの受けが良かったことが勝因かな?」
「それもあると思うけど一番は生徒会長の一声かな……実際問題、ゴミ拾いとか福祉施設へのボランティアとかはありきたりな案だから、各クラスの級長が他学年・他クラスと調整してたらしいんだ」
「なるほど……
「まあそれだけじゃなくて『失敗した時の責任を俺に被せることも出来る』から便利だったんじゃないかな?
例えば『余計なことを言い出した一年がいなければ…』とかな」
「酷い!」
「まあ世の中そんなものだよ。
逆に成功すれば『自分がその案を採用して実行に移しました。素晴らしい実績だとは思いませんか?』って企業にも大学にもアピールできるからな。
生徒会長にとっても他の上級生にとっても嬉しい提案だったわけだ」
「
「生徒会長も上級生も賛同してくれているとはいえ、学校側には許可を得る必要がある。
その説得は結局言いだしっぺの俺達がやらなくちゃいけない」
「……つまり本番はまだ先ってことか」
「その通り。資料を作ってプレゼンをするただそれだけだ」
「納得させられるかな……」
「納得させるんだよ」
「「……」」
「教師なんて所詮、学校と言う特殊な枠から一度も出た事の無い大人の集まりさ。情と利を織り交ぜつつ、熱意を持って提案すれば絶対できる」
「ほんと
「そ、そうか?」
「そうだよ!。少し前まであんなにトゲトゲしかったのに、今じゃ考えられないぐらい理知的で穏やかだ」
「あ~、明日のプレゼンなんだけど部活で抜けられそうにないの、本当にごめんなさい。」
「すまん、実は俺もなんだ」
そう言って山本さん
「二人とも大丈夫だよ。俺達
「そうだよ二人とも大船に乗ったつもりで任せて!」
原作では
その際に複数の学校や施設へお願いに向かうことになるのだが、若松姉弟は二人で学校を廻っていた。
もしかするとラブコメ世界の強制力によって、原作から過度にハズれないように調整された結果なのだろう。
「
「
………
……
…
翌日の放課後、俺達は教頭、教務、学年主任などに対してプレゼンをすることになっていた。
「緊張してる?」
「判るか?」
「顔を見てれば判るさ……でも
「ホントだ」
「人間自分よりも焦ってる奴や、怖がってる奴を見ると安心する生き物だ……大丈夫になったなら声かけてきてやれよ」
「義姉だし、しゃーないか」
そう言って
「やっぱり主人公だな……」
そう言うと席を外し、ペットボトルを三本購入しに自動販売機に向かった。
………
……
…
「緊張してる?」
「……少し」
「素直に弱音を吐くなんて
「私だって女の子なんだよ?」
「知ってるよ」
「
「
「私を見て安心したってこと?」
「お恥ずかしながら……」
「あはははは」
「だったら
「……」
「だからさ、私達が出来るんだってところ
「そうだな……」
「
「ありがとう
「私達頑張るから」
「何かあったら合図をくれ、基本はプロジェクターの操作に専念するがフォローはする」
「私達ってフォローされることが前提なの?」
「俺が言い出したことだしな……自分のケツぐらいは自分で拭くさ。それに一般教員は兎も角、経営陣にとって利益のある話なんだから、粗相をしない限り向こうが怒ることなんてないんじゃないかな?」
「でも……」
「大丈夫!保険はかけてあるから、どうにでもなれって気持ちでやって見なよ」
そんなことを話していると、教師陣と級長、生徒会役員が入室してくる。
「初めまして一年の
「同じく一年の
「同じく
こうして校内プレゼンテーションは開始した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます