掌編「優勝コメント」
「――優勝おめでとうございます!! では最後になにか一言、お願いします!!」
「えーと……うわ、緊張するな……なにを言おうとしたんだっけ……えっと――」
あ、と気づいた時には既に手遅れだった。
「あぁ、とんだ……頭ん中、真っ白だ……」
結局、思い出すことも新しく浮かぶものもなにもなかったので、無難に「嬉しいです、応援、ありがとうございました」と言って締めた……司会者は満足ではなかったようだけど、それでも文句はなく、そのまま無難に司会をやり遂げていた。
舞台を下りてから、さっきの反省だ。
……また逃げた。
最初から優勝コメントなんて考えていなかった。なにもなく、真っ白だったのだ――
最初から、内容が飛ぶことも織り込み済みの作戦だったのだ。
話す内容を『飛んだ』ことにして、自分のターンを、『飛び越え』た。
…了
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