あるひ おひめさまのもとに ひとりのまほうつかいが あらわれました


 まほうつかいは おひめさまのいる おしろを まもるために

 くにじゅうから たったひとりだけ えらばれたのでした



 まほうつかいは たったひとりで おひめさまを まもらなければいけないので

 いつも せわしなく はたらいていました

 けれど すこしでも じかんがあるときは おひめさまに そとのせかいのはなしを してくれました

 おひめさまは そのはなしをきいて わらったり ないたりすることを しりました





 それだけでは ありませんでした



 まほうつかいは おひめさまに いろいろなものを たくさん くれました



 はるには ののはなで かんむりをつくってくれました

 おひめさまは はなびらの やわらかさを しりました



 なつには まほうで あめをふらせてもくれました

 おひめさまは つめたいしずくの ここちよさを しりました



 あきには まちでかってきた ほんをよんできかせてくれました

 おひめさまは ことばの うつくしさを しりました



 ふゆには こごえないようにと だきしめてくれました

 おひめさまは ひとのからだの あたたかさを しりました


 そして ときどき まほうつかいは うたをうたってくれました

 それは とてもきれいな とおいとおい いこくのことばでした

 なにを うたっているのかは わからなかったし

 まほうつかいのほうも いみを おしえてくれなかったけど

 きっと こいのうた なんだろうと おもいました



 おひめさまは ひとをすきになることを しりました

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