6,赤いキーホルダー、黒い髪。


気が付いたら、病院に居た。

事故にあったんだってさ。

俺は、友達との帰り道、そろって車にはねられた。

随分と濃い内容の夢を見た気がする。

娘に看取られる父親の夢と、

最愛の人から玉座を取り上げようとした夢。

あとは…もう思い出せねぇ、夢ってこんなもんか。

俺は、友達に片思いをしている。

中学生の時からの仲で、4年間、思春期にしては仲良くやってきた。

そんな友達が、車に撥ねられた。

俺と一緒に。

なんかのマスコットの赤いキーホルダーが随分鮮明だった。

アイツに会いたいと言って、まだダメ、って却下された。

次の日も会いたいと言って、却下。

次の次の日も、却下。

次の次の次の日も。

次の次の次の次の日も。

そうして一週間が経ったとき、知らされた。

アイツの目が覚めた、って。

一週間、意識が戻ってなかったらしい。

そう言う事は早めに言え!!と叫び、

俺は怪我した足を引きずって走った。

黒い髪をかき乱し、ドアを勢いよく開けて病室に入った。

んで、何をとち狂ったか、俺は言っていた。

「なぁ、俺と付き合ってくれない?」

起きてから少したってないはずなのに、

友達は大げさなほど笑い出した。


「ばかね、きみ」

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