No.6 クリスマスがなくなったらどうなると思う?『クリスマス・クロニクル』

 メリー・クリスマス・イィィィヴッ! 今夜プレゼントを配達するサンタはコチラ!




『クリスマス・クロニクル』


(2018年・アメリカ・100分・NETFLIX)



【あらすじ】

 ピアース家のクリスマスはいつも最高だった。毎年パパが最高に演出してくれたパーティーの録画を、10歳のケイトは大事に観ている。けれど今年は、ツリーも飾りつけられないままイヴを迎えた。看護師のママは夜勤で、兄のテディも相手をしてくれない。そんなとき、録画の中に偶然サンタの手が映りこんでいるのを発見! テディを誘ってサンタをカメラで撮ろうとするケイト。すると、本当にサンタを見られたどころか、思いがけず〝空飛ぶソリ〟に忍び込むチャンスが……。



【解説(ネタバレあり)】


 24日は、サンタ界のイケメン部門No.1!!

 このサンタはクール(アメリカ人流の)です。スポーツカーの似合うロックミュージシャンみたいなイケオジ感。夏はサーフィンしてそう(笑)

 なによりメタボじゃないのが斬新です。というか街にあふれるメタボな自画像を見ては「全然違う!」て怒ったりなげいたりします。「ホーホーホー!」という笑い方も作り話だと主張。


 この頼もしいサンタクロースと兄妹の夢いっぱいほのぼの配達共同作業……とはなるはずもなく、忍び込んだふたりのせいでソリは墜落、大破。トナカイもプレゼント袋も行方不明。さらにサンタが煙になって高速移動するのに必要なサンタ帽子も飛んでっちゃって、プレゼント配りは絶望的に……。(ちなみにニューヨークに落ちます)


 というわけで仕方なく、まずはトナカイとプレゼント袋を探して夜のてんろうをさまようことに。タイムリミットは2時間ちょい。サンタとピアース兄妹の珍道中が始まるわけです。



 この珍道中がもちろん、またトラブルの連続。ただしその一方、場慣れした雰囲気でふるまうクールなサンタがとても頼もしいです。他の映画サンタにも見られるポピュラーな特殊能力ですが、「あらゆる子供が大人になっても顔と名前が一致」して「贈ったプレゼントをすべて覚えている」スキルも持っています。怖がる人も多いですが、それで説得できる人もいる。

 さらにピアース兄妹の妹ケイトちゃんが、こちらは筋金入りのサンタ信者なので、サンタの言うことはよく信じてがんばって行動してくれます。子役がしっかり活躍する映画はいいですね。



 しかし、この物語の真の主人公は、お兄ちゃんのテディだと思うのですよ。

 上記のあらすじを見て気づいたでしょうか?

 最高のクリスマス・プレゼンターだったパパはどこへ?


 パパはですね、消防士だったようです。


 テディはでパパを恨んでグレかかっています。自分たち家族でなく他人を選んだと非難し、もしも再会できたらひとことガツンと言ってやりたいと思っています。


 だがしかしです、眠ってはいますが、彼は愛情いっぱいに育ててくれたパパの消防士ソウルを受け継いでいます。そもそも最初から彼は、ケイトにとっては妹想いの優しいお兄ちゃんなのです。

 この彼の覚醒と再生こそこの作品の本筋。テーマは「もっとも信じるべきはなにか」でしょう。そこに至る展開がもう本当に、と来ます。「厚手のハンカチをご用意ください」もあります。


 そしてそのテディのカタルシスにも、サンタクロースはひと役、どころか何役も買うこととなるのです。忘れられない最高のクリスマス。



 このお話のサンタはクールで、そして粋です。かっこいいです。なにより、かつて子供だった人も含めてすべての子供の味方です。


 彼は語ります。「クリスマスは続けねばならない」

 なぜなら、「自分がいい人間であることを思い出せる日だから」



 サンタクロースは、いるかいないかよりも、どんなサンタにいてほしいかが重要ではないですか?

 そしてどんなサンタでも、それは叶うのです。そう考えたくなる素敵なサンタ映画が本作です。




 さぁ、明日はクリスマス! 配達を終えた最後のサンタさんと共に楽しみましょう! メリー・クリスマス!!!

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