第16章「地下世界で」
「うう…。」
遠ざかった意識がまた戻り、エンマは目を開けた。
すると目の前に、顔半分が崩れて、二目と見られないような、世にも醜い顔が迫っていて、片方だけ開いた目でぎょろりとエンマの顔を覗き込んでいた。
「ぎゃあああっ!!」
思わず絶叫して、エンマは物凄い勢いでそこから離れていった。
「ひでえな。人の顔を見て、そこまで叫ぶこたあねえだろが。」
「な、なにもんだ!」
すっかり真っ青になって、エンマは言った。
「アタイは柘榴ってんだ。よろしくな。しばらくは、ここでお前と一緒に暮らすんだから、まあ仲良くしようや。ケケケ。」
「…あいつは…?夜鬼はどこ行ったんだ?」
エンマは柘榴の方から目を背けて、きょろきょろと夜鬼の姿を探した。
「さあな。いくらアタイが醜いからって、あんまりじゃねえか。別にアタイは、お前をいじめようって気はねーんだからさあ。夜鬼みたいに美人でなくたって、構いやしないだろ。」
「…お前、女なのか?」
「性別も見分けられねーってのか。ショックだぜ。アタイはこれでも女の子なんだぜ。」
「んなこと言ったって、しゃべり方も男みてえだし、そんな顔だしよ。」
「そんなにこの姿が気に入らないかい。だったら、お前の気をアタイに食べさしておくれよ。そうすりゃあ、元のかわいい女の子に戻ってやっからさ。」
「気を食べる…?何のことだ?」
「ほら、さっきお前、妖気を出してただろ。あれをアタイは食うのさ。」
「食うって、食べ物じゃなくて、妖気を…?どうやって。」
「お前が妖気を出せばそれでいいんだよ。さっさと出せって。」
「うーん…。」
エンマは憎しみを込めて、心に炎を燃やし始めた。炎がどんどん大きくなっていき、妖気がエンマの体を包んでいった。
「うはあ!こりゃうまいぜ!なんてうまい気なんだ。」
柘榴は特別何かしているようにも見えなかったが、エンマの妖気を見て、喜んでいた。
エンマはまたしても、感情の高ぶりを抑えられなくなってきていた。妖力が溢れ出し、どんどん妖気が膨れ上がっていく。
しかしさっきとは違い、それで正気を失うということはなかった。
「アタイが気を食ってる隙に、お前はその妖力を抑えるってことをやりゃあいいんじゃねーか?」
高まった心を必死に冷却しようと、燃え上がった炎を小さくしようと、エンマは暗闇の中で膨れ上がった大きな妖気の中で念じていた。
しかしそううまくはいかず、妖力を抑えようとすることで精神が疲れていくばかりだった。
さっきのと、今ので、エンマは随分と妖力を使い果たしてしまい、ぐったりと倒れ込んだ。
「もう腹一杯だ。お前の妖気はとんでもねえな。ほらっ、お前のおかげでアタイの姿も完全に戻ったぜ。」
仰向けに倒れたまま、エンマは顔だけを柘榴に向けて見た。
柘榴の姿は、先程までの醜い姿から、美しい少女の姿へと変貌していた。
白銀の長い髪に真っ黒な大きな瞳。薄紅色の唇。瘦せ細って干からびていた体も、肉のつくべき所にはふっくらと肉がついて、若い娘らしい体になっていた。
「何なんだ?お前は…。気を食うって、そんなんで姿が変わるものなのか?」
「アタイが特別なんだよ。気を食う魔物は他にもいるけどね。アタイはずーっと昔にここに来ちまってから、呪われて、あんな醜い姿になっちまったんだ。だけどうまい気を食えば、元の姿に戻れる。ま、時間が経てばまた醜くなっちまうんだけどな。」
「よく分からねえが、同情はするぜ。」
「別に同情しなくたっていいさ。アタイはここでの暮らしに慣れちまって、醜かろうが何だろうが構いやしないんだからな。」
柘榴はけろっとして笑っていた。
「…しかし、分からねえな。さっきは妖力が暴走して、おかしくなっちまったってのに、何で今は、あれだけ妖力を出してもおかしくならなかったんだ?」
「だから、アタイがお前の気を食ってたからだよ。」
「その、気を食う、ってのがよく分からねえな。」
「お前は頭が悪いな。妖力が外に溢れ出したのが妖気って考えてみろよ。アタイがいないときには、お前は際限なく妖力を溢れさせて、妖気に狂っちまったみてーだが、アタイが外に溢れ出て来たお前の妖気を食べれば、妖気に狂わされることもねーだろう。」
「…ってことは、妖力を抑えれば、妖気も出なくて、お前は気が食えなくなるわけだな。」
「まあそういうことになるな。だからアタイにとっちゃ、お前の修行がうまくいかない方が、都合がいいってわけだ。」
「ち!今度こそ妖力を抑えてやる。」
悔しそうに言って、エンマは疲労のために一瞬で眠りに落ちていった。
また目が覚めても、暗闇の中なので、今が朝なのか夜なのかも分からなかった。
蓮花や蘭丸たちはどうしているだろう。
フータは、また泣いているだろうか。
しかし、これを乗り越えなければ、花霞の里には戻れない気がしていた。
自分のせいで、蘭丸を傷つけてしまったのだ。
またそのようなことを繰り返すわけにはいかない。
なんとしても妖力を抑えられるようにならなければ、この先へは進めない。
エンマはそのように思っていた。
いつものように蓮花は、朝早くから、蘭丸の家へ向かって行った。
門をくぐって中に入れば、いつもなら、庭でエンマが木刀を振るって修行をしているのだったが、その姿はなく、蓮花の心は寂しさでいっぱいになった。
縁側には、蘭丸がぼうっとして座っていた。
「おはよう。蘭丸。」
蓮花は精一杯の笑顔を取り繕って言った。
「やあ、蓮花…。」
蘭丸も微笑んだが、力ない表情で、声にも元気がなかった。
「蘭丸。いつまでしょげてるのよ。そうしてたって、仕方ないでしょ。元気出しなさい。」
蓮花は腰に手を当てて言った。
「最近、よく眠れないんだ。エンマのことを考えるとさ。あのとき俺が、腕ずくでも、あいつを止めることが出来てたら…。」
「無理よ。だってあのときのエンマは、すっかりおかしくなってたじゃない。いくら蘭丸にだって、手に負えなかったわよ。仕方ないわ。」
「…不思議だな。あいつがいなくなって、今はこんなに寂しくなるなんて。あいつが最初ここに来たときには、うざくてしょうがなかったってのに。いつの間にエンマは、俺にとって大切な仲間になってたんだろう…。」
「そうね。私も…寂しい…。」
いつしか蓮花の目から、涙が一筋流れていた。
「蓮花…。」
「あ、あら…何泣いてんのかしら。バカみたい。」
蓮花は笑って誤魔化したが、涙は後から後から流れ出して止まらなかった。
「ご…ごめんなさい!私…また後で来るから…!」
そう言って、蓮花は顔を覆って自分の家へと走っていった。
蘭丸は黙ってその後ろ姿を見送っていた。
家へ戻った蓮花は、崩れるようにして座り込み、声を上げて泣き出した。
今まで強気を装って堪えていたものが、一気に溢れ出してきたのだった。
「エンマ…。」
蓮花にとってエンマは、仲間であり家族であり、そして淡い恋心までも芽生えていた存在だった。そのエンマがいなくなって、どうしようもなく悲しい気持ちが込み上げてきて、寂しさが募るばかりだった。
思い切り泣いた後、蓮花の頭は次第に冴えていった。
エンマを連れ去ったあの女は、魔物に違いなかった。
黄泉の国と言っていたが、それがどこにあるのか、本当にエンマはそこに連れ去られたのか。
泣いているばかりではどうにもならない。
蓮花は涙を拭いて、立ち上がった。その目は既に、いつもの気の強い光を取り戻していた。
「蘭丸!エンマを探すわよ!」
蘭丸の家へ駆け込んで行った蓮花は、まだ縁側でぼうっとしていた蘭丸に向かって言った。
「えっ…?探すって…どうやって…。」
「私たちに出来ることをやるのよ。何もしないでボケッとしてるより、その方がいいでしょ!皆で協力して、エンマがどこに行ったのか探すの!」
蓮花は明るく笑って、台所へ入っていつものようにみぞれの手伝いを始めた。
「…そうだな。」
蓮花の様子を見て、蘭丸にも、少しだけ元の明るさが戻ってきたようだった。
「ハラ減ったな…。」
硬い地面に寝転がったまま、エンマは腹を押さえた。
「ここにはなんもねえよ。正確には、お前の食えるもんはねーってことさ。」
暗闇の中で、柘榴が言った。
蝋燭の火はとっくに消えて灯りなどどこにもなくなっていたが、不思議にも、エンマの目には、暗闇の中の様子が次第に見えるようになってきていた。目が暗闇に慣れたばかりではなく、おそらくエンマの中の妖力によって、暗闇でも目が利くようになっているのだろう。
「ハラが減ってりゃ、修行どころじゃねえぜ。」
エンマは立ち上がって、何かないかと辺りを見回したが、食べ物どころか、草も生えておらず、何もなかった。
「だいたい、あの夜鬼って奴。俺をこんな所に閉じ込めやがって。」
入り口を塞いでいる鉄の扉は、外からでないと開かない仕組みになっていて、いくら扉に体当たりした所で、びくともしなかった。
「食おうと思えば、食いもんはあるけどな…。」
「それを早く言えよ。」
「だけどお前はやめた方がいいぜ。アタイみたくなりたくなけりゃあな。」
「どういうことだ?」
「アタイの醜い姿、見ただろ。あんなふうになっちまうんだよ。ここで食っちまったらな。」
「何だって?俺はもう、上で腹一杯食ってきたぜ。」
「そりゃあ夜鬼の持ってきた食べ物だろう。それならオッケー。上とこの地下じゃあ、ちょいと勝手が違うんだ。ここはなあ、古くからずっとこのまま続いてる世界なんだよ。アタイは昔、騙されてここで食べ物を食ったせいで、醜くなっちまったんだ。それでアタイを助けに来たカレシにゃ逃げられるし。アタイは腐ったね、身も心も。んでまあ、その後色々あって夜鬼が王になってからは、黄泉の国も大分落ち着いてな。アタイを閉じ込めてた前の王がいなくなって清々したぜ。そんで腐ってたアタイも夜鬼には世話んなったから、ここで守り人になってるってわけ。」
「守り人?何か守ってんのか?」
「ああ。ここにゃ、
「落人?何なんだ?それは。」
「死人さ。とっくに死んでんのに、生きてたときみてーに動いてる奴らなんだ。心配すんな。アタイが奴らのマズイ気を食って動けなくしてっから。」
「俺もハラが減って動けねえよ…。」
「まあ、お前は半分魔物なんだろ。だったら平気かもな。」
「へっ、どーせ俺は醜いんだ。別に醜くなろうがもうどうでもいいぜ。何でもいいから食ってやる。」
「お前が醜いって?なかなか男前な顔してんじゃねーか。それで醜いと思ってんのかよ。」
「俺は人里でさんざん鬼だの妖怪だのと恐れられてきたんだ。」
「ははあ、それでか。でも醜いのとは違うな。恐れるってことはよ、見たこともねーもんとか、自分と違う奴に対しての反応だろ。見慣れて知ってしまえばどーってことなくなるもんさ。そして、それでも認めようとしねー奴は、心ん中では認めてて憧れてるくせに、見栄張って認めようとしねーだけなんだ。」
「おめえ、よく分かんねーこと言うな…。」
「でもよ、お前にこんなのが食えんのかね。」
柘榴は、てかてかと光って肥え太った赤い胴体に、黄色い脚が何本もうじゃうじゃと生えた、ムカデのような虫を掴んでエンマに見せた。
「げっ!」
「こんなんばっかだぜ。食えるもんといやあよ。」
「さすがにそりゃキツイな…。」
エンマは空腹を我慢して、修行を続けることにした。
だが、妖力を出そうとしても、空腹が気になって、感情を高ぶらせるどころではなかった。心にも体にも、力が入らなかった。
「なんだよ。全然妖気が出てこねえじゃねーか。昨日はあんなにたらふく気を食わしてくれたってのに。」
「く…。ハラが減りすぎて…。力が…。」
エンマの声にも力がなかった。
「んじゃ、なんか持ってきてやるよ。」
柘榴はそう言って、ムカデのような大きな虫や、ぬめぬめと黒光りした太いヒルのような生き物や、白くべとべとしたナメクジのような生き物たちを、両手に大量にかき集めて持ってきた。
「うっ…。」
それらを見て、エンマは顔をしかめた。
「口開けろよ。食わしてやる。」
柘榴は、無理矢理エンマの口を開けさせて、持ってきた気色の悪い生き物たちをエンマの口の中にぐいぐいと押し込めた。
「げえっ!」
エンマはすぐに吐き出した。
「あーあー。吐き出しやがって。もったいねー。お前、修行してーんだろ。我慢して食えや。」
柘榴は平気な顔で、エンマの吐き出したものをかき集めて、またエンマの口に押し込もうとした。
「うっ…。」
エンマはぎゅっと目をつぶって、柘榴の差し出してきたものを、一気に飲み込んだ。
不快な感触が喉を通り抜けていくのが分かり、口の中に、ぬらぬらとした粘液が残っていた。
「み、水…!」
エンマは両手で口を押さえて必死に水を探した。
「どっかその辺に、水溜りでもあるんじゃねーか?」
辺りをよく探し回ると、上から水の滴っている場所があり、そこに小さな水溜りが出来ていた。だが、それは水とも言えないような汚らしい泥水だった。
それでもエンマはその泥水を啜って飲んだ。渇きは幾分かましになったが、不快感は治まらなかった。
「…ここは、サイテーな所だな…。」
「お前にはそうかもしれねーけどよ、何千年も住んでりゃあ、愛着が湧くってもんだぜ。住めば都ってやつでな。」
「なあ、さっきおめえ、自分が騙されてここに連れて来られて…とか言ってたが、それからずっとこんな所に一人でいておかしくならなかったのか?」
「アタイがおかしくなったかって?そりゃーなっただろうな。昔はこんなじゃなかったし、もっと女らしかったな。でもそんときのアタイはもう忘れたぜ。騙した奴を恨んだり、裏切った男を憎んだりしたけどな。それももうすっかり忘却の河の彼方さ。まー要するに、アタイは人の心ってもんを失くしちまったんだよ。」
「それじゃ、おめえは人だったってのか?」
「昔はな。今は人なのか何なのかもよく分からねーもんになっちまったけど。」
「人の心を捨てれば、憎しみや恨みが消えるもんなのか?」
「そうだなあ。余計な考えを失くすってことだからな。なんつーか、バカらしくなっちまってな。どうにもならないことをいつまでもくよくよしててもしょーがねーって。」
「俺は、雷鬼を憎む心はぜってー消えねえ!消すものか!」
「でもよ、妖力ってのは、そういう心の高まりででかくなるんだろ。だったらそれを抑えねーことには、うまく気をコントロール出来ねーんじゃねーか?」
「うーん…。」
「憎しみを消すのが出来ねーなら、憎んでる奴をアホだって思うんだよ。で、そんなアホ相手にむきになってバカらしーぜって思うのさ。そんなアホに構ってられっかってな。自分の方がエライって思ってやんのさ。」
「…自分の方がエライ?」
「つまり自分が一番だって思えば、他の奴なんかゴミだろ。ゴミに何かされたってどーってことねーって思うんだよ。」
「雷鬼がゴミか。ヘッ!そりゃあいい考えだ。」
エンマはにやりとして言った。
「そーだよ。そんなふうに思えばいいんだ。」
柘榴もにやりと悪戯っぽく笑った。
とりあえず空腹が治まり、エンマは修行を再開した。
エンマが妖力を解放し、その脇で柘榴が、流れ出てくるエンマの妖気を食らっていた。
燃え上がった炎を徐々に小さく、消していくイメージを思い浮かべながら、エンマは強大な己の妖気と闘っていた。
そうして修行している間に、暗闇の奥から、密かにこちらへ近付いてくる者たちがあった。
「なんか、変な匂いがしねえか…?」
エンマはそれに気付いて、柘榴に言った。奥の方から、何か肉の腐ったような、酷い悪臭が漂ってきたのだ。
「ちっ!アタイたちの邪魔をしに来やがって。」
忌々しげに、柘榴が舌打ちした。
「何が?」
「落人だよ。お前の生きのいい肉の匂いを嗅ぎつけて、狙って来たんだよ。」
「なに!?俺を食うってのか。」
「ああ。でも死んでるから体は腐ってるし、頭ん中の脳みそも腐ってるから、ただ単に生きた人間の養分を吸い取りたいってことしか頭にねえアホどもだ。」
「ふざけんな!食われてたまるか!」
「アタイはあいつらの気を食って止めることしか出来ねーけど、お前は霊力が使えんだろ?そいつをぶっ放してやりゃあ、あの汚ねー死体どもはイチコロだろーぜ。」
「霊力か…。」
エンマは腰に差していた刀を抜くと、霊力を放出させて、右手に持った刀に霊力を纏わせた。
「おおっ!すげーな。こりゃあうまい気だぜ!」
柘榴は喜んで霊気を食らっていた。
「おい、こいつで奴らをやれっつったくせに、霊気を食うなよ!」
「へへ、悪りい。つい食っちまったぜ。」
柘榴は舌を出して首を竦めてみせた。
暗闇の向こうから、のそのそと出て来た落人の群れは、襤褸布のような骨と皮ばかりの足を引き摺り、腐って蛆が湧き、爛れきった肉体をぐちゃぐちゃと蠢かしながら、エンマを狙って、血走った目だけをぎょろぎょろと光らせて、ゆっくりと近付いて来た。
「汚ねえ奴らだ。」
エンマは、刀をさっと横に一振りして、落人の群れをなぎ払った。
落人たちはざっと十数人いたが、全てエンマの放った霊気の刃にやられて、青白い灰と化して消滅した。
「へっ!」
エンマは嘲るように笑い、刀を鞘に収めた。
「いいねえ。」
柘榴はうっとりと見惚れたようにして言った。
「なんか、奥の方から奴らが来たみてえだな。一体この奥はどうなってんだ?」
「見ない方がいいぜ。落人の楽園みてーな所だから。」
「奴らは最初からそこに住んでんのか?」
「さあな。どっかから湧いてきてんだよ。普通人間が死んだらどっかで生まれ変わって、輪廻転生ってのを繰り返すもんだけど、落人の場合は、その輪廻から外れた奴らなのさ。生きてたとき何したのか知らねーが、そのせいでここに来ちまったんだろーな。多分、まともな死に方じゃねーと思うぜ。」
「リンネ…?俺には、何が何だか…。」
エンマは首を傾げた。
「お前に説明すんのは大変そうだからやめとくぜ。」
「ち!おめえも蓮花と同じだな。人をバカだと思って…。」
「レンカ?何だ、お前の女の名前か?」
「里にいる仲間のことだ。俺はそいつから、霊術を教わってんだ。」
「ふーん…。アタイとその女、どっちが美人だ?」
「え?うーん…。んなこと言われても分かんねえな。」
「てことは、引き分けなんだな。」
「いや、別にそういう意味じゃ…。」
「お前、ここでの修業が終わったら、その里に帰っちまうんだろ。けっ、さみしーぜ。」
「おめえには仲間はいねえのか?」
「いるわけねーだろ。こんなトコに。あーあ、お前の修行の邪魔をして、ずっとここにいさせてやろーかな。」
柘榴は片目を瞑り、エンマをちらりと見て言った。
「ふざけんな!俺はさっさとこんな所を出て、里に帰りてえんだ!」
「ハハ、冗談だって。ケケケッ。」
柘榴は、本気にして怒っているエンマを見て笑っていた。
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