第7話:人間になってるかもね?私。

目覚めの悪い朝。


そうか・・葉見はみるはいないんだ。


俺は眠気まなこをこすりながら洗面所に行った。

魂の受けた亡霊みたいに顔を洗って歯を磨いて・・・いくら悲しくても

習慣づいてることはするんだ。


なにもヤル気がでないまま俺はキッチンに移動した。


(葉見の魂はあの世に無事にたどり着いたのかな?)


「あ、圭ちゃん起きた?・・・おはよう」


「・・・・・」


「葉見?」


「座ってて・・・すぐ朝食にするからね」


「え?・・・なにやってんの?」


「朝食作ってるんだよ」


「じゃなくて、昨夜出てったじゃん」


「昨夜は昨夜、今日は今日」


「ちょちょ・・・ちょっと待て!!」

「帰ってきてくれたんだ?」


「そうだよ・・・だってここ私のおうちだもん」

「あのまま出てって欲しかった?」


「そんな訳ないだろ?」


「あのさ・・・葉見・・・俺のこと怒ってるんじゃないの?」

「まだ間に合うならさ・・・謝りたいんだ」


「ごめん・・・俺が悪かった・・・まじでごめん」

「俺さ、昨夜言うにことかいてひどいこと言っちゃたよね」

「彼女じゃないとか・・・嫁じゃないとか」


「売り言葉に買言葉って言うかさ・・・ついムキになっちゃって・・・」

「ほんとにごめん・・・俺、葉見をいっぱい傷つけちゃた」

「俺のしょうもないプライドのせいで」


「いくら謝ってもクチしたことは消えないよね」

「いくら謝っても取り返しつかないのは分かってるけど、俺のこと許せない

だろうけど?許して欲しんだ」

「あのさ・・・」


「ひとりでよく喋るね圭ちゃん」

「圭ちゃん、まじで情けない人になってるよ・・・ヘタレ星人になってる」


「ヘタレでもなんでもいいよ、かっこ悪くたっていいよ」

「許してもらえないと俺の気が済まなし俺は俺を許せなくなるよ」


「圭ちゃん・・・もういいよ」


「え?・・・もういいって?・・・じゃ〜出て行かない?」


「出ていかないけど・・・こういうこと一度でもあるとまた同じこと

繰り返すでしょ? 」


「俺が悪かったから・・・二度とこんなバカなことないよう気をつけるから 」


「反省してる?」


「うん、反省してる」


「心から?」


「心から」


「分かった、じゃ〜ひとつだけ認めて・・・そして誓って」


「なになに?なんでも認める」


「私を圭ちゃんの恋人だってはっきり認めて・・・一生離さないってはっきり

誓って」


「や、約束する・・・葉見は俺の恋人だし、一生離さない」

「なにがあっても・・・俺がもし死んじゃっても離さない」


「分かった・・・じゃ〜許してあげる」


「まじで?・・ああ〜よかった〜」


「圭ちゃん・・・私が本気で出てくって思った?」


「え?」


「そんくらいじゃ私は出てったりしないよ」


「なに?それ・・・俺に謝らせるために出てくって言ったのか?」


「だって、まあ圭ちゃんひどいこと言ったからね」

「私も多少なりとも傷ついたし・・・」


「謝ったじゃん」


「まあ、しかたないから今回だけは許す!!」

「また私を傷つけたら次はないからね」


「うん、分かった深く反省してる」


「じゃ〜愛してるって言って?                                                              「愛してる・・・死ぬほど」


「よろしい・・・けど死ななくていいからね」


よかった、なんとか丸く収まったみたいだ・・・とりあえずホッとした。

葉見は正しくて俺が大人気なかったってことかな。


「さ、朝ご飯食べよう?」

「それから圭ちゃん・・・会社やめてもいいよ」


「そのかわり独立したら生活が圭ちゃんの肩にかかって来るんだから

私をちゃんと食べさせてよ。


「え?食べさせてって?・・・飯とか食わないくせに?」


「ご飯食べられるようになったよ、私」


「うそ、まじで?・・・いつの間に?」


「まじ、まじ・・・試しにトースト食べてみたらなんともなかった」

「だからトイレも普通に行けてるね」

「ほら・・・指に爪も生えて来てるし・・・産毛だって生えてきてるもん」


「まじで〜?そんなことある?・・・そんな非科学的なこと・・・そんな

不思議なこと?」


「少しづつ人間になってるのかもね?・・・私」


「いやいやいや、そんなバカな・・・ラブド・・・」


「あ〜とっとっと・・・今、言おうとしたでしょ?」

「まだ一度もエッチしてないんだからボツ以前の問題だよ、圭ちゃん」


「分かってるって・・・そのことはちゃんと考えてるよ」


「ね、私が人間になるのイヤ?」


「イヤじゃないけど・・・ちょっと戸惑ってるって言うか驚いてるだけ」

「あと付け加えると信じられないってこと・・・」


「言っとくけど〜私、人間になってもバイトとかパートに行くのやだからね」

「だから頑張ってね圭ちゃん」


そう言って葉見は俺をハグした。


「私、圭ちゃんだけだよ」

「だからひとりにしないでね・・・24時間、365日そばにいて」


「まあ、たとえばだろうけど無理なことは言わない」

「それじゃトイレまで一緒にいなきゃいけなくなるだろ?」


葉見は俺を見ていたずらそうにクスって笑った。


で葉見が「少しづつ人間になってるのかもね?・・・私」言ったことが、

はっきりと分かる時が来るんだ。


つづく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る