第2章24話:言語の習得

その後の意思疎通で、女狩人の名前がわかった。


女狩人は、ベルニーという名前のようだ。


ベルニーにも、アリスティの名前を覚えてもらう。


かくして、二人は、名前で呼び合うことが可能となった。





ベルニーは、アリスティの悩みをよく理解してくれていた。


言語の壁に、悩んでいるのだと。


だからベルニーは、夕方になるまで、言葉を教えてくれた。


おかげでアリスティは、


手、足、頭、目、鼻、口……など、体に関する名詞や。


お金、服、道具……など、生活に関する名詞。


火、土、風、空……など、自然に関する名詞。


殴る、蹴る、弓を射る、斬る……など、戦いに関する動詞。


などなどを、覚えることができた。


さすがに、恩を受けてもらってばかりでは悪いので、恩返しがしたいと思った。


だからアリスティは、近くの森に入って、ウルフを狩ってくる。


そうして倒したウルフ肉をベルニーに提供した。


ベルニーは、アリスティが戦えることに驚いた。


「アリスティって、―――――?(アリスティって、強いのね?)」


アリスティと呼ばれたのはわかった。


しかし、後半の言葉がわからなかったので、首をかしげるしかない。


さらにベルニーは言う。


「ありがとう、――――――(ありがとう、もらっておくわね)」


やはり、ありがとうに続く、後半の言葉がわからなかった。


ベルニーは、ウルフ肉に手を触れた。


次の瞬間、ウルフ肉が消える。


アイテムバッグに入れたのだろう。






その日から。


アリスティは、ベルニーとともに行動することが多くなった。


アリスティは、ベルニーに言葉を教えてもらうかわりに。


ベルニーに、狩った魔物の死体をプレゼントした。


ベルニーは、その魔物の肉や素材を、売却してお金に換えた。


そして、そのうちの半分をアリスティに返してくれた。


おかげでアリスティは、この近辺で利用される貨幣―――【ルティ硬貨】を手に入れることができた。


ただし、アリスティはアイテムバッグを持っていないので、大量の硬貨は、かさばるだけだった。


だから、適度に使っていくことにした。


まず、新しい服を買った。


ブラウス、コルセット、ロングスカート、ブーツなどである。


これらを身につけることで、アリスティはすっかり街娘まちむすめらしい姿となった。






また、食糧事情も劇的に改善した。


最初のころは、ベルニーから、野菜やパンを分けてもらっていた。


しかし、お金が貯まってくると、アリスティは自力で買い物が可能になる。


だから港町――――【ルクスヴェンの街】にいき、食材を購入するようになった。


露店の店主たちと世間話をできるほどの語彙力はないが……


最低限、買い物をするには、不自由ない程度の言語力は身につけることができた。


おかげで、さまざまな食材を購入することができた。


アリスティは、自分のできることが広がっていくのを感じていた。


ベルニーには、感謝してもしきれない想いだった。





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