書架_外環の狩人と外環の世界

<光の学徒>魔術学院総長 ルートヘル・ガラシアの手記




 後世にこのことを伝えるため書き記す。

 それは<外環の狩人>についてだ。


 彼等は世界創生に関わったと神の系類であるとする者も居れば、ただの傍若無人な鬼の類であり、だからこそ無言で人家や城、砦、はたまたは牢獄へ突然ふみ入り家財道具などを破壊するという謎の蛮行に及ぶとする者もいる。


 しかし、後者に語られるような蛮行はここ数千年において記録されていない。それ以前のことは国家創生前の話となり此処では扱わないこととする。


 <中略>


 それであるならば<外環の狩人>というものは、我々人類の似姿で世界に現れた神の使いと考えるのが通説となる。しかし、これに類似した聖霊族も確認されていることから此処ではその在り方を分類する。


 聖霊族の長ロアは世界創生の際、大地に降り立つと、ヒトの似姿の泥人形を世界に放ったそうだ。


 泥人形の総勢は七体。一体は魔術を、残りの六体は<最初の言の音>をそれぞれヒトに託して回ったそうだ。それ以降、役目を終えた泥人形は姿を消し、リードランには<外環の狩人>が姿を現すようになった。


 聖霊族も役目を終えたのか、すっかり世界から姿を消したかに思えたが、天変地異が世界を襲うような人の力では到底抗えない有事の際に姿を現しこれを鎮めた。


 この事から多くの場合、聖霊は<世界の裁定者>として自ら世界に関わるものではなく、世界の歪みを正すものとして認識する。


 <中略>


 最初の外環の狩人が誰なのかは記録に残されていない。


 彼らがどこで生まれ、どこで育ち、そして死ぬのか。それすらも文献に残されたことがない。判明していることといえば、彼等は積極的に世界に干渉はするが人類の営みに組み込まれることは基本的には無いということだ。極めて稀にだが、フリンフロン建国の祖ジョージ・シルバのような狩人も居るが、それは外環の狩人の中での不文律から外れた行為ではあるようだ。


 <中略>



 これには理由があるようで、その一つは彼等の異常に長い寿命にあるようだ。その例として挙げられるのは英雄<宵闇の鴉>であるのは、皆の知るところだ。アッシュ・グラントの英雄譚の最初は千年も昔から語られる。


 そして彼らの目的はたった一つ。


 世界を跋扈する神代の獣に魑魅魍魎の類を狩ることにある。それにより対価を得て彼らは人類と共に生活をする。しかし、これにも例外はあり、ここ百年の間で狩の他で生計を立てる狩人も現れ、国家に与しないとされてきた狩人が軍に関わることが見受けられる。他には街で商人として生計を立てる者も出てきている。


 もっともこれは本質の変化では無いと一般的には考えられる。

 それではその本質とは。


 それは聖霊が裁定者であるのに対し、狩人は世界の守護者であり世界の均衡を保つ者だと認識される。故に彼らが軍に与する場合があるのは、人類の均衡を保つことが目的なのではないかと考えられる。


 ——ブレイナット公国 <光の学徒>魔術学院総長 ルートヘル・ガラシアの手記。

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