中途半端な魔法《マジック》は手品《トリック》と区別がつかない
水城みつは
第一章 『ようこそ Unmemory World へ』
プロローグ
第1話 プロローグ
蒸しっとした日差しが差し込む放課後の教室で俺は悪友の
「
「そうそう、通称『アンメモ』世界初のフルダイブVRMMOだな」
そういえば、ちょっと前にもアンメモの特集?検証?番組的なのをやるって見かけた気がする。
「ところで、フルダイブってどんな感じなんだ?
折角なので疑問に思ってたことをベータテスターであるこいつに聞いておこう。
「まあ、そう思うよな。アズはMRは知ってるか?」
「
「まじか、てっきりメガネ男子の方が受けが良いから掛けてるものと思ってたよ。あの喫茶店思ったより最先端だったんだ」
「いや、眼鏡男子に眼鏡っ娘は狙ってるらしい」
ただ、その理由付けもあって最新のMR眼鏡を揃えている。
「で、そのMRがフルダイブVRとどう関係するんだ?」
「あー、MRを知っているなら話は早い。アンメモの中はそのMRとほとんど変わらないと思っていいよ。眼鏡を掛けていない分、更にリアルかな。五感が普通にあるしゲームって知らなかったらまず現実だと思うぐらいだ」
「そんなにかよ……ちょっと興味出てきたかも」
大げさだと思っていた謳い文句が過剰表現でないとなるとフルダイブVRも少しは体験してみたくもある。
「だろう! そして、高校生になっても厨ニ気分が抜けていない魔法バカなお前にとっておきのPVが発表された」
「誰が厨ニだ、おれはただ魔法にロマンを求めてるだけだ。で、PVってそのアンメモのPVか?」
――
巨大な鹿のモンスターを前にして戦うプレイヤーがいた。
自分の体ほどもある大剣を振り回す兎獣人が大盾を持ったフルプレートメイルのプレイヤーを足がかりに跳ぶ。
―― Kyuaaaa!
角を断たれた鹿のモンスターの叫び声が響く。
『【剣技・エクスカリバー】!』
白く光る剣が振り下ろされるところで場面が切り替わった。
「もふもふ?」
犬のぬいぐるみが歩いている。
「そういう感想になるよな、まあ見とけって。ここからがお前に見せたいところだ」
狼獣人に子狼、モグラ獣人? ケモ度の高い複数パーティが巨大な角の生えた兎と対峙している。
―― きゅうきゅきゅきゅっ きゅうーっきゅきゅきゅっ きゅきゅっきゅー!
鬼兎の周囲に石の塊が浮かび上がる。
―― ズガガガガッ
打ち出された石礫が地面を削った。
「おおっ! 見たか! あの兎魔法使ってるぞ!」
「わかった、わかったから揺するな続きがあるから大人しく見ろ」
いかん、つい興奮して
『とくと見よ赤き炎の精霊よ その力にてその身を焦がせ ファイアーボール!』
『とくと見よ青き潮の精霊よ その力にてその身を濡らせ ウォーターボール!』
ローブ姿の人達が呪文の詠唱と共に魔法を放つ。
「すげぇ……」
飛び交う魔法。常人離れした身体能力による攻撃。
『……ファイアーボール!!』
ぬいぐるみのような犬獣人の放った炎の矢がまっすぐに巨大な兎の眉間へと突き刺ささり、その体は光の粒子となって霧散した。
――
先程の巨大な兎の角を掲げて祭のように盛り上がり、宴会場と化している広場からズームアウトして中世の街を思わせる全景をバックにアンメモのロゴが表示されPVは終了した。
「……どうだい親友?」
「……すげぇ。何だよあの魔法、魔法だよな。火と水はあったな、あ、風もあった気がする。そういえば巨大兎は土を使っていたか……」
「てぃっ!」
「痛っ、
「何しやがるじゃない、完全に自分の世界にトリップすんな。で、どうだった? アンメモの最新PV。ちなみに、今のは『イメージ映像です』ではなくて、実際のゲーム画面というか、配信画面から編集された映像だからPV詐欺はないぞ」
アンメモはゲーム内配信もできるらしく、配信しない場合でも録画可能らしい。このPVもそんな配信動画からの抜粋で、
「アンメモ買おう。というか、ベータテスターの応募の時、俺を誘ってくれても良かったんじゃないか?」
「いやいや、お前、あの時は別ゲーにハマってたじゃないか、それに、『魔法ないならやらね、実装されたら教えて』って言ったろ」
あー、なんかそんなことを言った気もしてきた。
「後な、ベータテスターの第二陣も終了して、次に新規が遊べるのは正式サービス開始のときだ」
「なに?! さては遊べないと分かっててPV見せたのか?!」
「まあ落ち着けって。ついに正式サービス開始がアナウンスされた。で、ソフトのライセンスはベータテスターには招待用ライセンスが配られることになってるからそれをやろう」
「まじかよ、流石持つべきものはベータテスターの親友だな」
「しかし!」
「しかし?」
「ソフトは手に入るが、一つ問題があってな。ハードのほうが品薄なのと、若干値が貼るんだ……」
こうして俺は追加のバイトに明け暮れる事となった……
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