ブリの日とシーラカンスの幻想

 私が病院のベッドに横たわりながら、窓からの陽光が部屋を優しく照らしている。昼食時、看護師さんが持ってきた鰤の照り焼きの香ばしい香りは、窓から差し込む日差しのように、私の心を温めてくれた。その匂いが部屋いっぱいに広がる。一口食べると、その豊かな味わいが口の中で広がり、冬の寒ささえも忘れさせてくれる。


「今日は鰤の日なんですよ」

 と看護師さんが教えてくれた。そう言われて、私は窓の外を見つめた。雪がちらつく空を見ながら、遠い海の記憶が蘇る。幼い頃、家族と過ごした海辺の日々が蘇る。波の音、潮の香り、そして今ここにいる現実。それらが交錯し、私の心には甘く切ない温もりが広がった。


 私はゆっくりと食事を続けた。毎日の病院食とは違う、この日の特別な料理に感謝しながら。窓の外の景色と共に、海からの贈り物を味わう。静かな部屋の中で、私は遠い思い出にふけるのだった。



 昼食後、私はベッドにもたれかかりながら、小さなテレビの画面を見つめていた。画面に映し出されるのは、ニュース番組。アナウンサーが今日が「シーラカンスの日」であると報じていた。シーラカンス……その古代魚の話を聞いて、私の心は遠い海の神秘に惹かれていった。


 シーラカンスは、生物学上の大発見とされている。何百万年も前から存在すると言われ、絶滅したと思われていたのに、実は生きている。そのニュース映像で見たシーラカンスは、青くて大きな鱗を持ち、ゆっくりと泳いでいた。まるで時間を越えて、古代から現代にタイムトラベルしてきたよう。


 私は窓の外を見ながら、シーラカンスの不思議な生命力について考え込んでいた。数百万年の時を超えて生き残ったその姿は、私にとって不屈の生命の象徴のように思えた。病室の静かな空間の中で、シーラカンスの深い海の世界に心を馳せ、私は少しずつ夢の中へと誘われていくのだった。



 夢の中、私はインドネシア沖の青い海に漂う小さな漁船に乗っていた。塩辛い海風が頬を撫で、波の音が耳を満たす。手には釣り竿が握られ、私は海の深さを見つめている。ふと、竿が大きく曲がり、私の心は高鳴った。力強い引きがあり、何か大きなものを釣り上げている感触がある。


 やがて、水面に現れたのは、シルバーに輝く巨大なシーラカンス。その古代から続く姿に、私は息をのんだ。この生き物は、時間を超えた生命の証。しかし、私はそのまま彼を見つめることしかできず、彼を自由にすることに決めた。シルバーに輝くシーラカンスをそっと海に戻すとき、その優雅な動きと静かな強さに心が揺さぶられた。彼が深海へと消えていく様は、まるで時間を超えた古代のメッセージのようだった。


 その瞬間、私は何か大切なことを学んだような気がした。生命の尊さ、そして自由の大切さ。海の広大さと、その中で生きる無数の生命。それらすべてが、私の心の中で波のように広がっていった。


 夢の中の漁船は静かに波間を漂い、私は空と海の境界が見えない遠くを見つめていた。夢の糸が解け、ゆっくりと現実に戻る。病室の静けさの中で目を開けると、そこはまた私の日常。だけど心の中には、いつも海がある。



 夢から覚めて、私の心は新たな感動と希望で満たされていた。海の自由とその無限の可能性に心奪われ、いつか現実の世界でその広がりを自分の目で見たいという願いが深まった。静かな病室で、窓の外を見つめる。外はまだ雪がちらついている。私の心は、夢の中のシーラカンスと海の広がりに引き戻される。その深い海の静けさ、神秘、そして何よりも自由への憧れ。私はそっと目を閉じ、いつか本当の海を自分の目で見ることを願った。その日が来るまで、私の心にはいつも海がある。夢と現実の間で、私は海の歌を静かに歌い続ける。


【挿絵】

 https://kakuyomu.jp/users/tuyo64/news/16817330668671150171


(Written with ChatGPT、Image created with DALL·E)

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