二話 結託



Murder side


「次はどうやって殺そうか。」


「もう消えたい…。」……は?まさか、聞かれた?ここで俺が殺人者だと知られたら…。俺は今さっきすれ違った女の子を追いかけた。幸いにも俺には気付いていない。「……!?」とりあえず殺して口封じをしなければ。俺はどたどたと抵抗している女の子を近くの路地に引っ張って行った。「大人しくしていろ。」と少し強目に脅すと諦めたのか、抵抗しなくなった。……良かった。これで大人しく死んでくれる。あとは殺すだけ…と首を締めようとしたら、そいつが口を開いた。「あの……、相沢先生、ですよね…?あの、うちの中学校の、スクールカウンセラーの……。」…………え?なぜ俺の職業と名前を?いや、待て。この女の子…。俺が勤めている中学校の制服じゃないか。よりによって、どうして……。「あの、間違いだったら…ごめんなさい。」……仕方ない。「……そうです。貴方の言った通り。僕は貴方の学校のスクールカウンセラーです。その制服も見覚えがありますよ。うちの女子用制服ですよね。」「……はい。」……気まずい。「貴方の名前は?」「あっ、えっと、3年6組の神田栞と言います。確認ですが、あなたは相沢先生であってますよね。」「はい。そして、半年前から話題になっている連続殺人犯です。どうぞ、僕のことは警察に付き出して下さい。」そう言うと、神田さんは黙ってしまった。困惑しているのだろうか。そもそも、俺のことをまだ疑っているのだろうか。「本当に先生なら、いつも首から下げてる名前のプレート、見せて下さい。」俺はカバンからプレートを取り出して神田さんに見せた。「ありがとうございます。あの、明日の昼休みにカウンセリング室で落ち合いませんか。相談したいことがあります。」は?まさか……。「僕の秘密をばらそうとしています?単純に警察に僕の身柄を付き出せばいいのに。」「警察には通報しません。その変わり、協力して欲しいことがあります。」


◇ Class Committee said


うちの中学校のスクールカウンセラーが殺人者だった。このとんでもない情報に私は驚きも、怖がりもしなかった。たぶん、私の心は先生に襲われかけた時に「楽になれる……。」という気持ちでいっぱいになって、「消えたい」以外の感情がぷちっと消えてしまったようだ。自分の皮膚の下がバグっている感覚。このバグった頭で私はある素晴らしく馬鹿げたアイデアを思い付いた。そういえば先生は学校でどういう立場なのだろうか。ちょっと友達に訪ねてみた。「相沢先生?あの先生はもう本っとーーうにかっこいいよぉ!!ちょっとミステリアスな雰囲気とか首筋にあるホクロとか!最高にエロい!」「あぁ。あのスクールカウンセラーの。いやぁあの人存在感がすごい!そして何より顔がいい!!」…………なるほど。どうやら先生は女子生徒に人気があるらしい。これは好都合だ。そして来た昼休み。カウンセラー室の前に着いた。「神田さん。」優しい声色に私は身震いした。「昨日ぶりですね。先生。」「中に。」カウンセラー室に入ると、先生は鍵をかけた。「それは先生として危ないんじゃないんですか。」先生は打って変わった低い声で「安心しろ。ここは人が少ない。万が一があったら居留守を使う。」なるほど。これが先生の本性。やっぱりこの人は私のアイデアに使える。「話ってなんだ。」「はい。まず、先生は半年前から話題の連続殺人者ですよね。」「そうだ。早くしろ。時間がない。」「実は、私のクラスで私の友達の森崎千穂がいじめにあっているんです。でもこの間、私がいじめ現場に鉢合わせて、いじめが発覚しました。」「お前は森崎がいじめにあっていたことを知っていたのか?」「うすうす気付いていました。ですが、決定的な場面がなく担任に言えませんでした。今森崎は学校に行けていません。」「当然の結果だな。てことは俺はその森崎のメンタルケアをしろと?」「はい。それと主犯に話を聞いてしっかり反省して欲しいです。」「それは担任の仕事だろ。」「確かにそうです。ですが先生は女子生徒にかなり人気なので解決が速いかと思い。」「俺が動くメリットは?」「先生がこのいじめの件を解決するまで、私は先生の秘密を誰にも言いません。そして、いじめが解決したら……私のことを殺して構いません。」「…………お前はそれでいいのか?」「はい。元々私は死にたかったので。」「……へぇ。もし俺がお前に襲いかかったら、お前は俺を警察に売るんだろ?」「その通りです。」そう言うと、先生は笑いだした。「お前、先生なめてるだろ。」「……はっ!?」一瞬のうちに私は壁に追いやられた。「先生の方が力強えんだよ。お前なんか通報すら出来ず俺に襲われて死んじゃうよ。」腕を捕まれて先生はそう脅して来た。「先生こそ中学生なめてますよね……。私が大声を出したら先生はわいせつ行為でどっちにしろ逮捕されますよ。」私達はお互いに笑った。何がおかしいのか分からないけど笑ってしまった。「先生。」「あぁ。その話、乗った。」




ここに歪で危ない臨時協定締結が爆誕した。

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