一番になりたかった

 あなたと出会ったのは、夏の終わり。まだ少し暑くて汗ばむ肌をタオルで拭いて待ち合わせ場所で待ってた。

メガネがすごく似合うスーツ姿の好青年、かっこよすぎて直視できなかった。

居酒屋に入って会話が弾むと同時に、お酒も進みそのまま流れに飲まれて一夜を過ごしてしまった。多分きっとこれが間違えだったのだろう。

あの時帰っていたらもっと別の未来があったのかもしれない。


気づくと体の関係が始まって2か月の月日がたっていた。

散歩したりご飯食べに行ったりもするけど、基本的には家でまったりが多かった。

最初は満たされていたのに、寂しさと虚しさに追いやられているときに音信不通になった。


2か月後、急にあなたからのメッセージ。

「今日会える?」

私は胸が高鳴ると同時に何故か頭痛と吐き気が襲ってきた。

「久しぶり、遅くてもいいなら会えるよ」

本当はずっとあなたに会いたかった。

急いで準備をして、家を飛び出した。

あなたの家、声、顔すべてが何故か懐かしく感じた。

洗面所には歯ブラシが二つ、お揃いの皿、ワンピースがかけてあった。


「女の影は隠しててほしかったな」

「女の影ある?」

「うん、いたるところに

こんなことしてていいん?」

「だめだけど、、」

「付き合ってるんだ」

「うん」

「羨ましいなそう君と付き合えて」

「すきなの?」

「好きだった」

「なんで過去形?」

過去形にしないと泣いてしまいそうだった。

浮気相手になってしまった、という嫌悪感が押し寄せてきた。


朝起きて特に予定があったわけではないが早々に身支度を済ませて、涙をこらえながら全力の笑顔でサヨナラを告げた。


あなたの幸せを心から願えない私は性格が悪いのかもしれない。


私はあなたの一番になりたかった。

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