第26話 万事休す!?からのっ!!



 ―――はぁ!―――はぁ!―――はぁ!―――はぁ!


 地面に片膝かたひざをついて、金森かなもりいずみは目の前の相手をしっかりと見据えた。


 ゆっくりとこちらに向かって歩いて来るその相手は、今まで戦ってきたどの相手よりも強かった。いずみが今まで必死に鍛え上げてきた技を幾らぶつけても、揺らぎもしない。―――まさに、最強!


 それに加えて両足が、悲鳴を上げている。きっとこの数日、走り続けた疲労が溜まっているのだろう。いつもは羽のように軽い両足が、今はなまりのように重い。



 ―――まいったね、これは。


 ちょっと、無理し過ぎちゃったかなぁ………?



 ―――また、桜ちゃんに、怒られちゃうよ。



 そんなことを考えながら、いずみはふふっと笑った。


 こんな状況でも笑える自分は、どうかしていると思う。



 ――――でも、ずっとこんな調子でやってきたんだから、まあ………しょうがないよね。


 桜ちゃんだけじゃない、きっと二人にもまた怒られちゃうけど―――


 今だけは動いてよ、私の両足!



 いずみはパシリ!っと太腿ふとももを叩いて、また駆け出した。その背中に、青葉からの合図が届く。



「――――右です!少し遅れて左からも来ます!」



 その声を頼りに地面をスライディングすると、恐ろしい力を放つ何かが――顔のスレスレを通り過ぎてゆく。しかし、いずみは躊躇ちゅうちょすることなく空中に向けて体をおどらせた。


 ―――すると、ほんの0.1秒前までいずみの体があった場所を、その恐ろしい何かが通り抜けていった。


 いずみは空中でクルリと体をひねって着地すると、スタートダッシュの体制をとった。あの怖ろしい視えない大きな手が通り過ぎた一瞬だけ出来る隙。その瞬間を―――いずみは待っていたのだ。


 自分の両足は思う様に動かなくなってきている。


 ―――この一撃が、最後のチャンス!



「稲妻ダァ―――――ッシュ!!!」



 いずみは今、自分が持てる全てをかけてスタートダッシュした。きたえ上げてきた両足が限界まで稼働かどうして、どんどん加速してゆく。そしてスピードに乗った体は、風へと変わって―――!



「――――ッ!いずみちゃん、危ないです!!」



 青葉の声が聞こえて、物凄い衝撃がいずみを襲った。突然目の前に、目に視えない壁が現れたように体がはじけ飛ぶ。


 地面に転がったいずみの耳に、青葉の震える声が聞こえた。



「し、尻尾しっぽが、 …………生えてきました!」



 朦朧もうろうとする意識の中、いずみはお狐様の姿を探した。


 こちらに向かってゆっくりと歩み寄ってくるその体には、確かに大きくて立派な真っ白な尻尾しっぽが生えていた。



 ――――これは、まいったね。


 尻尾しっぽが生えてくるなんて、ズルいよ。



 おそらく――――いずみがぶつかった視えない壁は、あの視えない大きな腕と同じように、あの尻尾と繋がった視えない尻尾なのだろう。



「――――ごめん、君を最後まで守れなかった。桜ちゃんと約束したのになぁ……」


 ――――もう、体が動かないよ。


 起きて下さい!と、誰かの呼ぶ声が聞こえていたけど、もう体は動こうとしなかった。たぶん、あの視えない大きな手が自分を握りつぶそうとしているんだろうな………



 大の字に寝転がったまま天を仰ぎ見れば、茜色あかねに染まった雲と少しだけノスタルジックな青空がとても綺麗だ――――



「――――起きて下さい。こんなところで、なに寝そべっているんですか?サニーイエローさん?」


「ぶっぱあぁあ! さっ桜ちゃん!?」


 急に桜に顔を覗き込まれて、いずみは驚いて変な声をあげてしまった。


「あはは――っ!ぶっぱあぁあ!って、何ですか?ぶっぱあって!もう――!変な声、出さないで下さいよ。とにかく、そのボロボロになってしまったヒーロースーツを新しくしますから――――しばらくくの間、じっとしてて下さいね」


「ひ、ヒーロースーツって、なに言ってるの!?ダメだよ、すぐにここから逃げなきゃ!!お狐様!お狐様が、すぐそこまで来てるんだよぉ!?」


「――――うん。お狐様のことなら大丈夫ですよ。今――紅葉さんがぶん殴ってくれてますからっ!」


「ぶっ!!ぶん殴ぐるぅ!?ぶん殴ぐるって、どういうこと!?」


「ぶん殴ぐるは、ぶん殴ぐるです。私につかまって下さい。ほら――――あそこ!」


 桜はそう言って、いずみの上半身を起こしてくれた。そして桜の指さす先に慌てて視線を向ければ、そこには少し距離を置いてお狐様と対峙たいじする、紅葉の姿があった。



 ――――紅葉ちゃん。


 そんなに離れた場所から、どうするつもり?



「紅葉さんの見立てでは、あの視えない手が届く範囲は約10mだそうです。だからそれ以上近付かなければ、問題ないそうです」


「じゅ、10メートルって………!でもそんなに離れていたら、こっちだって何も出来ないでしょう?」


「ふふ―――だから私が、その為の新しいヒーロー服を創ったんです。――――見ていて下さい。紅葉さんの意見を聞いて私が創り直した、紅葉さんと私の共同作のヒーロースーツです!」



 ゴクリ…………!


 二人が見守る先で、紅葉がお狐様に向かって勢いよく拳を突き出した。



 スッパ――――ァァアンッ!



 その刹那―――

 激しい打撃音が辺りに鳴り響いて、お狐様の上体がぐらりと揺れる。



「今の一発は――――どう?先に言っておくけれど、あと99発も残っているんだからね…………!」


 押し殺した紅葉の声が聞こえる中で何とか上体を立て直したお狐様だったが、軽い脳震盪のうしんとうを起こしたのか、頭をゆらゆらと揺らしている。


 ――――そこへ、紅葉は立て続けに拳の連打を繰り出した。



 スパンッ!パン!ドカッ!パパン!ドスッ!パン―ンパパパパパ――――!!



 激しい打撃音が立て続けに鳴り響いて、最後にスッパァ――――ンッ!っと一際大きな打撃音が鳴り響くと、お狐様の体は大きく後ろに吹き飛んだ。


 そしてそのまま地面を転がったお狐様は――――倒れたまま動かなくなった。



「――――あと残り36発。………あなたに寝ている暇なんて、無いからっ!」


 

 そして紅葉は、倒れ込んだお狐様にゆっくりと歩み寄っていく。






「……………す、すごいです!まるで姉さんの拳が、距離を超えてお狐様に直接届いているみたい。どうなってるんですか、桜さん?」


 桜といずみの元まで小走りに駆け寄ってきた青葉が、尋ねて来た。


「う、うん!紅葉ちゃん、ほんとにすごい!――ねえ桜ちゃん、私にもそう見えたんだけど、何がどうなってるの?」


 今まで見たことが無い紅葉の新しい技に、いずみと青葉が目を丸くしていると、桜がネタバレをしてくれた。


「ふふふっ、実はヒントはお狐様のあの視えない手なんですよ。打撃がそのまま遠くまで届く様に、紅葉さんのヒーロースーツに新機能を足しちゃいました。


 紅葉さんが言うには―――ケンタの剣がいくらすごい切れ味だったとしても、お狐様には効かなかったでしょう?それは私が夢の中で創り出したモノだったからなんですって――!


 でも、それぞれが元々持っている力は、お狐様にちゃんと届くんです。いずみさんと青葉さんの闘いを観察していて―――紅葉さんは、そのことに気が付いたみたい。


 だから私は、紅葉さんの元々持っている力をサポートする機能を、あの紅葉さんの着ているヒーロースーツに足したんです。――――どうやら、私達の作戦は、うまくいったみたいですね」


「――――ケンタくんの、あのすごい威力の剣って桜ちゃんが創ったの?皆が着ている、そのカッコイイ、ヒーロースーツも…………?すっごいね、桜ちゃん!!」


 なんて、いずみが感心していると、だって―――!ここは私の夢の中だもん!と、桜は得意げに笑った。



「――――それじゃあさ、桜ちゃん!

 私にも紅葉ちゃんみたいな―――カッコよくてすごいヒーロースーツを創ってくれるのかな?」


 いずみが笑顔で尋ねると、桜から元気な笑顔と返事が返ってきた。



「はい―――!もっちろんです!だって私は、この夢のホストですからねっ!」













 ☆あとがき☆



 こんにちわ!🌞、こんばんわ!🌙

 今日もこの物語のページを開いて下さり、本当に本当にありがとうございます!


 そして――!たっくさんの応援を、いつもありがとう!

 引き続きの応援―――どうぞ、よろしくお願いいたします。(*_ _)ペコリ


 前話からの続き――――視えない手を使って、ケンタを消し去ってしまったお狐様を相手に、果敢に戦いを挑む、いずみと青葉だったが、本気を出し始めたお狐様に徐々に追い詰められてゆく。

 ――――お狐様は、まさに最恐の相手だった。万事休すかと思いきや、そこに紅葉が助けに現れる。桜の創ったヒーロースーツの新たな能力を発動させた紅葉は、逆にお狐様を追い詰めてゆくのだった。



 すごい――――っ!Σ(゚Д゚)

 桜ちゃんの創ったヒーロースーツすっごいね!💦


 それにしても、ヒーロースーツの新しい能力を発動させた紅葉ちゃん、めっちゃ怖くねっ!((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル


 こ、これは―――ヒーロー側に軍配が上がるのかなぁ――――?

 (*''▽'')✨

 

 うーん、でもお狐様。まだ、隠し持っている力がありそうだし……

 (。-`ω-)

 

 うーん、戦いの行方に、目が離せない―――っ!!

 (≧◇≦)💦


 ―――と、いうことで!


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