第22話 バッタ、クライシス!



「―――おい!おい、さくらっ!しっかりしろ!」


 ケンタは急に倒れ込んでしまった桜に、慌てて駆け寄った。その頭上を―――巨大な影が通り過ぎてゆく。


 ずどどどおおお……ん!!!と、もの凄い音がして―――さっきまでケンタが立っていた場所に、羽を広げたバッタの巨大な背中が見えた。



 ――――ッ!!


 あ、あぶねー!


 あのままあそこにいたら、完全に潰されていたじゃんかよっ!



 ケンタの背中を、冷たい汗が流れる。しかし―――あの場所には、あの三人が居たことを思い出し、全身に鳥肌とりはだが立った。


 「リ、リーダァァ―――ッ!!青葉さんッ!!紅葉さぁーん!!」


 声を張り上げて、三人の名前を呼ぶ。すると、背後から返事が返ってきた。


「―――ケンタくん、こっち!」


 驚いて振り返ると、倒れている桜のそばに三人が立っていた。



 ―――さっきまであのバッタがいる場所にいたのに、何で三人とも俺より遠くにいんだ!?


 それにリーダーは、しっかりあの犬まで背中にしているじゃんか!?



「―――桜さんは、気を失ってしまったみたいですね」


「―――ええ、しばらく眠らせておいてあげましょう。どうやら桜さんはバッタが苦手みたいだから、その間に私達四人であのバッタを何とかしましょうか」


「―――うん、そうしようよ!君は、桜ちゃんとここで待ってて。私達ちょっと行ってくるから―――ふふ、くすぐったいよ!すぐ戻って来るから、桜ちゃんを頼んだからね!」


 あの犬が、リーダーの―――いずみさんの顔をペロペロと舐めている。何とも平和なその光景を見つめながら、ケンタは狐にでもつままれた気分だった。



「さ、三人とも―――無事だったんすね。よかったっす………」


 何はともあれ胸をで下ろしていると、紅葉が悪戯いたずらな笑みをケンタに向けてきた。


「ふふっ、なあに?ケンタくんは、私達のこと心配してくれたんだ?―――優しいのね」


「べ、別に―――仲間として当然じゃないっすか………っ!」


「ふふっ、仲間として―――なの?ちょっと寂しいわ」


 この人に微笑ほほえまれると、ケンタはふわふわとした不思議な気分になる。あのトンビの色をした綺麗な瞳に、み込まれてしまいそうだった。するとそこに、青葉が割り込んできた。


「―――コ、コホン!ね、姉さん!そんなことしている場合じゃないですよ!お狐様は、あのバッタを倒すまで私達の話を聞くつもりはないようです。ほら………!」


 確かに青葉の言う通り、お狐様は少し離れた場所で五人と一匹の様子をじっと見つめている。どうやら青葉の言う通り、彼女はこの戦いの行く末を見届けるつもりのようだ。


「―――仕方ないわね。三人とも、準備はいい?一気にたたみみかけるわよ!」


「うんっ!」「はいっ!」


「それじゃあ、出し惜しみなんか無しで一気に片づける!みんなっ!let’go battleレッツゴー バトル!!!」


「「Rogerラジャー―――っ!!」」



 紅葉の号令のもと、三人のヒーロ―が一斉に巨大なバッタに向かい駆け出した。


 青葉が左―――紅葉が右―――そして―――いずみが真ん中を突き進む!


 真っ先にバッタの体に到着したいずみは、信じられない人間離れした跳躍ちょうやくをみせて、一気にバッタの背中まで駆け上がってゆく。


「―――うんっ!いい景色!

 かなり痛いと思うけど―――悪く思わないでねバッタくん!」


 そう言うといずみは、バッタの背中の上でスタートダッシュの体制をとった。そして一瞬の沈黙の後で顔を前に向けた。



「いっけぇ―――いずみっ!!! 稲妻ダッシュ全開――――っ!!!」



 それはまさに―――稲妻のように一瞬の出来事だった。


 いずみの体が黄金色に輝いたかと思うと、バッタの後頭部に大きな雷が落ちた。


 そのあまりのまぶしさにケンタがまぶたを閉じると、少し遅れてもの凄い爆音が辺りにとどろき、ケンタは耳を塞いだ。


 暫くして恐る恐る目と耳を開けたケンタの鼻に届く―――肉が焼け焦げた臭い。


 そして―――


 体中から白い煙を立ち上げ、のたうち回る―――バッタの無残な姿。




 すると今度は、左手側で暴風が巻き起こった。

 吹きすさぶ風の中心には、あの綺麗な黒髪を風に踊らせた青葉が立っている。


 青葉は胸の前に両手を組んでいた―――まるで何かに祈りをささげている、女神のような立ち姿だ。


「………また私に、あなたの力を貸して下さますか?―――カマイタチさん」


 青葉が小さな声でそうささやくと、荒れ狂っていた風がピタリと止んだ。


 さっきまで―――あまりにも強い風が吹きすさんでいたので、何かとんでもない出来事が起こりそうな気配を感じていたケンタは、目を細めながらその様子を神妙な面持ちで伺っていた。



 だけれど―――


 ――――――――あれ?


 何にも、おきないのか?


 

 しかし―――

 その期待に反して、大それた事態は何も起ころうとはしなかった。その様子に、ケンタがガッカリし始めた頃だ―――



 ズ………………ズズ……ズズズズ………………!



 バッタの太い後ろ足が、根本から少しずつズレてゆく。


 そして最後には後ろ足は完全に体から離れて、ドズゥゥゥ――――――――ン!と、大きく地面を揺らしながら倒れてしまった。




「――――――――――ッッッ!!??」




 信じられない出来事が立て続いて起こり、ケンタがポカンとしていると―――


 今度は、右手側から熱波ねっぱが吹き付けて来た。


 まるで、サウナの中にでもいるような熱気にむせ込んだケンタが、今度は何事が起こるのかと右手に視線を向ければ――――巨大な火の玉がバッタに向かって突き進んでゆく光景が視界に飛び込んできたではないか。


 そして―――

 その火の玉の中心には、紅葉の姿がある。



「――――――私の想いを、思いっきり拳に込めてあげたからっ消化不良確実っっ!しっかりと味わいなさいっ!!破あああぁぁァァァァァァァ――――――ッ!!!」



 ドズ―――――――――ッン! ……… …… … ‥



 鈍い音が響き――――バッタの巨体が宙に浮く。走り込む推進力をそのままに、バッタの土手腹どてっぱらに紅葉が正拳突きを叩き込んだ。


 バッタの全身は巨大な炎に包まれながら、軽く100メートルは吹き飛んだ。


 巨大な炎の塊が地響きと共に地面を転がっていく様子は、まるでこの世の終わりを見ているさまを観ているようだった――――




 立て続けにバッタを襲った大惨事をケンタが茫然と見つめていると、その大惨事を引き起こした張本人達が何やらヤーヤー騒いでいる。



「――――ちょっとちょっと!紅葉ちゃん、少しは手加減してよ!危うく私も巻き込まれるところだったんだからっ!あ――っ!青葉ちゃん髪の毛が燃えてるよう!?」


「――――あら、ごめんなさぁ~い?二人ともすばしっこいから、大丈夫かと思っちゃったのよね」


「……………………髪の毛だけじゃないですけど?何だか、全身もビリビリするんですけど?」


「きゃ―――――っ!青葉ちゃん、ごめんね!だっ大丈夫!?」


「――――いえ、いつものことですから……………」




 そんな会話を平然としている三人が、ケンタには信じられなかった。


 ここが夢の中―――?だから三人は、あんな超常的な戦いが出来たのだろうか?


 だけど―――


 それって、おかしくないか?


 ―――だって俺達全員、桜の夢のゲストなんだろ?


 つまり桜がこの世界のホストで、それ以外はゲストってことだろ?



    ☆⚔☆⚔☆⚔☆⚔☆⚔☆⚔☆⚔☆⚔☆⚔


 自分自身が創り出した夢の中では、ホストは何でもありの存在。


 自分がこうしたいと思えば何でも出来るし、何にでもなれる。だからホストは夢の中では向かうところ敵なし状態。しかし唯一出来ないことがある。それは外から来た客、つまりゲストに直接的な変化はもたらせないということだ。

 服や持ち物を思うように変化させることは出来るが、ゲスト自身を変化させたり、ゲストの心を思うようにすることは出来ない。


 一方のゲストは、夢の中でも現実世界とまるで変わらない。


 他人の創り出した夢の中に来ているだけなので、現実世界で自分が出来ることしか出来ないのだという。ただし夢の中なので何かが起こったとしても、死んでしまったり怪我をしてしまったりすることはない。                                    

                  

   ☆⚔☆⚔☆⚔☆⚔☆⚔☆⚔☆⚔☆⚔☆⚔

 


 今日の作戦会議で、 紅葉と青葉から何度も聞かされた夢の中での原則をケンタは思い出していた。



 ―――――――って、ことはさ。

 

この人達は、普段からこんなにも強いってことかよ…………?



 三人がケンタの元に戻ってきても、ケンタは立ち尽くしたままだった。押し黙ったままだった。……まともに、三人の顔も見れなかった。


 そんなケンタの様子に気が付いたのか、紅葉が心配そうに声をかけてきた。



「…………ケンタくん?どうしたの、何かあったの?」


「い、いえ別に何も…………」


「そう、それならいいんだけど………?」



 そんな会話をしていた時だ。再び、辺りに不気味な音が鳴り響く。


 それは―――さっき聞いたばかりの音だ。


 それは――――――あのバッタが羽を広げて飛ぶ時の音。




 バババオォォォォォォォォォォ………………!




「………嘘でしょう?どれだけ、丈夫なのよ?」


 羽を大きく広げ―――殿様とのさまバッタが、ケンタ達をあの無表情な目で見つめている。


 その体は傷だらけで、全身が黒く焼け焦げて片足も無かった。


 それでもそいつは―――――


 戦いを止めるつもりはないようだ。



「………………ッ!また、こっちに飛んでくるつもりみたいです!」


「――――――っ!まずい!とにかく桜ちゃんと、この子を連れて逃げようよ!」



 三人の仲間達が慌ただしく動き回る中で、何も出来ずにいるケンタ――――


 そんなケンタの周りでは、いずみがあの子をおぶり、青葉が桜を抱き上げてようとしている。



「………くん。 ―――タくん!!どうしたのケンタくん!?」



 肩を揺さぶられ――――ケンタはその人の瞳の中を見た。


 そのトンビ色の瞳には、今にも逃げ出しそうな気弱な自分が写っていた。



「ケンタくん、どうしたの?――――――大丈夫?」




 ――――――おい、ケンタ。


 さっき紅葉さんは――――三人とも、準備はいいかって言ったんだぞ?



 でもさ―――紅葉さん。


 あんなに凄いこと―――――俺には出来ないんすよ……?



 その人の強さと美しさ―――そして優しさのこもった温かい眼差し。



 その全てが―――


 自信を失くした今のケンタに、重く圧し掛かっていた。












 ☆あとがき☆



 こんにちわ!🌞、こんばんわ!🌙

 今日もこの物語のページを開いて下さり、本当に本当にありがとうございます!


 そして――!たっくさんの応援を、いつもありがとう!

 引き続きの応援―――どうぞ、よろしくお願いいたします。(*_ _)ペコリ


 前話からの続き――――モンスターの群れを退治して、一安心したのもつかの間。桜達の前に姿を現したのは、ビル程もある巨大な殿様とのさまバッタだった。バッタ嫌いな桜は、そのあまりにおぞましい姿に気を失ってしまう。

 そんな中、残された四人のヒーローたちは果敢にバッタに戦いを挑んでゆくのだった。


 

 ちょっとちょっと!我らがヒーロー達と巨大バッタの戦い、ものすごいことになってるんですけど―――!?Σ(゚Д゚)💦


 果敢に攻めるヒーロー達の猛攻撃に、さすがの巨大バッタもタジタジ!………と、思いきや、もの凄い生命力で一歩も引かない巨大バッタ!このラグナロクを彷彿ほうふつとさせるの激戦の行方は、どこに向かうのか―――!?乞うご期待で―――す!!!(≧◇≦)


 ―――と、いうことで(笑)


 ☆と💗そして――作品とわたくし虹うた🌈のフォローで、五人と一匹の応援をよろしくお願いしま~す!(^_-)-☆



(う~ん……でも、ケンタくんが心配。大丈夫かなぁ?)

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