第330話 自分の価値×他人からの評価=楽しい日々 8
〜〜 2月某日 渉の家 side 佐藤 渉 〜〜
「はい、という事で今日のコラボ企画は我ら〈狩友〉の2人のリーダーの片割れである渉が少し前に自分の価値についてかなりズレた認識をしている事が発覚したので、今日はこの後すぐに現在配信中の様々なチャンネルの中からランダムにアポ無し突撃してもらいその反応をみて世間から自分がどう評価されているのかについて再度学んで頂くという企画になってます」
「早急の謝罪と企画変更を要求する。何だこの俺が精神的ダメージを受け続ける企画は?」
「残等、自分の価値を知らないアホには劇薬を投下されても文句言えない」
俺はいきなり知らない企画であり、明らかに俺に精神的なダメージがありそうでもある企画を叶と一二三が始めた事に動揺した。
そもそも今日この2人を呼んだのはこの2人の装備一式の補強と微細な調整をする為であり、大体半日で終わる作業のはずだった…のだが、叶達が急にコラボ配信をしたいと言ってきたので軽い気持ちで了承したらコレである。意味がわからない。
「という訳で渉にプレゼント。夏美自作の魔改造ゲーミングノートPC、中古のゲーミングノートPCを購入して魔改造したらしい。スペックは現段階のハイエンドモデル+最高の自作プログラム入り、夏美曰く「排熱と静電気に気をつけて」だってさ」
「夏美もグル…
「因みにこのパソコンの制作にミリアと桜が手伝って、今回の企画の諸々の許可とお手伝いを渉のお父さんと渡辺さんにしてもらった。包囲網は硬いよ?」
おいおい、どれだけガチなんだよ!?」
俺が狼狽えていると叶が元々シャープなデザインであろうノートパソコンが夏美の手により魔改造され、小さいアタッシュケースを彷彿とさせるデザインになってしまっている。そして〈狩友〉のシンボルマークが刻印されていて、その他にマウスとヘッドセットをノートパソコンと一緒に取り出すと俺に渡してくる。
俺はそれを受け取りつつこの企画に夏美が絡んでいる事を察したが、一二三の言葉に父さんと渡辺さんですら関わっていた事実に思わずツッコミをいれてしまう。
「それだけお前さんが考えている自分の価値がズレているって訳だよ。自覚しな」
「世間の評価と自分の価値を知らないと渉に変な奴とストーカー、その他諸々の対処がめんどくさい奴らが生まれかねない。だから今のうちに劇薬を使ってでも認知させるのが最善策何だよ?」
「…クッ、正論すぎて反論できねぇ…」
だが、叶と一二三の言葉に俺は反論できなくなってしまった。
確かに以前のダンジョンアイドルの一件以降、俺自身ですら何となくそんな気はしていた。だが、まさか仲間からいきなりその点を指摘された上にこんな劇薬を投下されるのは予想外だった。
「まあ、取り敢えずパソコンを起動してD&Vのサイトを開きな。夏美が今回の企画用のアカウントを作ってくれていたはずだからよ」
「えっと、もらったメモ帳に確かパスワードが書いてあったはず…」
「あ、もうコレ逃げられない奴だわ」
ほぼ積みの状態の俺へ畳み掛けるように叶が企画を進め、一二三が夏美からもらったであろうピンク色のメモ帳をめくりながらパスワードを探している。
俺はそれを見てもはや諦めて従うしかないと理解してノートパソコンを机に置いて開き、起動する。その後一二三からパスワードの書かれたメモを見せてもらいログイン画面に打ち込んでログイン。〈狩友〉のシンボルマークの壁紙の画面の中から家の無線LANに繋いでネットを使えるようにしてからインターネットを開き、D&Vのサイトを開いた。
「…うっわ、マジであるし」
そのサイトのアカウントが表示されている所を見ると『〈狩友 『異常』〉佐藤 渉 ★』のアカウント名が表示されていた。しかもアカウントの画像が俺の横顔の画像だし…と言うかいつ撮ったんだこの写真?
「うわ、公式マークが付いてるよ。夏美…いや渡辺さんの提案か?」
「本当だ、渉マジで有名人。自慢していいよ」
「…公式マーク?」
俺が悩んでいると脇からパソコンの画面を覗き込んだ叶と一二三がそんな事を言っていたので2人に公式マークとは何かを聞くと一二三が俺のアカウント名の★マークを指差した。
「これ、サイトを運営している会社が有名人とかのアカウントにつけるマーク。コレがあるか無いかでその人のなりすましとかを防止する為の印みたいなもの。私のアカウントにもある」
「因みに俺のアカウントにもあるぜ。…まあ、コレなら普通に渉のなりすましの人とかと勘違いされないからありがたいんだが…俺達にも説明をして欲しかったな」
そう言って2人は俺の脇から離れる。なるほど、つまりは有名人の名誉とかを守る意味でこの★マークを付ける訳ね…めっちゃ恥ずかしいんだが?
「ま、別に気にするな。渉は普通に目に付いた雑談配信とかにお邪魔してスパチャとかで反応を見ればいい。その反応が大切だからな」
「…あ、コレ最近CMやアニメでもコラボしている有名企業のVtuber『封魔らんぷ』ちゃんの雑談配信。私はこの配信に突撃するのを進める」
「…もう色々と抵抗するのは諦めたわ。取り敢えずスパチャをするならカードを登録しないとな」
俺は異様にはしゃぐ2人とその2人の配信用ドローンのコメントを見て、もう色々と諦めるしかないと悟った。そして俺は叶に取り敢えず棚に置いている自分の財布を持ってくるようにお願いするのだった。
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