第304話
「…は?」
俺は最初優香さんが何を言っているのか理解できなかった…しかし、周りも優香さんの言葉に静かになった為に徐々にだが言葉の意味が理解し始める。
「…え、マジ?」
「心の中の光景を見たので間違いないです、だから今から言う事をキチンと聞いて下さい…辛いかもしれませんが」
そう言って優香さんは幽鬼君の胸の中で話出す。
まず簡単に言えば佐々木の父親はクズだ。
父さんがこの町を出るきっかけとなった事件、確かに父さん達は別の県の別の街に引っ越した…のだが、その後の翔太の対応が俺達の聞いた話しと全く違う。確かに翔太は家から追い出されて町で一人暮らしをしたが父親はその間父さん達の動向を裏の人を使い観察、無事結婚して定住した段階を見計らって翔太に復讐の機会と裏のマーケットの商品集めをさせるべく父さん達が通い始めた産婦人科を調べ上げ、看護婦長がホスト狂いである事を突き止めた。
だから表向きには翔太に愛想が尽きて町を追い出したように見せかけて、本当の目的は翔太に裏に流れた他人の戸籍を渡して看護婦長がいきつけにしているホストクラブに潜入させ、看護婦長に散財を繰り返させて借金漬けにし、完全に自分の手駒として従わせる為に送り出されたのだ。
まず方法としてその時から海外のマフィア達から裏に赤ん坊を売り流すためのルートを作りつつ借金ずけにした看護婦長に産婦人科がある病院の病院長以下上役数名の弱みを握らせ、更にその後ねずみ算式に他の看護婦や医師、警備員などの弱みを握った。
そして出産予定の妊婦のリストを看護婦長に持ってこさせてからルートの昨日確認のために何回か表では赤ん坊が急死、もしくは行方不明などの理由にしつつ裏ではマーケットで高値で売り捌き、看護婦にはその時の売り上げの1割は借金返済、2割は現金で渡して残り7割のうち2割を翔太が、残し全てはマフィア側に金額が配当される様にしたのだ。勿論ホスト狂いの看護婦長がまともに借金返済をするわけもなく渡された2割の現金もホストクラブと翔太に貢ぐ事を計算に入れての配当でもある。実際にそうなったから更にタチが悪い。
「それで、いざお兄ちゃんが生まれたのを確認した翔太は看護婦長に…その…」
「…辛いならもう言わなくていいよ優香さん」
「だめです、これはキチンと言わないと…お兄ちゃん達が絶対に後悔しますから…」
話す度に苦しそうにする優香さんを見て俺は話を止めようとしたが優香さんは必要な事だと言って話を続ける。
その後、父さんと母さんの間に俺が生まれた。だから翔太も大詰めとばかりに俺を含めた病院の殆どの赤ん坊を裏に流す作戦を決行、看護婦長には「コレが成功したら借金はチャラどころか大金が手に入り、更に俺もお前と結婚してやる」と甘い言葉で焚き付けて、病院側も今回起こる事件は翔太が関わっている事を黙認する代わりに弱みを口外しない事で全員を黙らせた。
だが、いざ本番の際に看護婦長がしくじった。母さんの反撃を受けて看護婦長が気絶して予定の数の4割しか集まらなかったのだ。
故に翔太はまず裏の人間の力を使い自分は他の町の知らない人の戸籍を手に入れて雲隠れ、赤ん坊は全て闇に流して金に変えてほとぼりが冷めるまで隠れていたのだ。
「一応、看護婦長には興奮剤として麻薬を使わせていたらしく…薬が切れて発言や行動がおかしくなるのを利用して定期的に麻薬を買う為に起こした事件であると世間に思わせたんです…だからあの簀巻き男がお兄ちゃんのお母さんの死に関わっているなんて誰も分からなかったんですよ…」
「…そうか、優香さんがそう言うなら…事実…なんだな…」
俺は優香さんの話を聞き終わるのと同時に静かに怒り出す。優香さんのErrorスキルは強制発動で知りたくない情報も知ってしまう…だからあの簀巻き男…翔太の過去を風景として見て全てを理解したのだろう。
だがらこそ怒りが込み上げてくる、母さんが死んだ事件の犯人が目の前にいると知って黙っていられる自信は無い。
だが、物的証拠が無い限り下手に手を出したら俺達が犯罪者になってしまう。
「…渉、ちょっとコレを見て?」
「どうした夏…美…」
そんな中、夏美がノートパソコンを片手にこちらに向かって来た。だからそちらを向くと夏美がパソコンを開き、中身を見せてくる。するとそこには大量のリストに父さんとお腹をさする小柄の女性の写真なども大量に保存されており、更には知らない街の地図や病院の見取り図、そして生後3日から7日までの赤ん坊の名前が大量に並べられたリストまで表示されていた。リストにはご丁寧に名前の横に売った時の金額と思しき数字まで書いてあるし、何よりリストの最後には俺の名前があった。
「多分、コレが優香さんが言っていた話の物的証拠だよね?」
「…」
恐らくデータの解析をしていた際に見つけたのであらう証拠に俺は更に怒りを覚える…が、
「…ハァ!?」
俺の真後ろから俺より遥かに濃い殺気を感じ、急いで真後ろを見る。
俺は怒りで1番重要な事を忘れていたのだ。それは1番母さんを愛していた人は誰なのかと言う事だ。つまり…
「…」
今、1番怒っているのはいつのまにか俺の真後ろにいた真顔だが光が消えた目で画面に映る物的証拠を今もガン見している父さんだ。
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