ナイトメア

菜月 夕

第1話ナイトメア


あいつがやってくる。

 俺とそっくりなあいつ。ドッペルゲンガーだ。

 あれに本当に遇ってしまったら俺の方が死んでしまう。

 どちらかしか生き残れないのだ。

 野原の小さな黄色い花の中、俺は逃げ出そうとした。 

 その時。不思議な男があいつをどこかに行って連れて行ってくれた。


「まさかあんな事をするなんて」

「自分の弟をドッペルゲンガーとしか見れないまでになっているなんて。

 私たちは二人を差別しないで育てたつもれだったのに」

 少し弟の方が頭が良くて要領も良かった。

 一卵性では無かったがよく似た兄弟だった。

 えこひいきはしないつもりでも、お兄ちゃんだから、と責めていたのかもしれない。

 それが彼の中で少しづつ不満として溜まっていたのだろう。

「でも、彼は変な男が弟を連れて行ったと言ってしますよ」

「現場に残った凶器には彼の指紋しかありませんでしたし、付近の防犯カメラにも彼ら以外には映っていないんですよ。

 おそらく弟を排斥したい気持ちがそんな幻を作ってまでになったのでしょう。

 彼には弟をドッペルゲンガーとまで認識してしまう精神異常が見受けられます。

 その線で彼の無罪は主張すれば認められるはずです。

 但し、しばらくは精神病院に拘置されることになります。


 そして俺はここにいる。白い壁にはあいつの影が映っている。

 それはいつ消えるのだろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る