第十七章 探りあい

 「で、行きたかった場所は全部まわれたの?」

 風呂から上がって、ソファーで冷えたコーラを飲みながら寛いでいる汐音に訊いた。

 「全部行ってきたよ。古本屋さん、レコード屋さん、古物屋さん」

 二十歳を少し過ぎたくらいの、一般的な女性が好みそうな店はない。

 「女の子がよく行くようなお店には?」

 「もちろん行ってきたよ! パンケーキとアメリカンスシショップとイタリアン」

 食べ物屋ばかりだ。ファッション専門のテナントビルとか、今どき女子のトレンドであるショップの店名は出てこない。

 「ふーん。それで、欲しかったものは見つかった?」

 「うん。かなり見つけた。本が五冊とCDが七枚、レコード二枚。あと衝動買いの小物がいくつかと大物がひとつ」

 「大物? 大物って?」

 「あ、見せて上げるね」

 そう言って部屋に置いたままのキャリーケースを持ってきた。新幹線の車内で転がって行ったあのケースだ。

 あの時は騒ぎに気を取られていたから気付かなかったが、ほとんど手ぶらで出て行ったはずの汐音が、大荷物を引きずって帰ってきた時に『(なんでキャリーを持っているんだ?)』と訝ったものである。

 「そうそう、出ていく時は荷物がなかったのに、帰ってきたらケースを持っていたよね。向こうで荷物が増えたからケースを買ったの?」

 「まあそんなところ」

 と言って、ケースを開いて取り出したのは大きな縫いぐるみだった。

 「でっか! どうしたのこれ」

 「ディズニーランドで買ったの。わたしの大好きなキャラクター! グッズショップに並んでいたこの子とバッチリ視線があっちゃって、もう家に連れて帰ってあげなきゃって思ったのね」

 縫いぐるみ一つを入れるためのケースだったのか。

 「でも楽しかったなー。今度は藤村さんとみのりちゃんのお母さんも一緒に、みんなで旅行に行きたいね!」

 「街もいいけど、自然がいっぱいある場所に行くのもいいよ」

 「そうだよね。次は山か海に行きたいな」

 「汐音は山が好きなの、それとも海? 行くならどっちがいい?」

 「どっちでもいいよ。できればどっちも行きたい!」

 「じゃあ車を借りて、ドライブしながら海も山も行ってみることにするか」

 「いいね、行こういこう! じゃあさっそくみのりちゃんに電話しよう」

 「いや、ちょっと待って。まだ旅行から帰ってきて一時間も経っていないのに、もう次の旅行の計画の相談は早過ぎでしょう。せめて二、三日後にしときなさいよ」

 「じゃあそうする!」

 四人で行く山陰旅行は意外と早く実現しそうだ。


 「ね、ね、わたしがいない間、何してたの?」

 一通りみやげ話が終わったところで汐音が探りを入れてきた。

 「原稿書いたり音楽聴いたり映画見たり、いつもの生活スタイルで過ごしたよ」

 「みのりちゃんのお母さんとはお話しした?」

 「電話で話したよ。汐音が無理にみのりちゃんをお誘いしてご迷惑をかけましたって」

 「それだけ? ほかには?」

 「別になにも」

 そっけなさ過ぎやしないかと思うが、尻尾をつかまれそうな質問はうまくかわそう。

 それにしても、もし私の推理した通りなら、私が町田さんと一緒に東京に付いて来ていたと汐音は考えているはずだから、受け答えがややこしい。

 汐音は私と町田さんの関係に進展があったかどうかを知りたいだろうから、色々と鎌をかけてくる。

 私は汐音たちの思惑に気付いていると悟られないように、しかし、せっかくの娘たちの心遣いは嬉しいから、町田さんに好意を持っていることを仄めかす言動も織り込んでおかなければいけない。

 「ふーん。食事には誘わなかったの?」

 「誘ってないよ。どうして?」

 「だってわたしとみのりちゃんが映画を観に行った日に、みのりちゃんのお母さんが夕飯を作りにきてくれたんでしょ。だから今度は藤村さんがお礼になにかしてあげなきゃ。

 一日の終わりに居酒屋へいくなり、どこかのホテルのディナーに誘うなりできたはずよ」

 「あ、はい、そうだよね。いろいろ忙しくて」

 「普段、忙しいなんて家でも外でもほとんどないじゃない!

 もう、せっかくのチャンスを逃すなんて」

 どうやら東京でも、私が町田さんになんの気遣いもしなかったと思い込んでいるらしい。

 汐音は気づいていないようだが、次第に私と町田さんが東京に居たことを前提とした問い質しになってきている。

 「じゃあさ、今すぐみのりちゃんのお母さんに明日の夜、食事でもどうですかってお誘いするの。はい、電話。もうコールしてるよ!」

 電話を受け取り耳にあてると、ちょうど町田さんが出たところだった。

 「はい、町田です。汐音ちゃん?」

 「あ、いや、私です藤村です。汐音の携帯からかけています、と言うか、かけさせられてます」

 「はあ、そうなんですか。どうなさったの?」

 「いや、突然で恐縮ですが明日の夜、お食事に行きませんか」

 「あら、すてき! ちょうどみのりと明日はお出かけして、夜はいつもの居酒屋で食事をして帰ろうって予約を入れたところなの。

 じゃあ午後六時にいつもの居酒屋でよろしいですね。汐音ちゃんも含めて予約を四人で入れ直しておきます。

 では明日。楽しみにしていますわ」

 「あ、はい。じゃ明日」

 ふたりで食事のはずが、なし崩し的にいつもの四人での呑み会となってしまった。

 「ね、どうだった? OKしてくれた?」

 「あ、うん。でも汐音とみのりちゃんも参加することになった……」

 「なにそれ! もう、デートのチャンスだったのに」

 「まあいいじゃない。人数が多い方が食事は楽しいし」

 「もう、本っ当に人が良すぎるんだから。ま、いいか。で、何時に行くの?」



 「でねでね、電車がブレーキをかけたショックでキャリーケースがひとりで走り出したの!

 わたしは後ろのドアに行こうとしてたのに、気がついたらキャリーは前に向って爆走しちゃってたから、わたしも慌てて追いかけてったよ。

 もう、本当に恥ずかしかった! だってケースとわたしの通り過ぎた席に座っているお客さんみんながこっちを見てるんだよ」

 「で、みのりちゃんはその時どうしてたの?」

 無論、最初から最後まで目撃していたから事の顛末は知っているのだが、このままだと汐音の独壇場なので、共演者あるいは傍観者のみのりちゃんにも発言してもらうきっかけを作った。

 「わたしはただ汐音ちゃんが走って行くのを見ているだけ。多分目が真ん丸になってたと思います。

 後ろのドアがすぐ近くだったのに、わたしも仕方なく汐音ちゃんについて前側から降りました。できるだけ平静さを保って」

 「そうそう。みのりちゃんはとっても冷静だったよね。さすが!」

 「いや、そうじゃなくて、アカの他人を装おうと思って……」

 「そうだよね。父親だけど私も同じ状況だったら他人のふりをする」

 「え~ひっどーいっ! でもホームに降りたあと、ふたりで大爆笑したよね」

 自分に降りかかった災いを面白おかしく語る汐音の話力はなかなかのものだと思う。

 特にウケを狙って話の内容を盛っているわけでもないのに、聞く相手を笑わせる能力は天性の才能なのだろう。

 お世辞にも活舌が良いとは言えないのに、独特な前のめり気味の口調が聞く者に期待を抱かせる。

 もちろんオチがスベることも多々あるが、それはそれで失笑を誘って場が和む。

 保護者として、娘が人に好かれるキャラクターであることはやはり嬉しい。


 四人とも昨日までの三日間、密度の濃い旅程をこなしてきたのに疲れている様子はまったくない。

 娘たちはともかく、私と町田さんはかなり体力を消耗していてもおかしくないが、私に関しては不思議と東京に行く前より心身ともに健康だ。

 見る限りでは町田さんも同じく元気そのもの。


 四時間近く居酒屋で呑んで食べて話し、普通なら町田さん母娘と別れてそれぞれタクシーで家路につくのだが、今日はみんなこれで収まる気配がなく、そのままカラオケへ流れていくことになった。

 私はカラオケが苦手で、歌ってもせいぜい二、三曲。中高生時代に聞いていたニューミュージックしかレパートリーがない。

 そして私が歌い始めると他の者は選曲タイムになる。

 二十代の終わり頃からは、カラオケに行くのは五~十年に一度くらいのペースで経過していた。

それが汐音を迎え、町田さん母娘と知り合って以降、一~二週間に一度と指数関数的にカラオケへ通う頻度が上昇した。

 頻度が上がったからと言って歌える曲も増えた訳ではないが、娘たちや町田さんの歌声を聴きながら、緑色やオレンジ色のドリンクを飲みピザを食べるだけでも楽しいものだ。


酔い醒ましがてら、歩いてカラオケボックスまで行くことにする。

私と娘たちふたりはそれほどでもないが、町田さんは明らかにオーバーペースで呑んでいたので、若干足もとが覚束ない。

 私とみのりちゃんが両方から町田さんを支え気味に歩き、汐音はア・カペラで人目も気にせず大声で歌いながら数歩先を歩いている。

 しばらくその調子で進んでいると、コンビニの前で町田さんが

 「ちょっとごめんなさい。コンビニでお手洗いを借してもらうわ」

 「大丈夫ですか? 気分が悪いんじゃ?」

 「いや、気分はいいです。今夜はサイコー!」

 かなりいい気持ちのようだ。だがひとりで行かせるのは心許ない。

 「わたしが連れて行きますから藤村さんも汐音ちゃんも先に行ってて」

 と、みのりちゃんが言うと

 「あ、わたしが行く! ちょっと化粧直ししなきゃ」

 そう言うが早いか、くるっと向きを変えて引き返してきた汐音が、町田さんの手を引っ張ってコンビニ店内に入って行った。

 私とみのりちゃんはとり残されたので、店内で缶コーヒーを買って店の前で飲みながら待つことにする。


 「東京じゃ汐音に振り回されたんじゃないの?」

 「そんなことないですよ。わたしも充分楽しみましたから」

 「古本屋とか中古レコード店とか、汐音の行きたがる店は二十歳過ぎの女の子が好んで行くようなショップじゃないから、みのりちゃん無理して付き合ったんじゃないかと思ってたけど」

みのりちゃんも私と町田さんが東京に着いて来ていたと確信しているはずだから、質問の言い回しに気をつけないといけない。

 しかもみのりちゃんは汐音よりはるかに勘が鋭いのだ。

 「実はわたしも古書店が好きで、市内の何店かは月一くらいで通っています」

 「確かむかしの絵葉書を集めていたよね。古書も好きなんだ」

 「そうですね。本もですけど、ぜんぜん知らない家族の昔のアルバムがたまに売りに出ていて、それを見るのが大好きなんです。写真が写された頃の風物を感じることができて」

 「じゃあ汐音と趣味が合うんだ。

 次の日は原宿にも行ってきたんだよね。どうだった?」

 「人ばかりで歩くのが大変! まだ慣れてないんですよね、ふたりとも人混みが」

 「ね、ひとつ訊きたいんだけど、大勢いる中で、人間とアンドロイドを見分ける、と言うか感じ分けることはできるの?」

 「すれ違う瞬間とか、かなり近距離なら判断できるけど、意識しないと気がつかないですよ。

 人間や動物は常に呼吸や発汗で新陳代謝を行っていますよね。その時発散される匂いをわたしたちは嗅ぎ分けることができるんです。

 だから逆に何も匂いを感じない人はアンドロイドってわかります」

 アンドロイドの微細な感覚が人間より優れていることは、以前に御茶水氏から聞いている。

 彼女たち種族に備えられた、人間を事故や未知の危険から守るためのサポート機能のひとつなのだそうだ。

 「じゃあ、常に臭覚が反応しているのかな。そうだったらうざったくない?」

 「いえ、いつも匂いを感じ取っているわけじゃありません。

 これは人間も同じだと思うけど、雑踏の中では特に意識しなくても、一緒にいる人の声や物音だけをピックアップできますよね。アンドロイドも同じです。

 聴覚や臭覚は人間より感度が高いんだけど、いつでもフルに能力を稼働しているのではなく、必要に応じてセンサーのパラメーターを上げたり下げたりして、意識的に選択度を調整しています。

 だから常時、スイッチがオンになっていることはないです」

 「ディズニーランドでは雨が少し降っていたようだけど、視力の能力を上げると、多少風景が霞んでいても、ある程度は先の方まで見ることができるのか。

 汐音がディズニーから送ってきた写真は、白い靄のかかった風景しか写っていなかったけど、みのりちゃんたちにはちゃんと遠くのお城や観覧車やジェットコースターが見えていたんだね」

 「ええ。でもやっぱり青空の下で色とりどりの風景を見るのが一番です。パラメーターゼロの通常モードで」

 少し間があってみのりちゃんが訊いてきた。

 「あの、もしかして藤村さんは心のセンサーで、いろんな事をお見通しじゃないんですか?」

 「え⁉ 私が? こころのセンサーって?」

 「センサーと言うか直感と言うのか、気づいている事があるんじゃないかと思って」

 「それはたとえばどう言ったことを?」

 「それはまあ、いろいろ……」

 多分、人間特有の腹の探り合いがみのりちゃんは面倒くさくなってきたのだろう。

 東京でのことはいずれ判る事だし、当たっているかどうかは別として、みのりちゃんなら私の推理を面白がって聞いてくれそうだ。

 「そう言うみのりちゃんもお見通しじゃないの? ふたりが東京に居る間の私や、みのりちゃんのお母さんの行動とか」

 みのりちゃんは口をすぼめて微妙な笑顔を見せた。

 「はあ、そうですねえ……」

 「では私もみのりちゃんも、なにか気づいていることがあると言うことか。

 じゃあこの際だから、それぞれ知っている事実をしゃべってみる?」

 「そうですね。隠し事をなくしてすっきりしたいし。

 では告白の順番決め。最初はグー」

 「え、ジャンケンで決めるの⁉」

 「当然です! 公平にしないと」

 「あ、そう」

 長幼序あり、という言葉がみのりちゃんのアーカイヴに入っているかどうかは知らないが、この場合、カミングアウトの順番は、年齢の多い少ないは関係ないらしい。

 「じゃあ、最初はグー、じゃんけんポンッ!」

 私がグー、みのりちゃんがパーで予想通り私の負け。

 じゃんけんでは私の方が圧倒的に分が悪い。個人の対戦もじゃんけんトーナメントでも、だいたい私は負ける。

 「わたしの勝ちだから藤村さんからどうぞ!」

 少しホッとしたのと勝ち誇った気持ちが混ざった表情でみのりちゃんが言った。

 さて、どこからどういう風に話し始めるか。ちょっと間をおいて考えをまとめる。


 「ふたりが新幹線で出発した後、私がふたりの後を追って東京に向かったのはもう知っているよね」

 いきなり話の核心部分から入った方が、みのりちゃんの性格を考えると気が楽になるだろう。

 みのりちゃんは軽く頷く。

 「私の姿に気付いたのはいつ?」

 「二日目。わたしたちの護衛をしてくれてたんですよね」

 「まあそんなところ」

 ストーカーと言われなかったのは幸い。

 「すぐにわかったの? 一応変装をしていたつもりなんだけど」

 「わかりますよ、あんなダサ…… あんな古い映画みたいなかっこう」

 「あっそう。じゃあ肩にハンガーを入れたままみたいなデザインの、白いコートの下にワインレッドのワンピースを身に着けた私の相棒も見つかっていた?」

 「もちろん! 実のところ、藤村さんより先に相棒さんの姿を確認していました」

 「だよねー。二百メートル離れていても目に付いたから。

 それにさっきの話しでは、靄や霧の中でも見通せるそうだから、ホテルのお風呂でも湯気の向こうに、入浴中だったお母さんの姿を判別することができたと思う」

 「スルドい! そうなんです。あの時はお母さんとばっちり目が合っちゃって焦ったけど、でもお母さんにはわたしだと確信がもてるほどの視覚能力はないし、あの湯気の量と距離だったので、大丈夫と思いそのままスルーしました」

 「私も町田さんから聞いたけど、湯船に浸かっているとふたりの会話が聞こえてきて、この子たちはみのりちゃんと汐音に間違いない、どうしようと考えていたらみのりちゃんと視線がかち合った。

 お母さんもみのりちゃんに気づかれたんじゃないかってちょっとパニくったけど、ふたりともそのまま話しに夢中だったみたいだから、大急ぎで風呂から出て部屋に戻ったみたい。

 それで、汐音も町田さんに気づいてたの?」

 「いえ、汐音ちゃんはそれこそ話すのに夢中で、ぜんぜん気に留めていませんでした」

 ひとつのことに集中すると周りが見えなくなる汐音らしい。

 「じゃああとは言わなくても概ねわかるよね。

 その日の昼間はずっと尾行していたし、次の日は私たちふたりともみのりちゃん達について行く元気がなかったから、ゆるく東京観光して昨日帰って来た」

 「そうなんですね。だいたい予想通りでした。

 ね、どうして藤村さんはわたしたちに付いて来ようと思ったんですか」

 「そりゃーふたりが心配だからだよ。いや、みのりちゃんはしっかりしてそうだから大丈夫だろうけど、汐音はあんな風だし、それに個人的な旅行は初めてだから、なにか失敗しやしないかと気が気じゃない。家にじっとしていても何も手につかないだろうしね。

 だったらこっそり付いて行って、近くで見守っていようと思い立ち、ふたりを見送って二時間後には後続の新幹線に乗っていたわけ」

 「相棒さんとのチームワークはどうでした。うまくいきましたか?」

 「うん。まあまあ。ふたりとも探偵には向いていないことがわかったし、気持ちに体力が追いついてこないことも共通してた」

 「いや、そう言うんじゃなくて、東京に行く前より仲良くなったとか、ふたりで居ると楽しかったとか、そんなロマンス的な面で進展があったのかどうかです」

 みのりちゃんの口調が若干詰問調になっている。

 「あー、そっちの方ね。

 私は前からみのりちゃんのお母さんには好意を持っていたし、三日間一緒に居て性格とかもよく理解できたから、私の町田さんへの想いはより深くなったかな」

 「じゃあ良かった! 少なくとも藤村さんにはわたしたちのミッションが成功したみたいです」

 「ミッション? なんのミッション?」

 「あ、なんでもありません!」

 やはり私と町田さんを近づけるのが主な目的だったのか。動機がはっきりわかって素直にうれしい。

 「で、みのりちゃんのお母さんについてはどうなの? そのなんでもないミッションとかは成功だった?」

 「それがわからないんです。昨日帰ってきてからずっと母の様子を観察しているけど、特にいつもと変わらなくて」

 「東京に付いて行ってたことがみのりちゃんにバレていると、お母さんは気づいてなさそう?」

 「それは大丈夫だと思います。お母さん、そういうところは鈍いから」

 「汐音といっしょだ。あの子も理解しているようで判ってない。

 ね、これは全くの私の推測だけど」

 タイミングとしては今が最適なので、この辺で私の考えを披露してみる。

 「私もみのりちゃんのお母さんも、それぞれの娘が心配で追っかけて行ったのはその通りなんだけど、実は私たちが東京にこっそり付いてくるよう計画的に仕向けられた気がするんだよね」

 「はあ…… なんでそう思うんですか」

 「出発直前に受け取ったスケジュール表の汐音の渡し方があまりに唐突だった、電話でのやりとりがどことなく思わせぶりだった等々、いろいろな出来事を考え合わせると、どうも私と町田さんが旅先で出くわしたのが偶然ではないような気がする」

 「……コンティニュー」

 なぜか英語で返すみのりちゃん。心の動揺の表れか。

 「子離れできない私の性格を汐音が見抜いて、見送りホームでの切羽詰まった状況で、行く先を詳しく書き込んだ日程表を手渡せば、私はかならず後を追って来ると予測するのはそう難しいことではない」

 私の話しを吟味している様子のみのりちゃん。表情にはあまり感情が表れていない。

 「続けてください」

 「みのりちゃんのお母さんも、恐らく同じような作戦に引っかかったのではないか。

 ただ単純な私よりも、多少手の込んだ事前の情報操作や、時間をかけた誘導戦略があっただろうけど」

 「……興味深い説ですね」

 「あとは私と町田さんが東京で偶然出会えば、タッグを組んで行動するのは目に見えている……。

 多分、急な宿泊の一日延長も実は事前の計画通りだった、と。

 あくまでも私なりの仮説だけどね。当たっているかどうかは別にして、なかなか面白いでしょ」

 「もし今のお話しが正解だったとして、いつの時点でそう考え始めたんですか」

 「二日目の夜かな。ベッドに入って寝ながらその日と前の日の出来事を思い返していて」

 みのりちゃんの瞳がこちらの目を見つめている。私がいったいどこまで本当のことを知っているのか、確証を掴んでいるのだろうか、と。推理が当たっているとわかればどう思う……。

 彼女がCPUをフル回転させているのが表情からわかる。

 「何パーセントくらい、今おっしゃった仮説が正しいと思います?」

 「百パーセント。と言いたいけど、まあ五~六十パーセントくらいかな。

 ふたりが練った計画だったとしたら、あまりにも事がうまく運び過ぎた気がするし、私たちが泊まった宿が同じだったことなど、偶然過ぎる要素もかなり多い」

 「藤村さんが予測したその計画が当たっていたとしたら、怒ります?」

 「怒る? なんで?」

 「だって、藤村さんとうちの母を言葉巧みに誘導して東京に連れ出したことになるでしょ、結果的に」

 「私については怒る気なんて毛頭ないよ。むしろ楽しい三日間を作ってくれた娘たちに感謝しているくらい」

 これは本心なので掛け値なしに笑顔で応えられた。みのりちゃんは私の反応を気にしていたのだ。

 彼女の表情からちょっと安心した様子が窺える。

 「じゃあ、これです」

 と言って持っていた携帯電話のディスプレイを私に向けた。

 画面いっぱいに『正解!』の文字が表示され『ピンポンピンポンピンポーン』の効果音がスピーカーから飛び出してきた。

 「当たってた? 私の推理は百点満点で何点くらい」

 「百二十点。さすがですね」

 「そんなことない。辻褄が合うように考えを繋いだだけだよ」

 「汐音ちゃんに言ったんです。うちのお母さんはともかく、汐音ちゃんのお父さんには絶対にばれるよって。でもあの子は『藤村さんは意外と鈍いから大丈夫!』だって」

 汐音の父親評を図らずも知ることができた。

 「まあ確かに私はそれほど冴えた男じゃあないけど……

 ね、どこまでが筋書き通りでどこまでが偶然だったの?」

 「藤村さんと母が追いかけてくるのは計算通りでした。

 とりあえず二人が東京まで来れば、あとはわたしたちを追跡する過程で、藤村さんと母を『偶然』出会わせるのも容易いでしょう。

 その後は一日の終わりの食事や、予定外の自由行動日で親睦を深めてもらえれば、娘たちの望みは成就したことになります。

 だからほとんど組み立てたストーリー通りに進んだので、わたし達の自己採点でも百点満点に近いんです。

 でもひとつだけ、本当に奇跡と言うか万に一つの偶然だったのは、藤村さんが母と同じ宿に投宿したことです。

 これはわたしも汐音ちゃんも予想外で思わずハイタッチしました」

 「そうか、それぞれの親子がGPSで位置情報を共有しているから、私たちの居場所は常に把握されていたんだね。

 だとしたら私と町田さんの動きは、事の初めからバレバレだったんだ」

 「実際に姿を見たのは、さっき言ったように二日目の探偵姿の時なんですけど、わたしたちの新幹線が出発したあと、しばらくしてGPSで調べたら藤村さんがペットホテルへ寄った痕跡があったんで、汐音ちゃんがホテルに電話して確認したんです。

 そうしたらアクアくんとあしるちゃんが一泊二日で預けられていたんで、それを二泊三日に変更してもらいました。

 プライバシーを侵害する気持ちはもちろん無いですけど、今回は大目に見てください。GPSを使ったのはその日だけです」

 そう言ってみのりちゃんが頭を下げて謝った。

 「親子だし私は気にしないよ。町田さんも同じ気持ちじゃないかな。

 見方を変えれば、私たちが迷子にならないよう見守ってくれていたとも言えるしね。

 アクアたちもホテルを追い出されず、無事に過ごせたし」


 話しが途切れたので、私もみのりちゃんもコンビニ店内の様子を覗いてみるが、まだ汐音と町田さんが出てくる様子はない。

 もう少し時間がかかると見てみのりちゃんに訊ねてみた。


 「ねえ、どうして私が町田さんに好意を寄せていると思ったの?」

 「それは藤村さんに対する不断の観察を元に導きだした推論、と汐音ちゃんが自信たっぷりに言ってました」

 「不断の観察? 具体的にはどんな行動や言動から推し量ったんだろう」

 「汐音ちゃんによると、男性は恋愛感情の対象となっている女性の話を持ち出すと、急によそよそしい態度になって話題を逸らそうとするそうです。

 うちの母のことになると藤村さんのそんな対応が顕著に見られたので、藤村さんはうちの母が好きである、との結論に達したそうです」

 意外と鋭い汐音の観察眼に、動揺しそうになった。

 「汐音の推論ねえ……。ネットか雑誌かコミックがネタ元とは思うけど、まあ当たっているかなあ」

 私の町田さんへの思いは図星となったが、町田さんはどうなのか。女性の本心を男は読むのが下手だ。

 「町田さんは私の事をどう思っているとみのりちゃんは見ているの? 

 最近、一緒に呑みに行く機会が増えたので、仲の良い呑み友って感じではないのかな」

 「いえ、それ以上だとわたしは確信しています。

 男性と違って女性は好きな人の話しをする時は少女に戻るんです。特に昭和時代に少女だった女性は退行傾向が強いみたいですね。

 藤村さんのことが話題になると目尻が下がりきってニコニコしっぱなし」

 そうなのか。やはり町田さんも少しくらいは私に好意を持ってくれているのだろうか。ちょっとは期待をしてもいいかもしれない。

 「それで、これからどうされるんですか」

 「これから? カラオケが終わったら帰るよ」

 「いやそうじゃなくて、うちの母ともっと親密になるような工作は考えているんですか?」

 「工作⁉ なんだかスパイ映画みたいだね。一応、山陰旅行に行こうかって話しはしたけど」

 「あ、いいじゃないですか! いつですか」

 「町田さんが中国山地の紅葉を観たいって言っているから、多分、秋になるかな」

 「行ってください行ってください! わたしたちもサポートしますから」

 「いや、それがね、みのりちゃんと汐音も含めて四人で行こうってことになっている」

 「わたしたちも含めて⁉ それじゃ意味ないじゃないですか! 藤村さんと母がふたりで行かないと恋の花は咲きませんよっ!」

 みのりちゃんの思考回路が熱を帯びてきている。彼女たちの冷却システムが空冷だか水冷だか知らないが、熱暴走の心配はないのだろうか。

 「わたしと汐音ちゃんで藤村さんと母がふたりで旅行に行くよう仕向けるので、藤村さんもそれにうまく乗っかって母を誘導してください」

 「あ、はい。でも無理にふたりじゃなくても……」

 「無理にもへったくれもありませんっ! ふたりで旅に出るんです!」

 「わ、わかりました」

 みのりちゃんの勢いに抑え込まれて抵抗を諦めた。

 再び店内を見ると、奥のお手洗いのドアから汐音と町田さんが肩を組むようにして出てきた。会話で盛り上がっているのか、ふたりとも笑いながらしゃべっている。

 「ほら、出てきましたよ。カラオケへ着くまでにわたしが汐音ちゃんに成り行きを話すから、藤村さんは母の介護を装って、寄り添って歩いてください」

 当事者の意志とは関係なく、流れが形成されつつある。

 まあ、誰の手助けもなければこのままぬるま湯の関係が続き、進展も後退もないだろう。

 それはそれで私としてはかならずしもいやな状況ではないが、この際、せっかくのみのりちゃんの厚意に甘えようか。


 「お待たせしました! みなさんに重大なお知らせがあります。ではみのりちゃんのお母さん、どうぞっ!」

 そう言って、汐音が町田さんを私たちの前に押し出した。

 「いや、これはプロデューサーの汐音ちゃんから公表すべきよ」

 汐音がプロデューサー? なんの?

 「いえいえ、言い出しっぺの発案者であるみのりちゃんママが言うべきです」

 「だってほら、わたし口下手だし、それにお酒が入って活舌があいまいになってるから。ね、だからほら、汐音ちゃんお願い!」

 「えーそーですかー。じゃあ不肖々々ではありますが、このわたしがみのりちゃんのお母さまに代わって発表いたします」

 不肖々々とか言いながら、けっこう嬉しそうな汐音である。

 「季節が晩秋から初冬へと移りゆく今日この頃、紅葉の行楽シーズン到来となりました。

 さてそこで、来る十一月に、色づく中国地方の山々を愛でつつ、山陰の静かな温泉地に町田・藤村の二家族そろって旅行に行きませんかと、先ほどみのりちゃんのお母さんからご提案がありました。

 わたしは即座に賛成の意志を示したところ、お母さんからこの旅行のプランニングを取り仕切る総合プロデューサーとしてご指名をいただいたので、ここにご報告申し上げます!」

 外でみのりちゃんが町田さんとの二人旅行を私に説得していたころ、店内では町田さんが汐音に旅行計画の存在を公表し、そのアイデアに激しく賛意を示した汐音をプロデューサーに抜擢するまで話が進展していたのだ。

 私は事の成り行きを第三者的に傍観していた。

 みのりちゃんの様子を窺うと、彼女は目を丸くし口は半開きで、今しがたの汐音の発言を頭の中で再生しているらしい。

 汐音の口上が続く。

 「プロデューサーの大役を仰せつかった以上、不肖わたくしも精一杯がんばって素晴らしい旅を演出する所存であります。

 ですが、なにぶん未熟者ゆえひとりでは手に負えない予感もします。

 そこでわたしの不足を補う役としてみのりちゃんを副プロデューサーに任命し、只今この時点から業務の一端を委任いたします。

 そしてみのりちゃんのお母さんと藤村さんには、わたしたちのサポーターとして広く意見を伺います。

 ご異議ありませんか? 異議なしと認めます!」

 どこかの国の国会中継を視ているようだ。

 「副プロデューサーって、ね、汐音ちゃん、それどゆこと?」

 「だからね、今度みんなで旅行に行くことになったんで、みのりちゃんにも行き先やそこに着くまでの道筋、旅先でのイベントとかのアイデアを考えてほしいの。わたしひとりだと古本屋さん探しとかマニアックなものばっかりになっちゃうでしょ。

 みのりちゃんの卓越した企画力を遺憾無く発揮して、旅に彩りを添えてほしいのよ」

 「それはいいんだけど…… ね、ちょっとこっち来て」

 そう言ってみのりちゃんが汐音の手を引っ張ってコンビニに入って行った。


 「実はね、汐音ちゃんたちがお手洗いに行っている間に、藤村さんとうちの母がふたりで山陰旅行に行くよう計画を立てる話しをしてたの。

 ほら、状況が状況だったから、東京ではあまりふたりの仲が進展しなかったみたいだし、ちゃんとしたシチュエーションの旅を用意してあげると、いい齢した男女ならなにかあるはずでしょ。

 藤村さんは乗り気じゃなかったけど、説得してだんだんその気になって来てたところだったのに、急に汐音ちゃんが四人で旅行に出かけるって言いだしたから目論見が狂っちゃった」

 「えーそうだったの。

 あれ? でもなんでみのりちゃんと藤村さんが山陰旅行のこと知ってるの? みのりちゃんのお母さんは、旅行に行こうってたった今思いついたみたいな感じだったけど」

 「あ、ああ、それは母が前から、いつか紅葉の季節に山陰へ旅行してみたいってわたしに言ってたの。

 お酒が入って気分が良くなっているのと、季節は今がぴったりだから話しを持ち出すのは絶好のタイミングと思って、さっき私が藤村さんに計画を持ちかけたの。

 母と発言が重なったのは単なる偶然よ偶然!」

 「ふ~ん。ま、でも藤村さんは奥手だしみのりちゃんのお母さんは呑気な性格だから、二人っきりで同じ空間に長時間いると気まずくなっちゃうかもしれないよ。

 だったら親子四人水入らずで旅を楽しんだ方がいいんじゃない」

 「でもそれじゃいつもの呑み会と変わらないよ。藤村さんと母のロマンティックな場面を作ってあげないと、いつまでたっても結ばれないわ」

 「だったら作ってあげようよ。わたしたちは向こうで、急に思い立った風を装って観光地巡りにいくことにして別行動をするの。そうしたらいやでも藤村さんたちはふたりで過ごさなきゃならなくなる。

 あとは押し寄せるロマンスの波に身を任せ……」

 「なに言ってんの。

 でもまあ、それもありかもね。あのふたりだけで旅に出しても、確かに何か起こりそうな予感はあまりしない」

 「でしょ、でしょ。だからさ、四人で出かけて、あとは旅先で成り行きにまかせようよ」

 「そうねえ。そうしましょうか。

 汐音ちゃん、そこまで考えてプロデューサーを引き受けたの?」

 「いや、今みのりちゃんと話していて思いついた行当たりばったり計画」


 店の外でいい気分の町田さんの身体を支えつつ待たされている私は、店内の娘たちの表情を観察していた。

 しばらくはみのりちゃんが何やら自説を展開していたようだが、汐音は深く考えることなく、いつものノーテンキ風な物言いでみのりちゃんを最終的に納得させたらしい。

 汐音は満面の笑み、みのりちゃんは納得したようなそうでないような複雑な表情で店から出てきた。

 みのりちゃんと目が合い、私が『で、どうなったの?』の意を込めて目線を送ったところ、みのりちゃんからは『どうしたものでしょう』といったような視線が帰ってきた。

 「さ、早くカラオケに行って旅行の企画会議を兼ねた紅白歌合戦をしよう!」

 プロデューサーになったのがよほど嬉しいのか、汐音のテンションが上がりっぱなしである。

 「紅白ったって白組は私ひとりしかいないよ」

 「いいのいいの、藤村さん孤軍奮闘でがんばって!」

 「そうよそうよ、藤村さんの定番レパートリーをまた聴かせて」

 町田さんも今夜はいつになく饒舌になっている。

 上機嫌のふたりの後ろを、なんとなく割り切れない気分のみのりちゃんと連れ立ってついて行く。

 道すがら、先ほどのコンビニでのみのりちゃんと汐音のやりとりを聞かせてもらった。

最初のみのりちゃんの案では、私と町田さんがふたりで出かける計画だったが、汐音が言うように、最初からずっとふたりきりでは会話が途切れはしないか心配はある。

 ならば四人で現地までの道のりを楽しく過ごし、あちらに着いたら娘たちがこしらえてくれるシチュエーションの中で押し寄せる愛と情欲の波に身を任せ……いや、いやいや町田さんはそんなタイプじゃないな。

 どちらかと言えば情欲よりも、何はさておき浴場に向かう温泉好きなので、お風呂上がりに差し向かいで酒と肴を楽しむことになるのだろう。

 実のところ、前にも書いたが私は男と女のめんどくさい駆け引きは避けたい。ゆっくりと温泉宿の夜をふたりで過ごせればそれが最高のシチュエーションではないか。

 この齢になれば身体の関係はもう二の次でよろしい。

 町田さんもきっとそう考えているだろう。考えているはずだ。

 娘たちが思っている展開とは違うかもしれないが、町田さんとの距離が縮まるのは間違いない。

 そうと決まれば、今夜は娘たちが聞いたこともないニューミュージックを思いっきり歌って聴かせてやろう。

 そもそも《ニューミュージック》という史語化したジャンルを知っているだろうか。


 案の定、私の絶唱中は女子チームによる宿泊先や運行コースの選定に費やされている。

 「ねえ、ここ、どう?」

 汐音がネット検索で見つけた宿の写真をみんなに見せている。

 『いい感じじゃない』『風景が綺麗』と町田さんとみのりちゃんが賛意を示している。

 私も見せてもらったが、確かに良さそうな雰囲気だ。

 その小ぢんまりとして静かそうな旅館が候補となり、さっそくみのりちゃんが電話をかけたところ、すぐに四人部屋が二泊三日で予約できた。

 今のところ宿泊予定は私たちだけらしいので、他の客に気遣いすることはなさそうだ。

 十一月第三週の平日三日間とは言え、秋の観光シーズンの只中なのに簡単に宿が確保できたのはラッキーであろう。

 あるいは何か曰くつきのスポットではないかと汐音が調べたが、それらしき情報は見つからないのでとりあえず心配はいらないようだ。

 あとはレンタカーの予約と、可能ならキャンプもしてみたいと言う娘たちのリクエストがあり、私と汐音でホームセンターに明日出向いて、キャンプ道具一式を物色することになった。

 せっかくだからほかのアンドロイドの子も誘ってみようかと私が提案したが、今回の旅行はあくまで私と町田さんを親密にするのが主な目的であると、みのりちゃんから即座に反対意見が表明されたので提案は却下された。

 旅行の最終目的をはっきり宣言するみのりちゃんの声を、町田さんはニコニコしながら聞いている。

 酔っているから私とみのりちゃんのやりとりを、ちゃんと理解しているかどうかはわからない。


 今夜はほぼ私がマイクを独占していたので声ががらがらになってしまった。

 旅程が大方まとまったようなので、打ち上げに最近の定番盛り上がり曲を女子軍団が歌い始め、私はそこらに転がっていたマラカスを振ってお茶を濁す。それでお開き。

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