大喜利大会の運営について
大喜利合宿、そして回転寿司レーンの試運転を終えた翌日。
来月に横浜国際総合競技場で開催される第一回全国顔寄せ大喜利大会についての話し合いが行われている。
本来であれば、必要な建造物の図面や建設に伴う資材の確保、諸々の手続き等が終わっていないとならない時期なのだが、伊吹含め誰もこれだけの規模の事業に携わった事がない為、開催が危ぶまれるほどの進行具合となっている。
テレビ局との共同開催の為、局の制作陣はやきもきとしており、たびたび
制作陣としては問題しかないのだが、共同開催を取り消しにされるのではという思いから、あまり強くは言えない状況だ。
「横浜国際総合競技場の観客席は七万席ですが、全てを販売してもよろしいでしょうか?」
「七万席……、全世界の子猫が申し込みをしてくれると考えると、抽選販売にしないとマズいだろうなぁ。
本来であれば七万席埋めるのは相当大変だと思うけど」
レジャーやレクリエーション関係の事業担当秘書である
果たして大喜利の大会でそれが出来るのか、伊吹は非常に不安に感じている。
しかし、前回の安藤子猫顔寄せ大会の実績がある為、観客席が埋まる事はほぼ確実であると琥珀は説明する。
「埋まるどころか、世界中から応募が殺到して対応に追われるのは間違いありません。最初から抽選で受け付けしないと大変な事になりますよ。どうにか座席数を増やせませんか?」
琥珀の要望に対して、マチルダが前世の知識を活かして提案をする。
「グラウンドの芝って外せるよな? そこに大喜利の舞台を用意して、他は全部アリーナ席としてパイプイス並べたらええねん。そしたら五千席は確保出来るはずや」
主目的としてフットボールの公式試合用に建設された横浜国際総合競技場だが、フィールドの芝は人工芝なので自由に取り外しが出来る。
ちなみに、この世界の日本ではサッカーという呼び方は定着しなかった。
「そっか、芝が痛むとか考えなくていいから、飲食可能になるんじゃない?
競技場の運営に確認が必要だけど、飲み物だけでも販売出来ないかな? 五月とはいえ、晴れたら暑いだろうし熱中症も気になるから」
「でしたら、施設内の飲食店や設置可能な場所に出店を出して、食べ物を売れないか競技場の運営に確認しておきます」
伊吹と琥珀のやり取りを元に、その他の秘書達がメモ帳に確認が必要な事項をメモしていく。
「それと、アリーナ席は舞台に近い分料金を高めに設定しようか」
「おっ、ついにイブイブも金儲けに目覚めたんか?」
「違う違う、抽選の結果とは言え、舞台から一番近い席と一番遠い席が同じ料金だったら不公平じゃないかと思って」
伊吹は観客自らアリーナ席かスタンド席かを希望させて、納得のいく料金を支払った上で参加出来る仕組みを作るべきだとという考えを示す。
「そしたらアリーナ席でも特別席を用意して、他の五倍の料金設定にしたら?
そこやったら確実に肉眼でイブイブを見れるっていう超特別な体験が出来るっていうのはどや?」
うーん、と考え込む伊吹。マチルダの言いたい事は分かるのだが、どうしても引っ掛かる点がある。
「その場合さ、ドット絵のお面を被ってるのに生も何もない気がしない?
本当に僕かどうか、判断出来ないじゃん」
「いや、そらそやけど……」
テレビで放送される以上、ドット絵のお面は着けている必要がある。伊吹親王殿下とVividColorsの副社長が同一人物なのは公然の秘密なのだが、だからと言って素顔を晒しても良い事にはならない。
いらぬ軋轢やいらぬ対応を迫られる危険を避けるべきだ。
「治、実際に会場に来ている観客には僕の素顔が見えるけど、カメラを通すとドット絵のお面を着けているように見せるようにする事は可能か?」
『テレビ局のカメラの映像を、データセンターのサーバを経由して放送するのならば可能だ』
じゃあ、と言い掛けた伊吹に
「えっと、いっくん。当日はマヤ・イノリ・アルティアン殿下をお招きするから、伊吹親王として来賓席に座ってないとダメなんじゃないかな?」
「おっと、そうだった」
大喜利大会に合わせて国賓として来日する、アルティアン王国第二王女の接待をしなければならない為、伊吹は副社長として参加する事が難しいのだ。
その際、燈子が伊吹親王妃として付き添う予定になっている。
「じゃあカメラを通すと副社長がその場にいるように見えるって演出で。
スタジアム内に元々ある大型ディスプレイ以外に、大喜利大会用に別のディスプレイを複数用意して、伊吹親王と副社長が同席している姿を見せよう」
その程度であれば、今まで生配信で副社長と安藤四兄弟が同時に同じ場所にいるという演出をして来た為、十分に可能な技術となる。
「で、副社長と伊吹親王が会話しているところも見せられる。
どうせなら来賓としてジョーも同席させるか?」
「お館様。国賓はアルティアン王国以外からもお呼びする予定ですし、皇宮や内閣との摺り合わせが必要になりますので、社内で話し合う範疇を越えてしまいます」
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