副社長の生配信:安藤子猫顔寄せ公式大会についてのお願い
『皆さん、こんにちは。
現在上海にて、第一回目の
イリヤの周りにいる子猫達が手を挙げて「はいっ!」と答えている。
『おお、上海の様子は今もなぎなみ動画を通じて見ていますよ。手を挙げてくれてありがとう』
手を挙げていた子猫達が一斉に腰砕けになり、会場内でへたり込む女性が続出する。
「副社長からの反応が貰えるとこうなっていますのですね、これは報告が必要です。
とはいえ、向こうでもこちらからの生配信を通じて確認されているでしょうが」
イリヤは視察団として来ている為、実際に会場内で見聞きした事を事細かくメモ帳に書き込んでいる。
『来週には岡山で開催予定です。会場の様子を見守っている視聴者の皆様も、いつかはどこかの会場で参加して下さるであろうと思っております。
そこで、ご来場の子猫ちゃん達、そしてこれから参加される予定になっている子猫ちゃん達にお願いがあります』
へたり込んでしまった子猫達に対し、スタッフが座ったままでも良いので副社長からのお願いを聞いて下さい、と声を掛けている。
『実は、今回予約を申し込んでくれた子猫ちゃんが想定よりも多かったので、参加者を抽選で選ぶ事になってしまったのはご存じの事と思います。
これに関しては本当に
副社長が小さく頭を下げると、配信画面上の副社長の後ろに、副社長を気遣うコメントが無数に流れる。
『暖かいコメントを頂きまして、ありがとうございます。初めての事なので、皆様にご不便をお掛けして、申し訳ないです。
そして、ご来場の子猫ちゃん達のお願いなのですが、会場を見終わられた方は、その場に留まらずに出口ゲートからご退場願いたいのです。
電子決済用交信指輪にて、今現在会場内に何名の子猫ちゃんがおられるのか把握が出来ます。ご退場された人数の分、新たに入場して頂けるのではないか。私達としては苦肉の策ではありますが、より多くの子猫ちゃん達に大会を楽しんで頂きたいと、そう考えております。
将来的には、予約などせずに全ての来場希望者が入場出来るような運営方法を模索しております。その為の大会運営経験を積む過程でございますので、今後少しずつではありますが、より良い大会運営方法へと変更していきたいと考えております。
ご予約して頂き、正規の手段で入場された子猫ちゃん達には大変心苦しいのですが、ご協力頂ければありがたいです』
そしてまた副社長が小さく頭を下げた為、子猫達が立ち上がって我先に出口ゲートへと殺到しかけたが、スタッフ達は必死で子猫達を押さえる。
「副社長の生配信を最後までご覧下さい!!」
『だからと言って、今すぐ出て行ってほしいと言っている訳ではございません。
ゆっくりと楽しんで頂き、ご満足頂いた子猫ちゃんから出口ゲートへと向かって下さい。
そして、出口ゲートの外にはちょっとしたお楽しみをご用意しております。
名付けて「お宝小箱販売機」です。実物をこちらへ用意しておりますので、実際に私が購入しているところを見て頂きましょう』
副社長が配信スタジオ内を歩き、お宝小箱販売機が並べられている場所へと移動した。今まで映っていなかったが、副社長の右手人差し指にケッコン指輪が嵌められているのを目敏い子猫が発見した。
『おっと、コメントでご指摘があったこの指輪ですが、これは特注のプラチナ製の電子決済用交信指輪になっています。
今のところ発売予定はありませんが、ご要望が多ければ発売を検討します』
会場内でへたり込んでいた子猫達が、欲しい欲しいとディスプレイに向かって叫んでいる。床に座り込んでバタバタし、子供が駄々をこねている格好に見える。
イリヤはプラチナ製だけでなく、十八金やピンクゴールドなどの試作品のケッコン指輪を伊吹から贈られているが、関係者である事がバレると身の危険がある為、今回は
『さて、こちらの機械で電子決済を済ませ、このツマミを掴んで回します。すると、小さな球体の小箱が出てきます。これがお宝小箱です。
これをパカッと開けると、中に
副社長が中から出て来た副社長アクリルスタンドをカメラへ向ける。
お宝小箱販売機には何のキャラクターのグッズが出るのか明記されており、
『それぞれのグッズが出る確率は全て等しく設定されています。なかなか出てこない珍しいグッズがある、という事はありません。
ただ、それぞれ種類がとても多いので、欲しいグッズが出てこなかったり、同じグッズは複数出たりと、子猫ちゃん達が困ってしまう可能性があります。
そこで、お宝小箱販売機の近くに、子猫ちゃん達が集まって交換会が出来る場所を用意しています。この場所はかなり広い会場を用意していますので、子猫ちゃん同士の交流の場にも使って下さい。指輪で決済が出来る飲み物の自動販売機も設置されています』
ここまで大人しく聞いていた子猫達であるが、聡い子猫は床から立ち上がり、会場内でのグッズ購入へと戻る。早くこの会場を抜けて、いち早く出口ゲートの先にあるお宝小箱販売機へと向かうつもりなのだ。
『お宝小箱販売機は一度の販売決済は十回分までとさせて頂きます。十回分ツマミを回し、お宝小箱が十個排出された時点で後ろで待っている子猫ちゃんへ交代して下さい。
ただし、購入を待つ列には何度並んでもらっても良いものとします。一回分は全て五百円です。公式グッズと違い、こちらは現地でしか購入する事が出来ません。
なお、今後開催予定の全ての大会で同じものをお宝小箱販売機に詰める予定です』
この時点で、多くの子猫達が立ち上がって会場内を早足で回り始めた。早くお宝小箱販売機に辿り着けば、その分より多くツマミを回す事が出来る。
『そしてこのお宝小箱販売機が設置される場所については、大会会場の出口ゲートから抜けた後でしか行けない場所になっています。
ですので、今会場にいる子猫ちゃん達、お買い物が済んだらツマミを回しに来てね』
「これは本会場がお宝小箱販売機のある会場になりそうな勢いですね」
イリヤが会場内を見ながら苦笑を浮かべた。
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