緊急記者会見:報道されているAlphadealとの関係悪化について
「時間になりました。
緊急生配信、及び記者会見を始めさせて頂きます。
私は
マスコミの皆様、本日は突然のお願いにも関わらずお集り頂きましてありがとうございます。
また、『なぎなみ動画』にて生配信を見て下さっている視聴者の皆様も、ありがとうございます。
本日は内容が内容だけに、配信画面上ではコメントを非表示とさせて頂いておりますが、コメント自体は出来ますのでご了承下さい。
また、この生配信の内容は生配信終了後であればテレビ・ラジオ等で使って頂いて結構です」
記者会見の会場として選ばれたのは、
大会議室でも良かったのだが、伊吹の侍女である
テレビ局のカメラも数十台入っているが、生中継については許可していない。GoolGoalがスポンサーとして付いている報道番組もあるので、記者会見中にスタジオで擁護させない為である。
会見用に設置された長机に藍子が座り、隣にメアリーが、その反対隣には
「さて、本日弊社本社ビルにて
面会自体は先方が望まれた事でして、私どもは要件については伺っておりませんでした。
面会開始時からGoolGoal社長であるトランス氏は私と弊社副社長を睨みつけ、とても友好的な態度とは言えませんでした」
複数のフラッシュが光り、カメラマンがシャッターを切る音と、記者がパソコンのキーボードを叩く音が鳴り響く。
「トランス氏の問題行動はそれだけではありません。
我々はそのようなつもりは全くなく、何が攻撃に当たるのかを確認すると、YourTunesへアクセスが集中して負荷が掛かるよう準備していたのは明らかであると言われました。
なおかつ、YourTunesがサーバの強化を発表した途端に別サービスである『なぎなみ動画』のサービス提供を開始したと指摘し、これらは計画的なYourTunesへの攻撃であると断定してきたのです。
今すぐ嫌がらせを止めないとアカウントを停止すると激昂し、手を付けられなかった為に、やむなく該当の百二十曲とアバター披露宴の動画を非公開にしました。
その際、突然動画が見られなくなる事でチャンネル登録者へご迷惑を掛けてしまうだろうと思い、私が事情説明をしたのがあの
非公開にする作業を進める中、トランス氏はまたも予想だにしない発言をされました。
投稿した事自体がYourTunesおよびGoolGoalへの攻撃であり、必要以上のサーバの補強を迫られたとの事で、謝罪と賠償を求めて来たのです。
私どもの『なぎなみ動画』は全く問題なく稼働を続けています。YourTunesのサーバが落ちたり不安定になったりするのが、YourTunesが用意したサーバが脆弱であり、運用想定が甘かった為であると言わざるを得ません。
YourTunesのサーバが正常に稼働を続けておれば、VividColorsはより多くの収益を受け取れたはずであり、謝罪と賠償を要求するのは私どものはずです。
あくまで試算にはなりますが、この年末年始でVividColorsの収益予想額は四百億円は下回らなかっただろうと考えています」
四百億円という数字はあくまで試算であり、対Alphadeal参謀本部が計算した、実現不可能ではないが言い過ぎ一歩向こう側の金額となる。
一再生で一円の収益として計算し、年末年始の二週間でVividColorsが投稿している動画が一分間で二百万回再生されれば四百億円の収益が発生するという計算だ。
この金額を藍子が読み上げる台本に組み入れた理由は、これから藍子が発言する内容に掛かっている。
「トランス氏が求めた謝罪と賠償について、もちろん私どもは拒否致しました。トランス氏はさらに激昂し、交渉は決裂。皆が止めるのも聞かず、応接室から出て行かれました。
Alphadeal最高経営責任者である男性はトランス氏の非礼を詫び、新たな動画配信サービスについて、YourTunesのライバルと認めると発言をされました。ライバルのいないサービスは先細りするもので、これからはお互いに競い、技術を高め合って行きたいという考えを披露されました。
男性の発言はここまでは良かったのですが……」
ふぅ、と小さく息を吐き、藍子は用意されていた水を口に含む。事前に質疑応答時間を十分に取るので許可なく発言しないよう通達されている報道陣は、その様子を静かに見守る。
「男性はこう続けました。
AlphadealはVividColorsとの友好関係を築く為、一対一での株式交換を提案する、と。
これは友好関係でも何でもなく、買収の提案です。現在のAlphadealの株価を元に買収金額を計算すると、たった三百八十億円にしかなりません。
先ほど申し上げた通り、我が社は二週間で四百億円の広告収益を受け取るはずだったのに、それを下回る買収金額の提示を受け、私どもは唖然としてしまいました」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます