世界からの反響
「世界中のメディアで話題になってるみたいよ」
アメリカ・イギリス・フランス・ドイツなど、各国の報道機関で
この事に起因して、世界中で上場している
「こんな事なら公表する前に株買っとけば良かったな」
「それこそインサイダー取引でしょ」
藍子は世界中から取材依頼が舞い込んで、その対応に追われている。こちらの承諾なく勝手に動画をテレビで流している番組などもあり、一つ一つに苦情を入れるだけでも膨大な手間が掛かる。
「テレビで報道されればされるほどうちのチャンネルの登録者と再生数は上がってくんだけどね」
すでに
さらにこのタイミングで、YourTunes公式が切り抜き動画や引用元動画の元動画に収益が入る仕組みを実装。爆発的に収益性が上がっている。
その引用元動画の仕組みを利用し、英語やフランス語、ドイツ語などをアフレコした動画が投稿されたり、安藤さん家の四兄弟チャンネル全ての動画に字幕を入れて投稿する専門のチャンネルなどが開設されたりしている。
「まだ一回も収益入って来てないけど、いくらくらい振り込まれるんだろうか」
「全く想像出来ないわ」
「あーちゃん大変そうだし、もう取材は全面的に拒否するし動画を勝手にテレビで流すのも止めてくれっていう動画を投稿しようか」
「そんな方法が!?」
別のパソコンを使って作業していた藍子が叫ぶ。形だけ作ってあった
「じゃあさっそく撮ろっか。アバター越しだと真剣さが伝わらない気がするから、実写にしようと思う。
もう顔出ししても良い気がするんだけど……」
「「ダメ」」
「止めよ?」
「まだ早いんじゃない?」
「じゃあまた喉仏動画? あれ見ててつまんないからなぁ。何かお面でも被って喋る?」
それならいいだろうという四人の判断で、お面を作る事になった。VCスタジオから
「つまり……、お顔をドット絵で表現して紙に印刷し、それを被って動画を撮影されるって事ですか?」
河本は伊吹の名前を知らされておらず、何と呼べば良いか分からないながらも打ち合わせを続ける。
「そう、別に似てなくてもいいんだけどさ……」
話しながら、伊吹は背の低い河本を乃絵流に見立て、妹に頼み事をする兄のように両手を合わせて上目遣いで見る。
「こういうの、
ね? 頼むよ」
河本は目を見開き、雷に打たれたように全身を震わせる。そして伊吹の手を包み込むように握り、答える。
「お任せ下さいまし、お兄様。簡単な作業ですのでお気になさらず。すぐに戻りますのでしばしお待ちになって?」
そう言い残し、上品な所作で足早にオフィスを出て行った。
「乃絵流の魂を憑依させたのかな?」
「お兄さんは降霊術士だったのね」
「……さて、乃絵流が戻って来るまでに何しよっか。喋る内容でも決める?」
三人が喋る文言を考えている間に、河本が印刷したドット絵の似顔絵を手に戻って来た。
「おー、絶妙だね。似てるとも似てないとも言える。さすが乃絵流、頼んで良かった」
得意げな表情の河本の頭を撫でてやる伊吹。藍子に頼んで厚紙を用意してもらい、その似顔絵が印刷された紙をのりで貼り付けた。似顔絵の耳あたりに輪ゴムをホッチキスでとめて、お面にする。
「どう?」
「ちょっと声がくぐもるけど問題ないよ」
「目のところに穴を開けた方が良くない?」
微調整をし、藍子のスマホで撮影する事になった。
「動画をご覧の皆さん、こんにちは。安藤さん家の四兄弟、中の人です。
昨日の生配信で、私と弊社社長が婚約関係にある事を公表致しました。沢山の反響を頂き、ありがたい反面そうでない面もありまして、対応に追われている次第です。
お問い合わせに一つ一つお答えするのが非常に困難ですので、こうして緊急で動画を回しております。
まず一番に申し上げたいのは、私の婚約者は一人ではない事。弊社社長の妹さんとも婚約関係にあります」
「ちょっと、今それ言う必要ある?」
「大事な事なので申し上げました。ちなみにこれ、編集せずそのまま流します」
「げっ、ごほんっ」
「私の婚約者二人は私人であり、個人情報が守られるべき人間です。もちろん私もそうです。当チャンネルに関わる全てのスタッフも同じです。
動画を投稿し、生配信をしているからといって、私的な情報を探ったり、憶測でものを言うのは迷惑です。止めて頂きたい。
また、当チャンネルの動画をそのままテレビで放映したり、画像を雑誌やサイトへ掲載するのも止めて頂きたい。悪質なものについては法的手段を取る可能性があります。
また、テレビや雑誌の取材など、現状一切お受け致しません。一つ一つにお答えするだけでも大変な数になっておりますので、こちらの動画でもってお返事とさせて頂きます。
最後に、当チャンネルの動画を翻訳して投稿して下さっている皆さん、そして動画をご覧になっておられる全ての皆さん。いつもありがとうございます。
これからも皆さんに楽しい時間を過ごして頂けるよう、生配信や動画の投稿を頑張って参ります。出来れば私本来の声のまま楽しんでもらいたいですね。これを機に日本語を学んでみませんか?
皆が楽しい日々を過ごせますよう、心からお祈り申し上げます。
それでは次の生配信でお会いしましょう。またね」
「ね、ちゃんと編集してくれるよね? ね?」
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