【完結】クリスマスをぼっちで過ごすと思われてる俺、実は学級1の美少女と付き合ってます。あと足りないのは自信です。

よこづなパンダ

第1話 クリスマスイブと教室での彼女自慢

 今日は12月24日。

 教室は、いつになくざわついている。


 その理由は、人によって様々だ。

 もうすぐ高1の2学期も終わるということで、近づいてきた冬休みが待ち遠しくてそわそわしている者もいれば、新しく出来た彼女との初めてのクリスマスイブをどう過ごすかを想像しては、興奮している者もいる。


 そしてその後者にあたるのが、クラスの男子の中心となり、俺の隣の席で現在、饒舌に語っている大村 洋丞ようすけだ。

 ちなみに俺・隅永 蒼真そうまは、その男子たちの輪の中には入ることなく、1人ぼんやりと遠くを眺めているだけの存在である。

 しかし運悪く、そんな彼の隣の席だから、聞きたくもない彼の話が今日も耳に入ってきてしまう。



 大村くんは話好きで、みんなの笑いを取ることに長けている。顔はそこそこイケメンにもかかわらず、結構キツめな下ネタ混じりの雑談も得意で、多くの男子たちに人気だ。

 そんな彼だが……実は俺からしてみれば少し、苦手なタイプだった。


 なんというかなあ。彼は、「常に上に立っていたい」タイプなんだよ。

 彼の話は、隣の席にいたら嫌でも耳に入ってきてしまうけど、いつも自分中心で、聞いていてちょっぴりうんざりしてしまうんだよね。

 人のことを馬鹿にして笑いを取ったりもするし、自分の株を上げるためには手段を選ばない。


 口調も強いし、まあいわゆる毒舌キャラってやつなんだけど、そうやって自分のキャラクターを確立するために、他人を見下したレッテルを貼るやり方が、俺はどうも気に食わないのであった。おそらく彼の取り巻きの中には、彼の話が面白いって以外に、『自分がターゲットになりたくないから』周りにいるって奴も多いことだろう。




 正直、あまり詳しくは聞かなかったことにしたいけど、「今晩は唯菜とあんなことやこんなことをやっちゃおうかなあ!」なんてことを大村くんが言えば、「おおーっ!」とか、「ガツンと!」とか、合いの手が入っている。

 それを聞いていると、男子たちの脳内で色々と妄想されてしまっている大村くんの彼女が、少し気の毒に思えてくる。



 ちなみに、大村くんに彼女ができたのは、1ヶ月ほど前。ここ最近の出来事だ。



 原口 唯菜という、肩までの明るい茶髪に大きな目が印象的な、隣のクラスで1番可愛いと言われている女の子。身長は低く、顔も小さくて全体的にコンパクトにまとまっている小動物的な可愛らしさのある子、というのが俺から見た印象である。


 正直、大村くんは原口さんのような子を自分の彼女に選ぶと思っていなくて、その事実を耳にした当初は驚いた。

 なにせ、原口さんと付き合い始める2ヶ月前に、彼は、うちのクラスで1番の美少女である高篠 雫さんに告白していたのだから。


 高篠さんは原口さんとは正反対のタイプで、クールビューティって感じの子。口数が多いわけではなく、友達もいっぱい作るというよりかは気の合う数人を大切にするタイプ。原口さんのような人懐っこさはなく、決して、自分から積極的に人に話しかけていくような性格ではない。


 だから俺は、思わず大村くんに対して『玉砕したからって、たった2ヶ月で女の子の好みがそんなに変わるかよ!』って、心の中でツッコミをしてしまったのだった。



 ……まあ今ならわかるよ。

 大村くんは、可愛い子なら誰でも良かったんだって。

 隣にいる子のが高ければ、自分自身の株が上がる、とでも考えていたのだろう。




 大村くんが玉砕したあの日以来、高篠さんはクラスにおいて冷酷なキャラクターというレッテルを貼られている。氷のなんちゃらみたいな?

 彼女のことをそんな風に仕立て上げたのは、間違いなく大村くんだ。きっと、彼女に全く相手にされず、悔しかったことによる腹いせだろう。


 高篠さんは、実際に話してみれば全然そんな人ではないし、さり気ない気遣いができるってだけで愛想がないわけじゃないし、むしろ優しいし、笑った顔なんかは最高に可愛いのに。

 できることなら、大村くんに勝手に創造されたキャラクター像なんて、破壊してやりたい。


 けれど……



 俺はそんな立場を持ち合わせていないから、無力で。

 高篠さんの何の助けにもなれていない。




 俺は、なんて情けない『彼氏』なんだろう。

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