第30話 金森家の今夜は……?
「ふふっ、こんにちは。あなたが噂の如月くん?あらあら、いずみ~、結構カッコイイ子じゃない。ホントにあなたの描いてるあの絵の男の子にそっくりなのね。パパ~!噂の如月くんが来てるわよ~!」
状況から察するに、どうやらこの人は金森のお母さんらしい。突然現れたその女性はやはり親子だけあって、どことなく金森に似ていた。……若い。
「おお?君が如月くんか!? いやー噂は娘から聞いてるよ。よく来てくれたね!いらっしゃい如月くん!」
そしてどこから現れたのか、人の良さそうな丸顔の男性が金森パパだろう。
「……こ、こんにちは、初めまして如月ユウです。いずみさんには、いつもお世話になってます」
ユウがペコリと頭を下げると、二人がニヤニヤしながら近付いてきた。二人共、長靴を履いている姿から、どうやら庭の手入れの最中だったみたいだ。
「あら~礼儀正しい子ね。いつも娘から話を聞いているから、初めましてって気が全然しないけどね。こちらこそ、いずみがいつもお世話になってます~」
…いつもどんな話を聞いているのか気になったが、聞かないことにしよう。
「さあ、さあ。こんなところで立ち話もなんだし、上がってってよ如月くん。ちょうど昼飯の時間だし、一緒に食べようよ」
そして背中を押して家へと招こうとする金森パパにユウが戸惑っていると、ついに彼女の怒りに火が付いたようだ。
「ちょっと、いい加減にしてよ二人とも!今日は紅葉ちゃんと青葉ちゃんに呼ばれてるんだから、無理だよ!如月くん困ってるじゃない!」
「おお、そうだったな。う~ん…残念!なあ、ママ」
「…本当ね。ねえ如月くん、今度、絶対遊びに来てね。絶対ね!」
「は、はい。せっかく誘ってくれたのに、すみません。今度、改めてお邪魔します」
「ふふっ約束だからね。……だけどいずみ~、いいの? だってほら紅葉ちゃんも青葉ちゃんも美人さんじゃない?だからお母さん心配…… とられちゃうかも?」
「おお……!お、お母さん!!お願いだから、もうやめて!」
しかし悪戯な笑顔でからかってくる母に、娘は顔を真っ赤にして悲鳴を上げるしか手立てがないようだった。
「……まったくもう!信じられない二人とも!」
まだ彼女は顔を赤くしてる。チラリと後ろを振り返ると、金森パパとママは首に掛けていたタオルを右手に持ち替えて、大きく振りながらユウ達を見送っていた。
「はは…優しそうなお父さんと美人なお母さんだよな。二人ともまだ見送ってくれてるけど?」
そう声を掛けると後ろを振り返った彼女は、顔をさらに真っ赤にして下を向きながらプルプルと震えだした。……どうやら今夜の金森家では、ひと悶着ありそうだ。
そんな金森家から徒歩一分。一角曲がると、そこには大きな寺院があった。その立派な門には『輝命寺』とある。
「ここだよ」
そして、そのお寺に指をさす金森いずみ。
「え?」
「ここが紅葉ちゃんと青葉ちゃんのお家なの」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます