05-07

 なぜなら、捕えられる数日前に、エリザは私をベレムと呼ばれる古代の遺跡に隠したからだ。いずれまた会いましょう――彼女はそう言って笑みを見せた。それは私が今までに見たことがない、そして恐らくなんぴとにも見せたことのない、雅致がちにして蠱惑こわく的な微笑だった。彼女は抵抗することもできたはずだ。だが、教会の者たちが何かの罠があるのではないかといぶかしむほど、エリザはおとなしく捕まった。おそらく彼女は裁判もそこそこに処刑されるだろう。エリザも当然そんなことは承知しているはずだった。だが、彼女はあっさりと捕縛されることを選んだのだ。

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