第3話 美少女の尋問

教室の椅子に座り、普通に朝のホームルームを受けた俺はクラス中の生徒から質問攻めを受けていた。


「イブ君ってどこの出身なのー?」

「イブ君の瞳って色違うけど何でなの?」

「どこから編入してきたの?」


 などなど。何で人ってこんなに質問が好きなんだろうね。


 とか呑気なことを考えていると……


「ちょっといい?」


 ほらきた。今日の朝廊下で出会い、ちょこっと魔法を見せてしまった気の強そうな美少女 アリア だ。


 彼女からの質問攻めが1番怖い…

 しかし、今の俺にはこれだけの盾、俺に質問したい子は沢山いる流石に譲ったりは…



「じゃあまたねイブ君」

「また話そうねー」


 ええ、なぜかみんないなくなったんだけど。何!アリアはそんなに怖いのか!


「ほら、ちょっとこっちきなさい」


 流石に断るのもかえって怪しいだろうから渋々了承し席を立つ。


 相変わらずの長い廊下を2人で歩く、休み時間ということもあり、すれ違う生徒達の視線を感じる。


「どこまで行くんだよ」


 耐えきれず口を開く


「人がいなければどこでもいいのよ」

「なんだよ、カツアゲでもすんのか?俺そんなに手持ちが多い方じゃないんだけど」


 ……。


 無言は傷つくなおい。

 



 しばらく歩くと、目の前に螺旋階段が見えてきた。

 おっなかなか立派なもんだ2重螺旋階段っていうんだっけ。


 アリアは呑気に見上げていた俺の襟を引っ張り螺旋階段の裏のスペースに押しつける。アリアは制服である黒いポンチョの袖から可愛らしい手を突き出しそのまま壁へと押し当てる。


 ピリッ


 まじかよ。この子いきなり干渉魔法使ってきやがった。

 本音語りの魔法だろうけど……

 そんなに怪しいかな俺って。


「ちっやっぱり効かないのね」

「こんなセンサーだらけの校内でよくやるね君」

「このくらい平気よ。で、あんたいったい何者なのかしら?」

「しつこいな、ただの編入生だよ」

「ふーーん。貴方の固有魔法は?」


 まあここで、無いと答えればいい様な気がする。常駐魔法がどんなに洗練されてたとしても、固有魔法がないんじゃ付加魔法も付与できないし、対魔法使い戦においては絶望的なのだ。そうなれば3つ星でも納得だろう。しかし……


「雷だよ」


 ここは正直に言おう。この学園内で問題が起きた時に、固有魔法を使わなければいけない事態が起きるかもしれない。その時を彼女に見られたらまた嘘つきの称号を獲得するだろう。


「雷ねぇ……」

「ア、アリアの固有魔法は?」

「何で、あんたに教えなきゃいけないのよ」

「なんか理不尽じゃね……」

「ま、いいわ。幸い同じクラスだし、焦る事はないしね」

「同じクラスって言っても2年のうちは護身魔法や感知魔法あとはおまじない程度の魔法しか学ばないだろ?」

「2年生にも課外授業はあるのよ。運よ…じゃなくて悪く魔獣に会うかもしれないでしょ」

「一瞬恐ろしいことを口にしたよ君は」


 そのまま俺は続ける。


「ていうか何でそこまで気になるんだよ。別に俺が何者でも君には関係ないだろ。スパイか何か疑ってんのか? この学校の情報収集能力甘くみすぎだぞ」

「そういうわけじゃないけど……あんたからはなんか不思議な感じがする…瞳も何で左右で色が違うのよ! あんまり見たことないんだけど」

「う、生まれつきだよ」

「ふーーーん。」


 するとアリアは振り返り教室へと歩みを進める。言われっぱなしも癪なので少しばかりこちらも言い返す。


「そんな横暴な態度だとまたクラスメイトから怖がられるぞ」


 アリアの動きが止まる。

 こちらに向き直り


「私が怖がられるのはしょうがないのよ」

「何だ自覚あるのか」

 

 アリアは一瞬何かを言おうと口がモゴモゴと動いたが、何も言わない。

 少しして再度口を開ける。


「私5つ星だから」

「ぶっっっ」


 思わず吹き出してしまった。

 まじかよ、まだ2年で5つ星って天才中の天才じゃね。


 と、いうのも戦時中と比べて今は魔法使い育成の在り方についてかなり変わっている。俺が軍学校に入学した時は3ヶ月目で特殊作戦軍教育、終わってすぐに暗部特殊技能教育に行かされた。その教育は二つとも訓練中に中級魔獣、運が悪ければ上級魔獣と遭遇することがあるため訓練中の死亡事故は多々起きていた。それだけスパルタだったのだ。

 そんな環境に置かれると、魔法力強化のため、訓練の合間を縫っては勉強。睡眠なんて2の次だ。


 しかしアリアは違う。ちゃんとした睡眠時間、適度な勉強時間、適度な訓練 たったそれだけで5つ星まで上り詰めている。まじもんの化け物なのだ。  


でも5つ星というだけでそんなに怖がられるか?


「あ」


 気づくとアリアは姿を消していた。


「早すぎる。絶対魔法使っただろ」


 俺も急いで教室に戻る。

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