第97話

新型の採掘機は恐ろしい速さで完成した。

技術者達は満足そうな顔をしている。

新しい技術を試せるのが楽しくて仕方ないのだろう。

「早速投入ですね」

「データを収集したいので我々も同行します」

「わかりました。手配しておきます」

アカネはまだ宇宙生物の死骸の回収から戻ってきていない。

俊は休暇中であるフィーネに連絡を取った。

「フィーネ。悪いんだけど、採掘に技術者達を連れて行ってくれないかな?」

「いいよ~。どうせ改装中は暇だからね」

「ごめんね」

フィーネが快く引き受けてくれて助かった。

これで、面倒な技術者達から解放される。



ドックを離れて行政区画に向かった。

行政区画では父であるカールが書類を睨めっこをしている。

「父さん。お待たせ」

「時間がかかったね?」

「技術者達に捕まってね」

「あぁ・・・。まぁ、悪い子達じゃないから勘弁してね」

技術者達は父であるカールと仲良しである。

部下と上司というよりは研究仲間に近いのだと最近、気がついた。

「報告書はまとめておいたから目を通しておいてね」

「了解」

俊は報告書に目を通す。

メインは惑星雪風関連だ。

大気の生成などは順調。

これなら後、数か月もすれば人が住める環境になるだろう。

後は住民が暮らす予定の建物関係。

こちらも問題なく建築が進んでいる。

「特に問題なさそうだね」

「そうだね。そろそろ、第2の移民の承認と生物関係を取り寄せようと思うんだけど、どう思う?」

「生物関係も取り寄せるの?」

「生態系は作っておいた方が色々楽だよ。人間だけで生活しているとどうしても調整が必要になってくるからね」

「なるほど・・・」

これは実際に惑星を開発した父であるカールの経験談なのだろう。

「取り寄せられる生物のリストを作っておいたから選んでくれるとうれしいな」

そう言って端末にデータを送ってくる。

結構な量のデータが送られてきた。

海関連ではプランクトンをはじめに海藻から小魚や大型魚。

陸では植物のデータから草食動物に肉食動物まで実に様々だ。

生態系を考えて選ぶ必要があるようだ。

俊はない頭をフル稼働させて、何とか選定を終えた。

それを父であるカールに見てもらう。

「うんうん。よく考えているね。けど、完ぺきではないかな」

そう言って修正したデータを送ってくる。

「なるほど・・・。父さんがいてくれて助かったよ」

「これも、貴族だと基礎として幼少期に叩き込まれる分野だからね。俊はよくやっているよ」

父であるカールはよく褒める人だ。

思春期である今は少し照れ臭い。

「ありがとう」

そう伝えるのが精いっぱいだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る