第94話

ステーションのドックが完成した。

大型艦を造れるこのドックを遊ばせておくのはもったいない。

今なら、父であるカールが連れてきた優秀な人材の手を借りることもできる。

考えていてもいい案が浮かばなかった俊は技術者を招集して会議を開いた。

「皆さん。集まって頂きありがとうございます」

「いえいえ。それでお話とは?」

「ステーションのドックを遊ばせておくのももったいないので何を造るべきかご意見をいただきたくて・・・」

「なるほどなるほど。我々としてもありがたい話です」

基本的に上から指示を出されて艦を造ることはあっても自由に造れる機会というのは少ない。

「試してみたい技術がいくつかあります」

「私もです」

技術者達は次々にやりたいことあげていく。

俊は話についていけず頷くだけであった。

しばらくして話がまとまったようだ。

「造るのは戦艦でよろしいですか?」

「僕としては構わいないけれど・・・」

「それではデータを確認してください」

概要をまとめたデータが端末に送られてくる。

俊はそれを確認する。

電子戦装備に試作型シールド発生装置。

動力はブラックホールエンジン。

推進機関もそれに合わせて試作をいくつか造る予定のようだ。

主砲も何やらおかしい。

惑星を一撃で破壊できる威力とか何に使うんだよ。

それ以外にも副砲に近接防御用のレーザー兵器。

後はミサイル発射管も装備されている。

「本当にこれを造るんですか?」

「ロマンです」

全員目がキラキラしていらっしゃる。

「ええっと・・・。わかりました。許可します」

そう言うと技術者達は一斉に立ち上がり頭を下げてくる。

「ありがとうございます。最高の戦艦を造りあげてみせます」

そう言うと技術者一同は部屋を駆け出していく。

部屋を出ると父であるカールがいた。

「何かあったのかい?皆、ウキウキしていたけど・・・」

「ステーションのドックで戦艦を造ることになりまして・・・」

「それだけであんなテンションになるかな?」

「色々試したい技術を詰め込むつもりみたいだね」

「あぁ・・・。なるほど。彼等は腕は確かだけど趣味人だからね」

「父さんがそれをいう?」

部下が部下なら、上司も上司である。

「役に立っているからいいだろう?」

「確かにそうなんだけどね・・・」

明石は完全に父であるカールの趣味である。

その明石に助けられている現状、文句も言えない。

「それはそうと。そろそろ地上の建築物を造ろうと思うんだけど」

「ステーションの方はいいの?」

「後は人力でもなんとかなりそうだからね」

俊はステーションの情報に目を通して問題がないことを確認して地上の建築物に着手する承認を出した。

惑星の調整はまだ終わっていないが箱を準備しはじめてもいいだろう。

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