第90話

「そうだ。私と模擬戦しましょう」

「いいけど・・・。相手になるかな?」

アカネは艦隊運用がうまい。

シミュレーターの評価も90点台後半を叩き出してくる。

アカネが近づいてきて俊のおでこをピンと指で弾いてくる。

「痛っ・・・」

「そんなんでどうするのよ?そんなんじゃ、一生お留守番よ」

「それはそうだけど・・・」

「いいからやるの!」

そう言ってアカネはシートに座った。

アカネはすぐにシミュレーターの設定を弄りだす。

しばらくすると目の前にスクリーンが表示された。

戦力は互角の状態だ。

戦艦1艦に重巡洋艦5艦。

軽巡洋艦10艦に駆逐艦が50艦。

俊は駆逐艦を平等に配置し補佐に軽巡洋艦を組みこむ。

それに対してアカネは重巡洋艦を先頭にその周りを軽巡洋艦が囲み駆逐艦がそれに続く。

戦艦は流石に最後尾に位置しているが攻撃的な意図があるのは確実だ。

俊は迷わず、ミサイルで攻撃をする。

アカネの指揮する重巡洋艦が主砲でミサイルを打ち落とし、そのまま突っこんでくる。

いくつかは重巡洋艦にミサイルが当たったが速力を奪うまでには至っていない。

アカネの指揮する重巡洋艦は俊の敷いた防御を食い破り内部まで入り込んできた。

俊もすぐに対応しようとするがそれよりも早くアカネの指揮する軽巡洋艦からミサイルが発射される。

数が少なかったので駆逐艦の対宙砲火で撃ち落とせたがそれで終わりではなかった。

少し遅れてアカネの指揮する駆逐艦が俊の指揮する艦の穴を広げるように突撃してくる。

そして内側からミサイルを全力で撃ってきた。

流石にこれは防ぎきれず俊の指揮する駆逐艦と軽巡洋艦に被害が出る。

俊は支援の為に重巡洋艦を向かわせるが味方艦を巻き込むことを恐れて主砲を撃つことができなかった。

アカネ側にも被害が出ているが戦力差はどんどん開いていく。

このままではジリ貧だ。

俊は指揮する駆逐艦と軽巡洋艦を思い切って散開させる。

アカネの指揮する艦は集まっているので重巡洋艦と戦艦の主砲で狙い撃つ。

重巡洋艦を3艦沈めることに成功した。

だが、調子がよかったのはそこまでだ。

アカネの指揮する艦の物量に押し負け俊は敗北した。

「お疲れ様」

「お疲れ様」

「射線を通そうとしたのはいいけど、その後の指示が問題ね」

「うぐ・・・。自分でもそう思う」

散開させた後、有効に使えればまた違ったのだろうがアカネはそれを許さない猛攻をしかけてきた。

散開させた駆逐艦と軽巡洋艦は完全に遊兵になってしまった。

大いに反省すべきだろう。

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