第66話

パトロール部隊が救命ポットを回収して戻ってきた。

完成したばかりの病院船に救命ポッドが運び込まれる。

「あっ。俊さんも来たんだ」

「シオン。お疲れ様。どんな感じ?」

「今、調べてるところ・・・。あっ。データきたね。問題なさそう」

シオンがそう言うとプシュッと音をたてながら救命ポッドが開く。

中の人は眠っているようだ。

見た目は若い少女だ。

人との違いは耳が長いことだろうか。

救命ポッドはいつ助けが来るかわららない為、生命維持にその能力を全振りしている。

その為、仮死状態に近い状態になるらしい。

「気付け薬を打ちますね」

そう言って新たに作られた医療チームの所属の子が首筋に注射を打つ。

しばらく待っていると、救命ポッドに入っていた少女が目を覚ます。

「うっ・・・。ここは・・・?」

「目を覚ましてよかった。ご自分のことはわかりますか?」

「エルフィンド・アピス。冒険者よ」

「少し待ってね」

俊は端末に名前を入れて冒険者組合に通信して照会してもらう。

結果はすぐに出た。

エルフィンドはA級の冒険者だった。

「身元の確認がとれました」

「それで、ここはどこなの?」

「僕の所有する病院船の中です。理由はわかりませんが、救命ポッドを回収して処置をさせてもらいました」

「そう・・・。思い出したわ。私、宇宙海賊と戦って負けたのね」

「ちなみにその相手は、賞金首のジョーンズではないですか?」

「その通りよ・・・。無様よね。絶対に討ち取ってやるって挑んで負けるなんて・・・」

「そんなことはないですよ。貴方のおかげで、ジョーンズが潜んでいそうな場所が絞り込めましたから」

宇宙海賊ジョーンズは型落ちとはいえ戦艦を持っている。

手下も型落ちの軍艦で揃えている。

優秀な索敵艦も持っているようで、俊達のパトロール艦をかわしてきた。

だが今は宇宙生物のいる星域を調査していた、索敵艦も戻ってきており、潜んでいそうなポイントの調査をしている。

見つけるのは時間の問題だろう。

そこにアカネから通信が入る。

「俊さん。宇宙海賊を発見しました」

「了解。すぐに戦力を派遣するよ」

俊は出せる戦力の全てを宇宙海賊ジョーンズに差し向けた。

明石の護衛が一時的に薄くなるリスクはあるが、確実に仕留めるべきだ。

俊としては前線に出たいのだが、危険だからと楓とハルカを筆頭に従業員から止められた。

明石の指令室から状況を見守る為に移動しようとするとエルフィンドもついてきた。

問題ないだろうと判断してそのまま明石に帰還した。

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