第16話 西都州 龍将
西永についた明蘭を見ていたら、職業斡旋所で出会ったやんちゃそうな少年に建物に連れ込まれてしまった。
すぐに助けるべきか、子の成長のためすぐに手を出さない方がいいのか。
香蘭には竜王の力で安易に人の営みに介入するなとよく注意された。特に子育ての時には子供が転ぶ前に手を出すなと口が酸っぱくなるほど言われた。
北寧での大怪我も普通の人間ならばおそらく致命傷となったレベルだが、龍聖ゆえか治りも早かった。多少の怪我は大丈夫だろうし、もう少し様子をみるか。そう思って外から様子を見ることにした。
その後西都州知事の屋敷に移動し、また厄介ごとに巻き込まれていた。
先ほどの少年に続いて馬で屋敷から出て行ったかと思えば、大火事の台関地区に突っ込んで行った。
台関の火事は西都州知事による人為的なものだし、油でもまいたのか火の勢いが強かった。
これは少しくらいの手助けしてもいいだろうと思い、雨雲を呼び寄せ台関に雨を降らせ火事を収めた。
鎮火後、明蘭が少年を背負って建物から出てきた。二人ともすすで真っ黒だった。
結果、少年の妹は火事で焼死し、残された少年と一緒に旅をすることになったようだ。
娘のように思っていた明蘭が年頃の少年と旅をするようになり、初めは変な虫がついたとモヤモヤしていた。しかし少年は明蘭を亡くなった妹の代わりのように思っているようで親切に世話を焼いてくれていて、程なくいい旅の仲間が出来たと安心して見守ることができた。
彼女たちが洛済に着いた時、意外な昔馴染みが現れた。
夜、明蘭たちが寝静まった頃に龍将は彼の元を訪れた。
「
龍将は今は小さい鳥の姿をしている昔馴染みに声をかけた。
鳳泉とは那雉が小鳥の姿になる前の名前である。
「明翔に頼まれたんだよ。行方不明になった娘を探して欲しいって。死ぬ前に一目娘が見たいって泣きつかれたから仕方なくてさ。なんだよ龍将が先に見つけてたんだったら、わざわざ俺が竜安から出向かなくても良かったじゃん。なんですぐに皇宮に連れてこないんだ?」
明翔たちが聞いたら驚くであろう神鳥とは思えないガラの悪い口調で那雉が答えた。もちろん今は明翔との共鳴は切ってある。
「本人が自分の足で竜安へ行くって決めたから見守ってるんだ。危険そうな時だけ手助けしている。俺もずっとついているわけじゃないし、お前も神鳥のふりをして見守っていてくれ。」
「ずいぶんこの娘に入れ込んでるんだな。」
「まあな。寿峰に頼まれたし、真蘭によく似ていて娘みたいなものだ。」
「ふーん。まあいい子だし、清浄な霊気をまとっていて一緒にいても心地よいしな。皇宮もそろそろ飽きてきたし俺も旅を楽しむよ。」
「じゃあ、任せたぞ。」
そう言うと龍将はその場を去って行き、那雉は明蘭の枕元に戻って行った。
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