第10話 北都州 龍将
寿峰を弔った後、龍将は明蘭の居場所を探った。一度会っているし、わずかとはいえ竜珠を身に宿しているため見つけるのは容易だった。
北寧の東端の方の村の辺りに来た時、崖の上で明蘭を見つけた。
見つけたと思った瞬間、崖から転落してきて慌てて落下の途中で受け止めた。見ると胸と腹に刀傷を負っている。
数日目を離しただけで、なぜこんなことになっているのだ。
霊力を注いで傷の表を塞いでとりあえず止血し、ゆっくり寝かせられるところを探した。
近くに朽ちかけたあばら家を見つけたので、そこに彼女を寝かせて雨風がしのげるように簡単に補修した。
以前住んでいた住人の持ち物がまだ中に残っていた。それを見て龍将はもうしばらく竜王であることを伏せて彼女と接することを決めた。今まで人と交わる時、竜王と知られると畏怖の目で見られ親交を深めることが難しいことが多かったのだ。
素の彼女と触れ合いたいと思った。
寝かせた明蘭の身体はほのかに金色に光りながら、傷の修復と同時に髪は伸び身体は成長していった。
寿峰も普通の人間より病気にかかりにくく、傷の治りも早いと言っていたが身体の変化のことは聞いたことはなかった。
身体がまだ幼体だからなのか、それとも・・・。この子供は、皇都に残った弟達の血筋と天竜村に定住した真蘭の血筋がかけ合わさった初めての子供だ。しかも龍聖で竜珠も宿している。
それがどう作用するのかは龍将にもわからないし、予測不能であることに逆に興味が引かれた。
目覚めた明蘭は自身の身体の変化に戸惑いながらも、わりとすぐにそれを受け入れているようだった。龍将が老婆を装い接すると、老人に対し親切で非常に礼儀正しかった。
さすが堅物の寿峰が育てただけあるなと思ったし、その態度は好ましかった。
龍将が皇都まで連れて行ってやることは容易かったが、それでは面白くないと思ったから明蘭が旅立ちやすくなるように少し背中を押してやるとやる気になってくれた。
素直な性格も好ましかったし、頑張ろうとしている姿も純粋に可愛いと思った。
そして仙月の元を元気よく去って行く明蘭を見送った。
寿峰が孫娘のようだと言っていたが、龍将もこの時はまだどちらかというと子や孫を見守るような気持だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます