第2話 宇宙はオレを選んでくれなかったんだな

 子どもの頃のオレは、本気で宇宙飛行士になろうと思っていた。本気でなれると信じていた。


 ただ憧れていただけじゃない。


 片っ端から宇宙関連の文献は読み漁ったし、体力や精神力を鍛えるための訓練も欠かさなかった。

 中学、そして高校に入ってもその熱が冷めることはなかった。部活もやらずに宇宙関連の学外サークルに参加し、人脈を広げ知識を蓄えていった。でもオレくらいのヤツはいっぱいいて、むしろもっと情熱や専門知識を身につけたヤツもいて、その度に打ちのめされる日々だった。


 調子に乗ったり挫折したりを繰り返しながら、中高生時代を過ごしたオレは、国立宇宙大学の理学部・天文学科を受験した。


 だが見事に落ちた。

 二次試験まではパスしたのに、最後の面接で落とされてしまった。


「あんたいつも言ってたじゃないの。『現役で合格できる人間なんてほんの一握りだ』って。来年は合格できると良いわね。応援してるわよ」


 母さんから慰めの言葉とともに、隣に住む幼馴染のミノリが国立宇宙大学に合格したことを聞かされた。



 それを聞いて、オレの心は完全に折れた。



 ――ああ、宇宙はオレを選んでくれなかったんだな。


 そう思った。




 中学に上がってからというもの、隣に住むミノリとは、すっかり疎遠になっていた。顔もあまりよく思い出せないな。小学生の時にはいつも一緒に遊んでいたのに。でもまあ、男女の幼馴染なんてそんなもんだ。


 オレと同じ国立宇宙大学を受けていたなんて……全然知らなかった。


 ミノリが国立宇宙大学に現役合格で、オレは浪人か……。



 ああ、やっぱりオレじゃなかったんだな。




 オレは浪人することなく、すべり止めで受験した大学に入学することにした。高校の担任に無理やり受けさせられた私立の工学部。ロボット工学科。4年やったら宇宙関連企業にも就職できる目があるってさ。でも、宇宙飛行士になれないんじゃ意味ないよな。正直まったく興味を持てなかった。


 結局、適当にその大学で4年間を過ごし、宇宙とは全く縁もゆかりもない適当な食品メーカーに就職して、もうすぐ4年が経過しようとしていた。


 オレはこれからもこうして適当に過ごして大人になり、年を取って死んでいく。それだけの人生なのだろう。


 そう思っていた。

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