第33話 ついに動き出したか~ディーノ視点~
次に目を覚ました時は、既に日が沈んだ後だった。
あれ?あんなに辛かったからだが、すっかり楽になったぞ。それに頭痛も治まった。
「殿下、目が覚められたのですね。随分顔色も良いようですが、ご気分はいかがですか?」
「体も熱くないし、頭痛も治まったよ。どうやら治った様だ」
「そんな訳は…でも、元気そうですね。すぐに医者をお呼びいたしますので、少々お待ちください」
医者に診察してもらった結果、すっかり良くなっているとの事。医者もかなり驚いていた。
「もしかして、ヴィクトリア様の持ってきたあの得体のしれない薬が効いたのかもしれませんね…」
ポツリと呟いた執事。確かにあの薬を飲んでからすっかり良くなった。こんな特効薬があるだなんて…一体ヴィクトリアは何を飲ませたのだろう。
医師も興味津々で、明日ヴィクトリアに詳しく話しを聞くと言う事で話がまとまった。
「殿下、本当にヴィクトリア様には驚かされるばかりです。まさか殿下の病気を治してしまわれるだなんて。影の話では、ヴィクトリア様は丘に向かい、何やら薬草を必死に探されていた様ですよ」
「そうか…僕の為にヴィクトリアは、薬草を自ら探してくれたのだね。本当にあの子は…今すぐヴィクトリアに会いたい。急いで湯あみをしてヴィクトリアに会いに行こう」
「お待ちください、殿下。今は多分ご夕食のお時間でしょう。ご夕食後会いに行かれたらどうですか?」
そうか、今は夕食の時間か。そうだな、そうしよう。
湯あみを行い、軽く食事を済ませる。さて、そろそろ夕食が終わった頃だな。ヴィクトリアの部屋に向かおうとした時だった。
「ディーノ、ヴィクトリアちゃんのお薬のお陰で元気になったのですってね。よかったわ。いえ、よくはないわね…」
僕の元を訪ねてきたのは、母上だ。
「母上がこの時間にわざわざ僕の元を訪ねてくるだなんて、何かあったのですよね?一体何があったのですか?」
「さすがディーノね。実は今日の夕食の時、物凄い勢いで食事をしていたヴィクトリアちゃんが、スープを口に含もうとした瞬間、スプーンを置いたのよ。結局スープは飲まずに、それ以外の食事は全て平らげたのだけれど、なんだか気になってね。それでヴィクトリアちゃんのスープを調べたら、毒が入れられていたのよ」
「何だって!一体どういうことですか?それで毒の種類は?」
「テリオの毒よ。ヴィクトリアちゃん、よく毒に気が付いてくれたわ。本当にあの子の能力は、私達の想像をはるかに超えているわね」
母上が感心している。確かにテリオの毒はかすかに香りがするくらいで、まず気が付く事はない。その上症状も出ないため、本当に厄介な毒なのだ。そんな毒に気が付くだなんて、本当にヴィクトリアは何者なのだろう…て、そんな事はどうでもいい。
「母上、本当にヴィクトリアはスープを飲んでいないのですか?他の食事にももしかしたら毒が入っていたかもしれませんので、すぐに解毒剤を飲ませてきます。それから、すぐにシーディス侯爵に連絡を…いや、万が一毒を盛られた事を知った侯爵が、ヴィクトリアのお妃候補を辞退してくるかもしれないな…」
シーディス侯爵はああ見えて娘を大切にしている。もしヴィクトリアにテリオの毒が使われたと知ったら、また辞退を申し出てくるかもしれない。
「どうやらすぐにメイドがシーディス侯爵に知らせた様で、明日面会したいと申し出が来ているわ。それから料理人たちに尋問を行うとともに、調理場に仕掛けてある映像を分析した結果、実行犯は分かったのだけれど…」
「既に始末されていた…ですよね」
きっと犯人は、フィドーズ公爵とマーリン嬢だろう。多分ヴィクトリアがスープに手を付けなかった事を知って、作戦は失敗と判断。すぐに実行犯を抹殺したと考えるのが普通だ。随分と仕事が早いな。
「とにかく、ヴィクトリアちゃんの安全を最優先しましょう。と言っても、あの子の能力の高さは尋常ではないみたいね…」
本当にヴィクトリアの能力は底抜けだ。一体どれほどの知識と教養を持っているのだろう。本当に彼女には驚かされる事ばかりだな。
「ディーノもすっかりヴィクトリアちゃんの虜ね。ディーノ、これは解毒剤入りのジュースよ。これをヴィクトリアちゃんに飲ませて来なさい」
母上が渡してくれたのは、ちょっと見た目が良くないジュースだ。
「分かりました、すぐに飲ませてきます。ただ、ヴィクトリアの事だから、もしかしたらこのジュースに解毒作用がある薬が入っていると気が付くかもしれませんね」
「もしかしたらではなく、確実に気が付くでしょうね。でも、たとえ気が付かれたとしても、彼女の命が最優先よ。そうでしょう?ディーノ」
「もちろんです、それでは僕はこのジュースをヴィクトリアに飲ませてきます」
急いでヴィクトリアの元に向かい、ジュースを飲ませた。よし、これでヴィクトリアの方は大丈夫だ。
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