第24話 全てバレていた様です
「殿下、勝手に人の部屋に入らないで下さい」
本当に油断も隙もありゃしない。いつの間にか勝手に部屋に入り込んできているのだから。
「僕は君の婚約者になる人間なのだから、問題ないだろう。それよりも僕が贈ったドレス、どうだい?素敵だろう?最初に贈ったドレスも、結構凝っていたのだけれどな…まさか君が、わざとメイドを部屋に入らせて、ドレスを盗ませてしまうだなんて…」
「殿下、なんて事を言うのですか?私がわざとメイドにドレスを盗ませただなんて、酷いですわ」
この男、どこまで勘がいいのだろう。本当に憎たらしい。でも、ここはしらを切った方がよさそうね。そう思ってウルウルした瞳で殿下を見つめた。
「そんな可愛い顔をして見つめてもダメだよ。ただ…可愛いから抱きしめさせてもらうね」
殿下がギュッと抱きしめて来た。ちょっと、馴れ馴れしく抱き着かないで欲しいわ。スルリと抜け出ようとするが、あれ?抜けない。何なのよ、この男は!
「殿下、離してください。とにかく私は体調がすぐれないので、今日の夜会は欠席しますわ」
せっかく夜会に出なくていいと思ったのに!こうなったら強行突破よ!そう思ったのだが…
「ヴィクトリアは困った子だね。とにかく、今日の夜会は絶対に出てもらうよ。それよりもヴィクトリア、君はカルティア嬢の計画を事前に知っていたよね。上手く専属メイドを部屋から出して、手助けまでして…君が丘にいる間、定期的に何かを聞いていたよね?多分メイドに付けていた盗聴器か何かかな?」
どうしてそれを!確かに私は、怪しい動きをしていたメイドに盗聴器をこっそり付けたことで、事前にカルティア様が私のドレスを奪い、夜会に出られないようにする情報をキャッチしていた。
私にとっても夜会に出られなくなることは嬉しい事なので、実行役のメイドが行動しやすいように、クロハをあえて部屋から連れ出し、上手く手助けをしたのだが…まさかバレていただなんて。
そもそもどうして殿下たちまで知っていたのかしら?殿下たちにバレなければ、こんな大事になることなく、私も夜会に出なくて済んだのに!まあ、結果的にうるさいカルティア様が、王宮を去ったのはラッキーだったけれど…
「殿下、確かに私はカルティア様の計画を知っていて、それとなく実行犯のメイドの手助けを行いました。バレてしまっては仕方がありませんわ。殿下、すぐにお父様を呼んでください。悪事を働こうとした令嬢を利用する様な私が、お妃候補でいる訳にはいきません。すぐに辞退を…いいえ、お妃候補者の権利をはく奪してください!」
バレてしまっては仕方がない。この際なので、面倒なお妃候補を降りる事にしよう。侯爵家の格も下がり家族には迷惑をかけるが、そもそも私の様な女をお妃候補にしたあげく、何度も辞退したいと申し出たのに辞退させてくれなかったお父様が悪いのだ。
これに懲りて、私に何か期待する事は止めて欲しい。お妃候補者の権利をはく奪されたら、悠々自適な独り暮らしでも満喫しよう。令嬢にとってはお妃候補者の権利はく奪は死活問題だが、私にとってはある意味天国への切符と言ったところね。
「ヴィクトリア、そんなに嬉しそうな顔をしても、君のお妃候補者の権利ははく奪しないし、そもそもお妃候補辞退も認めないよ。君はずっと僕と一緒にこの王宮で暮らすのだから」
「どうしてですか?私はカルティア様の悪事を知りながら、手助けをしたのですよ。私も罰を受けるべきです」
「そうだね、それじゃあ、今日の夜会では僕のパートナーを務めてもらおうかな。それから、罰としてこれから君の部屋に護衛を3人付ける事にするよ。あと君がまた勝手な行動をしないように、行動も監視させてもらうからね」
「殿下、何を言っているのですか!ふざけないで下さい。護衛も監視もいりません。パートナーにもなりません」
本当に面倒な事を押し付けて!
「君は自ら罰を求めたではないか。罰とは、君が嫌がる事をしないと意味がないからね。でも、僕はあまりヴィクトリアに嫌われたくはない。だから、どうかいい子にしていて欲しい…と言っても無理だろうから、君が変な事をしないように、引き続き見張らせてもらうね。それから、僕たち王族を舐めてもらっては困る。カルティア嬢の悪事に関する情報は、君より先に手に入れていたよ。君が密かにカルティア嬢の手助けをして、夜会をサボろうとしていたこともね」
私の頬に口づけをすると、にっこり微笑んだ殿下。この男、本当に人間なの?もしかして私の部屋にも盗聴器を…
とにかく後で徹底的に部屋を調べないと。
「君の部屋に盗聴器は付けていないから、後で部屋を探し回っても無駄だよ。それじゃあ僕は、夜会の準備をするから。ヴィクトリアもそろそろ準備に取り掛ってくれ。クロハと言ったね、ヴィクトリアを頼んだよ。それじゃあ」
笑顔で殿下が部屋から出ていく。何なのよ、あの男。私の心の中でも読めるのかしら?
「クロハ、どうして私の計画が全てバレていたのかしら?きっと私の部屋に、盗聴器が仕掛けられているはずだわ。殿下め、私をバカにして。いつか必ずギャフンと言わせてやるわ!」
やることなす事全て分かっています!と言わんばかりの殿下の態度が、気に食わないことこの上ないのだ。
「お嬢様、殿下になんて事を言うのですか。それよりも、あなたって人は…いくら夜会に出たくないからって、カルティア様の悪事の手助けをこっそりとするだなんて!本当に何を考えているのですか?」
「それだけ私は夜会に出たくないと言う事よ。それよりもあの男が、カルティア様の悪事を暴露しなければこんな大事にはならなかったよ。私はカルティア様の悪事を暴露するつもりはなかったのよ。全て穏便に済ませるつもりだったのに、それをあの男が滅茶苦茶にしたの。そうだわ、ドレスを破られたショックで寝込むと言う設定…」
「いい加減にしてください!何をしても殿下にバレているのです。さあ、着替えますよ」
結局その後、ドレスに着替えさせられた私は、殿下の言葉通り、彼のパートナーとして夜会に参加させられたのだった。
※次回、ディーノ視点です。
よろしくお願いします。
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