【午後五時〇〇分】林 浩一郎
『ごめんネ、もう終業時間だっていうのにお願いしちゃって』
「明日、文書の整理するんだろ? 専用の段ボールは
『私が総務部の書庫に入れたらよかったんだけど』
「
俺は
内線電話の相手は
どうも明日、市民税課で
書庫には担当部署のIDカードを使わなければ入れない。
公文書の担当部署は総務課なので、総務部である俺でなければ総務部の書庫に入れないわけだ。
「林くん、ちょっといーい?」
自席の後ろから声をかけられた。振り返ると
幼さの残る顔立ちにロングヘア。役所内のオジサマ達に可愛がられている。
「しのぶか、どうかした?」
「ちょっと耳貸してぇ」
彼女が中腰になって耳元でささやこうと俺に近づく。
(今日、IDカードをどっかで失くしちゃってさ……。帰るときにドアの鍵が開けられないから、一緒に出てもらってもいーい?)
(どこで失くしたか、心当たりとかないのか?)
(あったらもう見つけてるよぉ! 帰りだけお願いっ!)
(仕方ないなぁ……。これから書庫で作業してくるから、後で連絡するよ)
(やった! たすかるぅ!)
しのぶは俺の肩をぽんぽんと優しく叩くと、人事課へ戻っていった。
さて、書庫に段ボールを取りに行くか。
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